第13話 休息の1週間(2日目前編)
ショッピングモールでの一連の騒動が収束してから一晩が明け、俺たち三人は家でゆっくり過ごそうという話をしていた。そんな中ニュースを流してみると、やはり警察は昨日のテロの通報は悪戯だったと判断したのかそんな話はニュースには一切取り上げていなかった。むしろ、最近は犯罪が起こらないせいもあってか警察への悪戯電話が大量発生しているというニュースが流れていた。そう考えていると恵果が真っ先にその話題を切り出した。
「昨日のテロの話はやっぱりニュースにならないんだね。あんなに三人で頑張ったのにみんなに知ってもらえないなんてなんかがっかりだな~。そう思わない?」
「まぁ、そうかもしれないが俺らのことは国にばれてはいけないわけだからきっと警察が来ても俺たちのことが公になることはなかったと思うよ。それに小学生がテロリストを倒したなんて話実際に見ていないと嘘っぱちにしか聞こえないからなおさらだね。」
「やっぱりそうだよねぇ。いつか私たちの存在が皆に認められる日が来るといいんだけどね。」
俺は恵果を諭すようにそう言った。しかし竜也はその説明を聞いてもやはり納得がいかないようだった。
「俺らの存在が表に出ちゃいけないのは分かったけど、それとこれとは話が違う気がするんだけどなあ。だって頑張ったんだから誉められてもよくね?」
「国とか一般の人から褒められるようなことはなくても、その場にいた先生の一部だったり生徒、店員さんとかはきっと感謝していると思うよ。」
そう言って竜也を納得させたことでこの会話は終わってしまった。
しばらく沈黙が続き、その沈黙に耐えられなくなったのか竜也は投げやりになったように言った。
「あー!こんなに特訓がないと暇なんて!何すればいいんだよ!」
「そういえばこういうときって今までどうしてたかずっと特訓してたせいで忘れちゃったね。何か今この家でできることってないのかな?優ちゃんなにか知らない?」
そう恵果が聞いてきたが俺も二人と同じで暇を持て余しているところだった。
「確かに一日こんなにぐうたらして過ごすのは無駄だよなぁ。なにかないかな。そうだ!今まで通ってた学校の裏に確か川が流れてただろ?その川を上っていくと洞窟があるんだ。そこの洞窟に探索に行ってみないか?確かあの洞窟は最近は誰も近寄っていないそうなんだ。昔は変身装備のための素材をそこで取っていたらしいんだけどもどうやら最近は他にいい場所が見つかったらしくてね。」
「面白そうだな!今すぐ行こうぜ!」
「私もいいと思う。探検なんて昔もなんかやってた気がするね。懐かしいなぁ。」
「じゃあ10分後玄関で集合な。懐中電灯忘れるなよ?」
「「了解!」」
時間はすでに起床時間が遅かったせいもあって13時を回っていた。
5分後玄関を出ると準備万端ですごい張り切っている二人がまだかまだかと俺を待っていた。
「まだ5分しかたってないぞ?なんでそんなに早いんだ?」
「だって楽しみだったから~」
「楽しみだからに決まってるだろ!」
二人は声をそろえてそういった。確かに最近は特訓続きでこんな探検なんてものは三人でできていなかったから当然といえば当然なのかもしれない。二人とも小学生でよくこれっまでのトレーニングについてきてくれたものだ。
「よし!じゃあ行くか!今回は距離が距離だし小学校の頃の知り合いはまだ授業中だから飛んで行っても問題ないだろう。俺は念のためベルトはつけておくけどな。ほんとこれ恥ずかしいからやめたいんだけどなぁ。」
「大丈夫優ちゃんにはそのベルトにあってるよ!」
「ヒーローみたいなぴったりだと俺も思うぜ!」
そう俺に渡されたベルトの特撮番組は丁度アメリカなどでで人気を誇るあの元祖ヒーローをモチーフに取り入れており、いかにもヒーロー!といった感じのベルトなのだ。せめてもっとシンプルな時代のものにしてくれればよかったものを…。
二人に励まされながらも俺たち三人は飛んで川に沿って登って行った。洞窟に到着をするとやはり長い間使われていないと思わせる古びた風貌が三人の目の前に現れた。
「本当に最近は全く使われていないんだねぇ。まったく生気が感じられないよ~。」
「ほんと、なんか嫌な感じがするぜ。崩れたりしないよな?」
「もともと採掘場だったんだ、崩れることはないと考えていいだろう。でも本当にまるで誰かが使っているのにそれをカムフラージュするかのように古びているな。」
(まぁそれは考えすぎか。ここまで実際トラップの類も見られなかったし、ただ普通に古びただけだよな。)
いやな考えを頭から排除してさっそく洞窟内に入ることにした。しかしその悪い予感は的中することとなってしまうのだった。
洞窟の中に入っていくと、洞窟の肌に青白く発行する驚くほど綺麗な石が所々に埋まっていた。その一つ一つの中に魔力がため込まれているような感じがした。
「すごい綺麗で神秘的だなぁ。これだけ綺麗なら観光名所にでもすればいいのにな。」
「観光名所にするにはきっと狭すぎるんだろう。これじゃあ人がすれ違うのがやっとだ。」
「確かにここを観光名所にするには狭すぎるかもしれないね。あ、分かれ道が出てきたけどどっちに進む?」
「とりあえず右に行ってみるか。」
この時の安易な俺の選択を俺は後々後悔することとなった。
「この道今までよりも光る石の数が増えてきてる気がするな。」
「きっとまだここまでは採掘の手が行き届いてなかったんだろう。」
「たしかにでもなんか所々大きな穴があって、これ誰かが石を持ってったってことなのかな?」
「恵果、それはどこのことだ??」
「ここのことだよ?」
恵果がさした場所には確かに石があったであろうと思われる多くなくぼみができていた。
「確かにこれは誰かが石を持って行った跡っぽいな。残っている魔力からしてそんなに外されてからそんなに時間はたっていなさそうだな。少し先に行って確認してみよう。」
この最近誰も近寄っていないであろう洞窟に誰かが最近になって石を取り外した跡があった。これは誰かが何かを隠すためにこの洞窟にカムフラージュを施していると考えるのが普通だろう。
少し進むと道が少しづつ広くなっていった。
「あれ広場じゃないか?あそこで一回休もうぜ~?もう2時間ぐらい歩きっぱなしでもうくたくた~。って優斗なにすn…。」
「あの広場何かおかしい。誰もいないはずの広場に何人かの魔力が存在しているように感じる。人数も10人近くいるかもしれない。」
そういいながら竜也の口を押えたが竜也はそれを引きはがして何も恐れていないかのように先に行ってしまった。
「きっと石の魔力が大きくてそれが人の魔力に感じられただけだって。だってこの洞窟にはだれも最近になって入った跡がなかったんだろ?なら大丈夫だって。」
「いや、待て竜也!もしそれがカムフラージュで実際は何者かが出入りしていたらどうするんだ!」
そう俺が叫んだ時にはもう手遅れだった。
竜也はすでに洞窟の広場に足を踏み入れ、それまで自分が想像もしていなかった光景を目にするのだった。
「なん、だよ。これ。なんなんだよ!」
竜也の目の前には三人ほどの盗賊のような恰好をした人に言われ、休みもとらずに働く10人ほどの奴隷のような人たちがサイズの大きい石を採掘していた。そして竜也の声に気付いたのか盗賊に一人がこっちに目をやり言い放った。
「なんだお前たち、遊び半分で来てこんなとこまで迷い込んだか?ここはお前たちみたいなガキの来る場所じゃない。とっとと帰れと言いたいところだが、この状況を見られたからには返すわけにもいかなくてな。呪うならこんなとこに迷い込んだ自分たちの不運を呪うんだな。やれ、お前たち。」
次の瞬間二人の盗賊が俺たちに向かい接近してきた。鬼気迫るような殺気の籠ったナイフを俺たちに向けて。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
宜しければコメント、感想、レビュー、評価お願いします。
これからもよろしくお願いしますm(_ _)m