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9:城攻めの定例行事

 翌朝。食事を済ませた俺たちは寛ぎの間に集まっていた。出かけるのに必要な品を渡していないからだ。テリストは各種下級竜の外皮とお金を、アリサからは宝石の詰まった金の宝箱をスーシーに渡したのだ。

 家事全般もだが、事他人の面倒を見る点においては、俺の家族の中で一番気が回るので任せていれば安心感がある。不慣れなクラレスの面倒を見てくれる事だろう。サルーンは手が離せないので構ってやれないからな。

 受け渡しも終わるとサルーンから声をかけられた。


「良いですか。対外的な面ではカーラが団長の地位に就いて下さい。そして副団長はテリストに任せます。テリストの補佐にアレサリアが就いて下さい。

 エレクティアには何も与えません。守護の要である貴方が、本来は国外遠征になど行ってはならないのです。いいですね?」

ふむ、カーラがトップか。国政の一翼を将来的に担わせるつもりか? だが、経験を積ませるにしても順序があるだろうに。失敗してもフォーロが出来る位置につかせれば良いものを。そのカバーをしろって事かね。舵取り次第ではカーラに負担が掛かってしまうな。ある程度選択肢を狭めて判断しやすく補助するしかなさそうか。


『それで良いわ。テリストの補佐が出来れば十分よ』

「次に、軍の指揮はテリストが行いなさい。誰でも初めてはあります。少人数で奥さんたちばかりです。気兼ねしなくて良い分気楽でしょう。ですが、意見はくみ取るのですよ。それと、最も重要な品をエントランスに準備させています。分かりますね? 国旗ですよ。制圧したら旗を掲げておきなさい」


 あ。そう言えばそれがあったな。制圧後に周囲へ知らしめる手段が無いか考えていたが、どうにも考えが纏まらなかったんだよな。


「そうだった。すっかり忘れてたよ。国の象徴だから制圧されたのが一目瞭然だよな。助かるよ」

「たまーに、こういう風に抜けてますのよね」

「……そうか。俺に喧嘩を売ってるな。アイスクリーム無しにするぞ」

「誰しも失念してる事の1つや2つはありますもの。その位が可愛げがあって良いですわよね」

「テリ。脅して訂正させるとか止めなさいよ」

「ふむ。考慮しとく。嫁さん限定で」

 敵対した者へ配慮なんてそもそも必要無いからな。その時点で死を与えるから考える余地が無いとも言える。


『敵には考慮しなくて良いから行きますよ』

「そうだな、すまない。ウインドミルに転移後、西門から出て、少し離れた位置で龍化してもらう。良いかな?」

『あまり大っぴらには出れませんからお任せしますよ』


「デルフィア。アウローラが寂しがると思うけど任せるよ」

『任された。緊急時には帝国へ来るかもしれん。帝都の城を制圧した場合には一人は残しておいてくれると助かる』

「無人だと盗賊が入るかもしれないか、分かった。相談して一人は残しておく。クイン、1mサイズになって来てくれ」

『小さい方が良く無いかの? まぁ考えがあって事であろうし構わぬがな』

 高高度を飛んで行くからな、当然寒い。冷却耐性の高い防具ではあるのだが。ダメージをおわない程度に軽減されるだけで寒いのは寒いからな。暖房器具扱いしてしまうがすまないな。


 旗も十分な数が揃えてあった。城用に大きいサイズが3枚と。各町の領主館用にポール付きの品が50本だ。

 小さい規模の町ならば1本で済むが。都市とも言える規模だと正面から見て左右に1本ずつは必要との事だ。そこらの判断は俺には無理なので丸投げする。固定する器具が無ければ乖離島(カイリトウ)で大量に回収した鉄の塊でも使って土台にすれば良い。土台の重さが重いほど強風時にも耐えられるってものだろう。


 空の度は順調だった、途中までは。最短距離で進むためと速度を上げる為に高度を上げるのだ。ソニックブームが発生するのは分りきっているので、その影響を地上に与えない為だ。そして当然ながら高度を上げれば気温が下がる。その為にクインには大きくなってもらったのだ。抱き着く為に。

 そう、快適なのは途中まではだ。直ぐに俺の思惑に気が付く嫁たち。テリ、あんたは耐性があるから平気でしょ。クインを寄越しなさいと言われ、渋々であるが奪われたのだった。代わりに嫁さんに抱きついてはいたが。


 それも数時間の辛抱だった。全員が気配遮断と魔力操作で魔力洩れしない様に調整し、帝都にほど近い位置に着陸し、歩いて向かうのだった。

 俺は不殺とするが。嫁さんに強制はしていない。単なる俺のエゴだからだ。

 そして侵入口は東門だ。以前死んではいないが魔物討伐で南の山すそへ馬車で向かう際には南門から出たが、山しか無いので不自然だからだ。

 そして帝都へ入る為の審査が長引いているのだろう。けっこな長蛇の列に並び順番を待つのだった。何故か。


「なんで並んでるんだろうな俺たち」

「割って入れば宜しいじゃありませんの」

「そうするか」


 その声に答えた者がいた。直前にいる者たちだ。荷馬車なので交易商だと思われる一団の護衛にだ。


「それは感心しないな。皆そうしたいのはやまやまだが。強行すれば騒ぎになるぞ。そうなれば 余計に時間が掛かり、入る事すら不可能になりかねん。強行するというのなら俺たちが相手になるぞ」

 と睨みつけられながら言われたのだった。

「それもそうだな。おし、全員手を繋げ。クインは俺が抱いて行く」

「ふん。それで良い」

「気配を遮断しろ。俺の後はエレクティアが追ってくれ、行くぞ」

「よせ!」


 怒鳴られた時にはすでに遅しだ。俺たちを看破出来る者は側におらず、列を無視して帝都内へ侵入し。適当な裏路地で気配遮断を解除、侵入に成功したのだった。

 そして食料品店を見つけて、店内へなだれ込むのだった。戦争をおっぱじめたら買うに買えない事態へとなり得る可能性がる為に、今の内に買い込もうという算段だ。


「いらっしゃい。おや珍しいね。獣人族が帝国へ来るとは獣王国から来たのかい? 悪い事は言わないよ今すぐにお帰り」


 入ったかと思ったらこれか。心配しての事だからありがたいのだが、中々に肝っ玉のすわったおばちゃんだな。

 丁度良い事に客は0人かこれは好都合だ。


「いやいやおばちゃん、獣王国からじゃないよ皇国アヴァサレスからだよ。ちょっとした野暮用でね。今の内に食料を買い込んでおこうかなーと思ってね」

「どういう事だい。今帝国は戦争の真っ最中さ。皇国から来なさったのなら出立した時にはまだおっぱじまってなかったんだろうね」

「その戦争に用事があって来たんだよ。皇帝って職に就いてる害虫を退治しにね」

 堂々と目的を言ってみた。これが原因で揉め事になるとは微塵も思っていないからだ。と言うのもスキル取得の為に連れまわされた店への配慮は全くしていなかったのだ。俺たちへ商品の説明を強要させ、必要とあらば無料で提供させて使用させていたからだ。

 普段の行動がそうであれば、過分に嫌われている。いや、嫌われているなんて生易しい感情ではなく恨んでいる事だろう。そう考えるからこそ堂々と言ったのだ。


「しー、声が大きいよ。そんな事を騎士にでも聞かれてご覧。直ぐに捕まっちまうよ。悪い事は言わないよ。そんな事言わずに退散おし」


 流石おばちゃんでも初対面の相手では実力を知らないからか心配してくれている。ここはひとつ、エレクティアを利用して安心させるか。

 エレクティアを前面に出して説明する事にした。


「大丈夫だって。買い物が済んだら城に奇襲をかけるつもりでね。奇麗さっぱりぶち殺すから安心しなよ。

 なにせ俺たちには火龍族がついてるからね。ほら、この子だよ」


 後ろにいるエレクティアを前に引っ張り出して前に立たせるのだった。


「テリ。こんな時だけエレクティアさんを利用するのは止めなさいよ」

 それはそうだが、鑑定してくださいなんて言えないからな。ここは種族がら強いエレクティアを前に出す方が一番手っ取り早い。


「そんな事言っても実力の証明なんてこの場じゃ出来ないだろ、種族がら強いエレクティアが旗になる方が手っ取り早いんだよ」

「その翼は……。本当にあの皇帝をどうにかできるのかい?」

「勿論だって。ぶん殴りたいなら連れて来ようか? 好きなだけ殴って良いよ」

「その言葉に偽りは無いんだろうね?」

「嘘は言わないって。好きなだけ殴って良いよ。死なない様にその都度治療するからサンドバックにして良い」

「サンドバック? まあいいさね。それなら第一皇女のアルサートを連れて来てくれないかね。娘の仇なんだよ」

 騎士も屑だが筆頭に近い位置に居る奴は輪をかけて屑って事か。好きなだけ殴ってストレス発散してくれ。


「あー。あの見てくれは良いけど性格が最悪な奴ね。了解だ。好きなだけ殴って下さい。そうだな、昼までには連れて来れるかな?」

「なら。買い物もその時にしてくれないかね? とっておきを買い付けておくさ」

「へぇ。それは楽しみだ。あるだけ買うから大量に買い付けをお願いするよ。とりあえず購入資金にしてくれると良い」


 白金貨を1枚取り出して渡しておく。これなら結構な量を確保してくれるだろう。

 硬貨を見て絶句し、何やら言っているがさっさと後にする。何を仕入れてくれるのか後のお楽しみといこうじゃないの。

 食料買い付けの目途も立った事だしと城を目指すのだった。肉に限ればかなりの量を持ち合わせているが他の素材は心もとない。混乱すれば購入できるとは言えない。確保する事に不都合など無いのだ。

 雑魚は何時でも叩ける。ならば、真っ先に逃げ出されない様に頭を叩く。これが一番手軽な攻略法なのだ。

 そして、城へある程度接近すれば、また気配遮断の指示を出して、今度は城へと侵入する。裏口侵入だよ。侵入方法は至ってシンプルだ。蝶番を時空魔術の【ディメンションカッター】で切り、扉を収納するだけで無音侵入を果たす。そして地下への侵入経路を発見しては地下へと降り、とうとう見つけました。宝物庫の入り口を。門番を殺して収納すれば、普段は誰も傍に寄らない。見つからない場所の出来上がりだ。わざと引き寄せる気満々だが。


「全員気配遮断を解除してくれて良いぞ。それじゃ御開帳と参りますかね【ディメンションカッター】」  抗えるはずも無く防御の為に張られた魔術をも切り裂き。鍵をも切断したのだった。

 さてさて御開帳と参りますかね。どんな良品が待っている事やら、わくわくしながら御開帳するのだった。


「テリの事だから絶対に奪いに来ると思ったわよ。それが真っ先に宝物庫とは呆れるわね」

「まぁまぁ。そう言わずにかっぱらうぞ」


 ギィィィーと音をたてて開く扉。そして見たのは余りにも貧相な宝物庫だった。貴重なアダマンタイト製の武器とフルプレートメイル一式はあったのだが。長年にわたる戦争行為に費やし。貯えを切り詰めながら散財していたのだと思われた。


「うーん。俺たちが保有してる全資産の1割あるかね?」


 そもそも火龍所のダンジョン産金属がやたらと高価なんだよね。中にはアダマンタイトのゴーレムが居た事から多少なりとも塊をいくつも確保している。たぶんだが、アダマンタイトのドロップ品だけでもここの宝物庫より金額は上だと思われる。

「怪しいですわね。それより。気配遮断を解除したからバレましたわよ」


 ワザとだから問題無い。此方からも出向くのだが、どうせなら先方からも向かって来てほしい。時間短縮の為にもだ。よって、この様な手を使ったのだ。


「さっさと回収して上を目指すぞ」


 全員で回収し終えた後にやっと近衛騎士らしき者が来たのだった。


「貴様ら盗賊か!」

「いやいや。皇国から戦争しに来たんで資金調達にと寄ったんですよ。これで思う存分戦えます。それじゃ死んでくれ」


 罵声を浴びせながら斬り込んで来るがそれだけだ。素手で相手の武器を奪い取り時空魔術を鍛える為に攻撃手段は一つに絞って突き進んで行くのだった。

 疫病蔓延なんて洒落にならないので、その都度死体を回収したのは言うまでもない。

 嫁さんとクインには任せません。俺の時空魔術のレベルアップの為に!


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