表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/62

6:失敗の連続

 オウカ家族は居間にて寛いでいた。予定を決めたテリストが今日中に返事をしに来ると伝えていたからだ。当然話題はレベル上げに関してだ。

 ハンター業をせずとも基礎体力の底上げが出来れば、体が資本である為に今後の生活の質との観点から最高の利益といえる。断る訳が無いのだ。

 交易商として他国へ赴くならば、その道中では魔物に襲われる事は当然であり。更に運が悪ければ盗賊へと身を落とした者から襲撃を受ける可能性も当然としてある。レベルを上げて困る事など何一つないのだ。

 そこへデルフィアがテリストをお姫様抱っこした状態で訪れたのだった。そして、中へどうぞと誘われたのだが、直ぐに出かける事になる。長居は出来ないので玄関先だ。カシナートに呼ばれたオウカが出て来たのだ。


「? どうしたのさ。立場が逆じゃないの?」

 俺が抱っこされたのは小さい時にしか経験が無い。大きくなってからは一度として見せていないので当然の疑問だ。そもそもデルフィアの方が大柄なので違和感は無いのだが。


『そんな事は良いのよ。明日に予定が入ったから今から行くわよ。用意なさい』

「ごめんなさいね。どうしても外せない用事が出来たから今日に変更になりました」

「カーラさん。それは良いですけど、何の用事が入ったんですか?」

『今日会う事になっていた奴の処刑よ。帝国と一戦交える事になったのよ』

「……は?」


 惚けた顔で聞き返して来るが返答内容は変わらない。戦争へ舵を切るのは決定事項だからな。


『戦争よ戦争。明後日には出国予定だから用意が必要なの、後は分かるわね?』

「テリスト、とうとう遣るのかい?」

『私が言ってるんだから本当よ。それより準備なさい。何なら服なんて着なくて良いわ。裸で来なさい』


 四六時中裸の龍族ならではの提案だが。それは外で襲ってくれと言ってるようなものだ。その選択はありえない。

 これほどのメンバーならば安全は考慮されたも同然だ。普段の着の身着のままで来るオウカの家族だった。


 そしてセントラル経由でターラルダンジョン入口へ到着した一行だが。やはりと言うべきか、エレクティアに抱かれていたアウローラが抱いていた本人を足場にして俺にがっしりと飛びつき、ぺシペシ叩いて来たのだ。

 当然抱かれているので頭か脚しか見えていない。飛びつかれたのは頭だ。そこに爪を立てて飛びついたのだから当然怪我をしたテリストだった。


『キュアー。キュァアア!』


 エレクティアが引きはがし会話を試みて納得させ、入る事が出来たのは言うまでも無いが。引きはがすとどうなるのか……爪を立ててるのですよ……。

『テリスト様は大変なのですね』とはクラレスの弁であった。


 無事に(テリスト以外は)62階層へ到着した一行。そして派手にMPをガッツリ消費した2人の龍族、当然の様にテリストへMPの要求をしたのだが。テリストは魔石を取り出して渡したのだ。


「今日はそれで我慢してくれ。個数が必要ならいくらでもやるから」

『こんなに減ったのはテリストのせいでしょ、貴方が渡しなさい!』


 テリストを立たせてキスからの強引にMP吸収をしたのだ。だが、これが悪手だった。吸収し尽くされたテリストは当然ながらそのまま気絶したのだった。

 崩れ落ちるテリスト。直ぐに支え気絶した事は明白だった。MP枯渇による気絶だ。


『あ……』

「あれだけ派手に放ってましたものね。MPが少ないからと魔石を手渡したのですわね」

『はぁ。エレクティア、とうとうやらかしましたね。仕方がありません。MP回復ポーションを飲ませる他ないでしょう』

「それなら僕が飲ませるよ。意識のない人に飲ませた経験があるからね」


 ほどなくテリストの意識が目覚めた。

 各人に空の樽を2つずつ渡しておく。受け取るのはテリストだが。呼ぶのならば大量に押し寄せる。満タンに移し替え。蓋を閉める時間などない。そのカバーをしてもらう為の配布だった。

 役割はエレクティア1人が倒し。ワングル乳はテリストが回収し、固体はアリサが回収し。他の者はテリストのカバーだ。

 

 少し奥へ向かう一行、そこでエレクティアが提案した。


「少し時間を押したわね。呼び集めるから耳を塞ぎなさい「待て! 早まるな!」いくわよ【キィーーーーーー!】」


 耳は防げたので良いのだが。魔物が寄って来ないのだ。

 これまたミスを犯していた。ゴーレムは疑似生命体というべき人形の様な魔物で、恐怖も喜怒哀楽など無いのだ。相手が強かろうと弱かろうと立ち向かっていく。自我が無いのだから当然だ。そこにあるのは破壊衝動のみなのだ。

 さて、ならば生きている魔物ならばどうか。クインが追い立てスタンピート化したように、強者から圧力を加えられれば逃げ出すのだ。

 当時のクインよりはるかに強く、レベルは優に6000を超える。そして特殊魔法である龍語魔法を応用して放てばどうなるのかは考えるまでも無い。普通は逃げ出すのだよ。普通は。

 10分待てども魔物が来ない。しびれを切らして向かうのだった。

 第1魔物発見! 泡を吹いて倒れていました。


『テリスト。予想して止めたの?』

「それは正確じゃないな。強者が追い立てスタンピートになる事もあるだろ。だからエレクティアの圧力を受ければ逃げ出すと思った。それが蓋を開けたらその圧力が半端じゃなくて気絶した。そういう事だな」

 これでは逃げ出すどころか動かない。此方から出向いで倒すほかなくなった。

『ごめんなさい……』

「これならある意味倒し放題だな。さて、罠感知を覚えてもらう必要があるからその都度その都度大体の位置を教えて行くから。オウカの奥さんは地面と睨めっこだな」

「それは有難いね。それと、急ぐ必要が無いなら僕たちで倒して良い?」

「乳がある程度取れるなら問題は無いが」


 ただ、倒れてるからドロップする位置が低そうなんだよな。うまくキャッチできるか怪しくはある。


『はいはい。譲れば良いんでしょ譲れば』

「本人が良いとの事だから行こうか。ついでに探知能力も磨け。どんどん獲物が多い方へ行って良いぞ。迷いようが無いからな」

「へぇ。マップを丸暗記してるんだね」

 それならそういう事にしておくか。ヤヨイの固定スキルを説明しなくても良いだろ。オウカだけ知ってれば良い。

「早速倒してもらおうかな」


 帰りは当然の事ながら遅くなった。だが、予定量の樽2杯分は確保出来たので、1つはオウカに渡し、その他素材も半分はオウカへと渡して帰宅するのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ