第10話 サファイアの実力
飛び出してきたサファイアの一撃を俺はよけることができなかった。殴られた衝撃で俺は吹き飛ばされてしまった。サファイアの動きが俺には全く見えなかった。こんなに強いということを今までずっと隠してきたのだ。俺は体勢を立て直し魔法を起動する。
『メガフレア術式起動。ディスチャージ!』
俺は渾身の力でメガフレアを放った。しかし彼女は落ち着いていた。
『リフレクター起動。ディスチャージ。』
なんと彼女のほうに向かっていたはずのメガフレアが俺に向かって跳ね返ってきたのだ。予想もしていなかった反撃に俺は自分のメガフレアを直に受けてしまった。魔法防御力が高かったおかげで大した怪我にはならなかったが、大きなダメージを負ってしまった。
「私に魔法は効きませんよ。さあ、もう一度いらしてください?」
挑発に乗った俺は全速力で地面をけってサファイアの背後へ回り彼女へ殴り掛かった。しかし次の瞬間俺は投げ飛ばされていた。柔道の投技、手技16本の一つ背負い投げ。その要領で俺は投げ飛ばされてしまった。魔法も物理攻撃もサファイアには通じなかった。初日はそんな圧倒的な状況で実戦練習は終わった。
「優斗様、あなたの動きには無駄が多すぎるのです。まずは体術、予備動作が大きすぎます。予備動作が大きいというのは威力は強くなるかもしれませんが相手にどこに何で攻撃が来るのかを教えているようなものです。なので予備動作を縮めることに努めてください。素早さは申し分ないのであとは体の使い方です。次に魔法ですね。ダグラスとの最初の試合で無詠唱をしていましたよね?なぜすべてを無詠唱で行わないのですか?」
「無詠唱だと威力が落ちるんだよ。それに頭の中で考えながら動いていると動きが鈍る。」
「それは慣れるまで訓練を積んでください無詠唱で威力を上げ、詠唱と体を動かすことの同時並行この二つに重点を置いてこれから訓練を受けて下さい。明日以降はそういう方針で進めていきます。では、私は他のお二人のほうへ行きますので今日は自主練習ということで無詠唱を習得してください。」
そういってサファイアは山のほうへ行ってしまった。
「無詠唱の練習って言ってもなあ、そんな簡単にできることでもないだろったく。」
そう呟きながらも練習を始める俺は結構素直な性格なのだろう。
(『メガフレア術式起動。ディスチャージ!』)
まず手始めに脳内で詠唱を知るという無詠唱ではないがはたからは何も言っているようには見えない方法を練習してみた。すると詠唱より少し威力は劣るが遜色ないメガフレアであった。この方法は発動までの時間が今までの方法と変わらないため時間の短縮に放っていないため実際の戦闘ではあまり通用しないだろう。
次に魔法名だけを頭の中で唱えて魔法を発動する方法。
(『ボールライトニング』)
雷属性中級魔法を唱えてみたがやはり威力は普段の3分の2程度しか出ていないようだった。これをどうにか詠唱をするときと同じ威力まで引き上げなければいけない。まずは原因を探すところからである。俺は星屑の書により無詠唱についての文献を閲覧した。その文献によると無詠唱は詠唱の時間が短縮されているため魔力の返還量が少ないほか、集中がほかの方向に向いているため変換に時間がかかるかららしい。つまり変換速度を向上すれば両方とも問題が解決するのだ。まず手始めに炎属性初級魔法フレアを一度にいくつ出せるのかを試してみた。
『フレア術式起動。ディスチャージ。』
俺の周りに20個ほどの火の玉が浮かび上がった。文献によれば少ないほうではないらしい。しかし俺の威力を保たせるには足りないということだろう。そこで一日フレアの個数の上昇だけに時間を費やした。
二時間ほど練習をしているとサファイアが様子を見に山から下りてきた。
「二人の調子はどうだ?」
「二人とも着々と力をつけてきています。まだまだ優斗様には及びませんが戦いまでには何とか間に合いそうです。しかし優斗様今何をしていらしたのですか?」
「変換効率を上げるためにフレアを一度に大量に打てるように練習してるんだ。元々20個ぐらいだったけど2時間で大体2倍ぐらいには増えたかな。」
「そうですか。では一度また二時間後ほどに来ますのでもう一度模擬戦を行ってみましょう。」
「わかった!それまでにはある程度形にしてみるよ。」
サファイアまた山のほうへ向かっていった。
そして再び二時間の時が過ぎ、サファイアが山から戻ってきた。二人はすでに疲れて自宅へ戻っているようだ。
「では模擬戦を始めます。ルールはいつもと同じでいいですね?」
「もちろん。じゃあ行くぞ!」
そういうと俺は自分に身体強化魔法をかけサファイアへ向かって蹴りだした。サファイアも自分にプロテクションをかけこちらへ駆け出していた中心で二人の拳がぶつかり合った。お互いに間髪入れずに蹴りを入れ相殺されている。序盤は二人の至近距離での肉弾戦が行われた片方がダメージを入れればもう片方はすきを見てさらに反撃を加える。そんな攻防が行われていると。俺が発動したウォーターショットにサファイアは気づき、お互いに距離をとった。
「だいぶ魔法の発動速度が速くなりましたね。しかしまだ体の予備動作が大きいですよ?次は反射魔法は私は使いません。魔法戦と行きましょうか。」
そうサファイアが言った瞬間俺の足元から何本もの光の柱が生成された。
「それは光属性中級魔法ライトウォール。本来防御魔法ですが敵を囲めば、一転敵の動きを制限させる魔法へと変わるのです。その壁を打ち破ることが第一の試練です。」
俺は闇属性中級魔法シャドウショットを発動した。シャドウショットは光の壁に吸い込まれていくように消えていった。
「そんな威力の魔法ではライトウォールは破ることはできませんよ。」
次の瞬間見えない攻撃がサファイアを襲った。サファイアは何事かとその場に膝をついた。次の瞬間光の壁は消えてしまった。
「何をしたのですか?光の壁によってあなたの魔法はかき消されるはず…。」
「シャドウショットは名前の通り闇討ちのための魔法だ。その魔法なら光の壁を欺き直接術者に攻撃できると思てな。術者が集中を切らせば継続魔法は切れる。だから光の壁を直接破壊するよりこっちのほうが簡単だと思ったんだ。」
「なるほどそれは盲点でした。では続きをと言いたいところですが日も沈んできたので帰りましょうか。」
そう言って今日のトレーニングは幕を閉じたが俺にはサファイアが本気ではないとわかっていた。
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