マーテルの日常-朝(3)
薄暗かった外はいつの間にか明るくなり、太陽の陽射しが窓から差し込み、部屋を明るく照らしている。
アスタ「んー。いい匂い。おはよう母さん」
朝食が出来上がる直前に、背中から声をかけられた。
声の方を振り向くと、そこにはまだ完全に目が覚めていないであろう息子の姿があった。
マーテル「おはようアスタ。今朝も良い天気ね。昨日は遅くまで起きてたの?」
アスタ「うん。ここの所、山の動物達がいつもより少なくてさ。少ないチャンスを必ず物に出来るように、道具の手入れをしてたらつい」
「あはは」と、おどけた様子で笑う。
その笑顔を見ると、今朝の夫の寝顔を思い出す。
あの人は、「アスタは母さんに似た」なんて言うけど、笑う顔は父親そっくりである。
マーテル「遅くまでご苦労様。もう朝ご飯出来ちゃうから、顔洗ってきたら?」
アスタ「うん。そうするよ」
そう言うと、アスタは洗面台の方に向かって歩きだした。
マーテル「アスタが起きたってことは、あの人もそろそろ起きる頃ね」
作り終えた料理をテーブルの上に並べていると、パテルが起きてきた。
パテル「おはよう。今朝も美味しそうなご飯の匂いがするね」
マーテル「おはよう、あなた。ちょうど用意が出来ましたよ」
パテル「いつもありがとうね」
そう言うと、パテルは私のひたいに軽く口づけをする。
パテル「アスタは?」
マーテル「あの子なら顔を洗いに行きましたよ。何でも、昨日遅くまで道具の手入れをしていたらしくて」
そんなことを言っていると、アスタが戻ってきた。
アスタ「おはよう父さん」
パテル「おはようアスタ。道具の手入れをするのは感心だけど、寝不足は狩りに悪いぞ」
アスタ「あはは。気をつけます」
マーテル「まあまあ、3人揃って準備も出来たことだし、とりあえず朝ご飯を食べましょう。さぁ、2人とも座って」
私は2人を席に促す。
いつも3人揃って朝ご飯を食べるのが、我が家のお決まりである。