10:確保
一人が怒鳴り散らして侵入者だと叫ぶので騎士がわんさかと寄って来る。
そうすると上の階層の気配も慌ただしく動き。その動きから重要人物がどの気配なのかバレバレである。前後を複数人で固めてガードしながら移動するので間違いようが無いのだ。
城の構造としては正面玄関のエントランスは、1階の天井をぶち破った見晴らしのよい場所だ。そこの中央階段を上がり2階へ到着すると左右への通路となり。その両端には上への階段がある。
どちらから降りて来ても良い様にと二手に分かれるのだった。もう片方の先導者にはエテクティアになってもらう。
流石はスキル取得に関しては一日の長がある帝国の兵士たち、無詠唱で魔術を放って来る者も当然いるが、はっきり言って無害だ。単体用の魔術しか使えないのだからお察しだ。なんせスキルレベル3までしか使用できないのだし。
俺たちの進む速度は一般人の歩きと同程度だ。例え障害物があろうとも。
慈悲を掛け、逃がすのはメイドと執事だけだ。辛うじて世話になった事に変わりはない。だが、文官を逃がすつもりは無い。低位の貴族を逃がさない為でもあるが。其方は俺にとって加害者でしか無いからだ。強制召喚するすべを知る者は排除するに限る。犠牲者を増やさない為にもだ。
3階の階下へ降りようとする皇帝一家と鉢合わせした俺たち。排除しようとして来る騎士は当然ながら相手にならず即死して俺に回収される。
突破は無理と4階へ駆けあがり。少なくなった騎士の半数を殿にして反対側の階段へと向かって行った。
だたし。其方は其方でエレクティアが詰め寄せているのだが。
残った騎士全員で強行突破を試みるもあっさりと死亡して回収されるのだった。そして前門の虎、後門の狼と完全にふさがれて逃げ道を無くすのだ。
そして目敏くヤヨイの姿を捕らえたのだった。
「や、ヤヨイ? 丁度良い! こやつらを排除して余を助けよ! 褒美は思うが儘ぞ!」
「貴方方を殺しに来たのですからその選択肢は取りようがありません。観念してはどうですか?」
「望みはなんだ? 余が与えられるものならば何でも与える! だから助けるのだ!」
「そうよ。強くしてあげた恩を今こそ返しなさい。これは命令です!」
屑第一皇女か、いう事が違うね。ちなみに皇帝に皇后らしき者が3名に皇女が2名、皇太子3名だ。
この場では殺しはしないが全員確保する。戦争終結宣言の際に公開処刑する事は決定事項だからな。
『拉致された被害者相手に命乞いとは、見苦しいにもほどがありますね。潔く観念してはどうです』
「グッ。龍族? 龍族だと。宣戦布告が来た事から、貴様らは皇国の者か!」
「今頃気が付くなんて頭悪すぎ、しっかし醜い体をしてるな。どんだけ食っちゃ寝したらそんな醜く太れるんだよ。まあいいか、今更だろ。脂肪がたっぷりついてるんでよく燃えそうだな」
とりあえずはエレクティアが皇帝の脚をへし折り床に倒す。後ろ手に縛って足首も縛って猿轡もはめる。
後は抵抗も出来ぬままに無体はせず拘束して縛り上げるだけだ。ただし、連れ出す第一皇女だけはナイフを取り出して全裸に剥き服は燃やし尽くしておいた。
「さて。誰が残るよ? ヤヨイは案内してもらわないと迷うから来てもらう必要があるからな。それと帝国の地図を探してほしいからもう一人残す」
「私が残りますわよ。流石にあの死体累々は頂けませんもの。考えが甘かったですわ」
相手の魔術は俺に最接近するだけで欠き消え、武器での攻撃は掴み取って奪ったうえでディメンションカッターで首を撥ねて回収する。
手早く行うとはいえ。首がポロリを何度も見る羽目になるのだ。見たくないのも頷ける。
「それなら私が残るです。それに、既に方々に攻め入ったのが知れ渡った頃ですよ。助け出そうと攻め入ってくるのは確実です。露払いは任せるのです」
「ココア、サーシャ、任せるぞ。こっちは帝都内の貴族を根絶やしにするのが手間だろうし。今日には決着つかないだろうから夕刻には戻るわ。それと1匹は案内させるのに連れて行くぞ。ま、連れて行くのはさっきの約束があるから皇女を連れて行くけどな」
アルサートと名乗った皇女の髪を一纏めにして、後ろ手に担いで行くのだった。
猿轡してたら案内できないわよとの指摘から外してやると煩いのだった。
「き。貴様! 皇女に対してこんな非礼を犯すなんて。確実に殺されるわよ!」
殺されるのはお前なんだけどねぇ。
「ふーん。この持ち方はお嫌いですか?」
「当り前よ!」
ぶちぶちと少なからず髪が切れてる音がしてるもんな。
「さいですか。では、変えますかね」
気に食わないそうだから変えてあげる。地面にうつぶせに降ろして足を持ち上げて引きずって行くのだ。
「キャァーーー、あ゛あ゛あ゛……」
通路は絨毯を敷き詰めてあるので柔らかくて怪我の心配は無いのだが、階段もそのまま引きずって行くので、段差の度に顔を殴打して後ろには血で出来た線が一筆となって続いている。
「テリ、それでは話せないわよ。擦るなら足になさい」
「それもそうだな【グレーターヒール】 さて、肩の関節が外れるけどまあ良いだろ」
今度は立たせて腕を引っ張り連れて行くのだった。当然階段をまともに降りれずに踏み外して引きずられて行くのだ。
やっぱり効率がよろしくないので腕の拘束を外して、後ろ手になる様に担いで行く。
そこまですれば自ら置かれた立場が理解できたのだろう。城の外へと出れば、一般人は何事かと注目はするも。俺たちの異様な雰囲気を感じ取り、遠巻きに眺めるだけだった。
食料品店はもう少し後に行く方が良いだろう。余りに早すぎては買い付けが出来ないだろうし。
騎士を瞬殺する力量だ。寄ってたかって助け出そうと試みてくるがはっきり言って無駄だ。武器を奪い取り手足をボキボキとへし折って放置する。それらを目のあたりにして、抵抗は無駄だと判断したのか大人しいものだ。
それからというもの。騎士や衛兵が定期的に助けようとやって来るも。俺が言ったように腕や足をへし折った上で武器を奪い取られた状態で転がされるのだ、そこまでなればその激痛から無詠唱で魔術は放てない。集中力が痛みで阻害され、発動に必要な繊細な想像力が削られれば発動出来ないからだ。
俺たちの去った後。周囲からの目線を塞ぐ者と、行動する者とが連携をし。身ぐるみはがされて暴行を受け、気絶したのは転がされた全員だ。
これは美味しいと思ったのか、俺たちを遠巻きに追跡する者までいる始末だった。
これでは貴族を根絶やしにするのを見られてしまう。それならば市民に判定を下させようとの判断になる。
執事やメイドはそのまま逃がすが。それなりの格好をした者は腕をへし折り道路へとポイするのだった。そして金目の物は根こそぎに奪って、次の邸宅へと向かうのだ。