妄想が止まらない
■シチュエーション
妄想少女
■登場人物
・一ノ瀬亜美
本作の主人公。可愛い男の子が好きな妄想癖のある女の子。
後輩の結城君を溺愛している。
・桜庭結城
同級生の女の子にいじめられていたときに、主人公に助けられ(主人公は覚えていない)、
それから恋心を抱いており、ついに告白を決心する
「はぁあああ……」
一週間で最も憂鬱な月曜日の朝、私は本日何度目かも数えるのが億劫なため息をつく。
天気は曇り、湿度は60%と少し湿っぽく、タダでさえ憂鬱な気分を更に加速させる。
「はぁあ……」
もう一度大きなため息を付く。もういっそのことこのまま帰りたい……。
「ちょっと亜美。朝からどれだけため息付いてるのよ。こっちまで気が滅入るじゃない」
隣に座っている親友の佐友里が嫌そうな顔でこっちを見てくる。
「だって月曜日だし……はぁ……可愛い結城君に会えないなぁ……」
結城君というのは1年生の超可愛い男の子の事。
それはもう可愛くて、目に入れても痛くないというか、全力で甘やかしたというか、
私なんかよりもずっとずっと可愛い男の子。
「本当、亜美は結城君のこと好きだね……友達でいるのが嫌になるぐらい」
「あはは~ちょっとそんなに褒めないでよ~うふふ……」
「褒めてないんだけどなーって聞いてないか……」
*
「お・わ・ったー!!!! ねぇ佐祐理、クレープ食べに行こう。クレープ!」
本日最後の授業も終わり、開放感に満ち溢れている。
もっとも、月曜日という現実は忘れておく。だってまた憂鬱になるし……。
「はいはい。まったく、朝あれだけテンション低かったくせに、なんで放課後になると元気になるのよ……」
「だって自由だし! これで結城君がいればもう最高だよ~」
「放課後の教室で一人で待ってると、結城君がやってきて、遅れてすみません。日直の仕事があって……」
「っとか、申し訳なさそうにする顔がものすっごいキュートでギュってしたくなるんだよ!!」
「じゅるり……」
おっとと、つい涎が……。
「あーうん。そうだね……聞いたあたしがバカだった……」
「っと、そうだ。今日のクレープなんんだけど、いつもと違うところでもいいかな?」
「んー? どっか良いところでも見つけたの?」
「うん。最近駅前に出来たクレープ屋さんなんだけど、美味しいって評判だから気になって…………あれ? なにこれ?」
「? どうかしたの?」
「あっうん……。下駄箱に手紙みたいなのが入ってて……」
「ねぇ亜美、もしかしてそれラブレターじゃない?」
「ラブレター……? えっ? なんで私に??? 私なにかした???」
「いや、知らないけど。とりあえず中身見たら?」
「あっうん……えっと……」
『一ノ瀬先輩へ 突然のお手紙申し訳ございません。本当は、直接口で言いたかったのですが、勇気が出ず、こうしてお手紙を書かせて頂きました。どうしてもお伝えしたことがあるので、今日の放課後、第二倉庫横でお待ちしています』
「……だって。これって、まさか………………殺害予告!??」
「なんでやねん!!!!」
佐友里の渾身のツッコミ……地味に痛い……。
「どうみても、告白したいから来て下さい手紙でしょ!!!」
「えっ?えっ? な、なんで? なんで私なの??? 私には結城君っていう心に決めた子が!!」
「それを相手が知らないだけでしょ。それで、どうするの?」
「ど、どうするって……?」
「お呼ばれされてる訳だけど、行くの?」
「えっと……わ、分かんない……。相手がどんな人かも知らないし……。で、でも無視したら可哀想だし……」
「まったく亜美ってこういう時だけは優しいね」
「だけってなに!? 私はいつもでも優しいよ!?」
「自分がそう思ってるだけでしょ。まったく……。まぁいいや。それじゃあ私は帰るから頑張ってね」
「ちょ、ちょっと待って! ひ、一人にしないで! 佐友里も一緒に来てよ! 私の影で見守るだけでいいから!」
「それ真後ろにいるじゃない! せめて建物にしなさいよ!」
「そ、それじゃあそれでいいから!!! おーねーがーいー!!」
「分かった! 分かったからスカート引っ張らないでよ! あんたはおっさんか!!!」
*
「うぅ……緊張してきた……たぶんあそこにいる人が手紙くれた人、だよね……」
背丈は結城君と同じくらい……? どんな人なんだろう……。
「たぶんそうだと思うけど、その会話もう3回目だからね? そろそろ行ったら?」
「うっ……うん……心の準備が出来たら……」
「そのセリフも3回目だね。さっさと行きなさい」
「――はい」
佐友里ちゃん強引過ぎるよ……。他人事だと思って……。
でも、ここでこうしててもしょうが無いよね……不安しかないけど行こう……。
「――あっと……て、手紙をくれた人、かな……?」
うっなんか手汗一杯出てきた……というか今日暑くない!?
「ぁっ……一ノ瀬先輩……ですか?」
「う、うん……」
なんだろう。この全力で抱きしめてがげたくなるような可愛い声……
凄く聞き覚えがあるような気がする。
「えと、その、きゅ、急に呼び出してしまってすみません……」
「えっ……うそっ……」
な、なんで。えっなんで結城くんがここに!? というか申し訳なさそうにする結城君可愛すぎない!!!?
「…………」
「あ、あの、一ノ瀬先輩……?」
「――は!?」
あまりの驚きにぼうっとしちゃった……。というか、困った結城君可愛い!!!
「あっえと、ご、ごめん。ちょっと驚いちゃって……」
「す、すみません……。えと、まず自己紹介から……僕は一年の桜庭結城って、言います」
うん。うん! 知ってるよ! もの凄い知ってるよ!!
「それでその、お呼びした理由なんですが……」
「う、うん。何かな……?」
ぅおおお落ち着け私!? 私なら、大丈夫、きっと出来る! って何が!?
「その、えと……」
「…………」
もうなんなの結城君!!! 戸惑う顔可愛すぎだよ!! その顔反則だよ!! 反則だからね!? レッドカード即退場だよ!!?
というか、もうさっきから私なに言ってるの!?
「ぼ、僕……い、一ノ瀬先輩の事が……す、好き、です。ぼ、僕と付き合って、もらえませんか!!」
――きたあああああああああああああ!! これ来たよ! 来ましたよ!? 告白だよ。結城君からの告白だよ!!
どうしようどうしよう!! もちろんOK。OKだよ!!! さあ言え! 私!!!
「――ぁ。えとその……」
あ、あれ……なんで……言えないの……? あれ……?
というか体が暑くて……なんか頭が真っ白になってきた……。
「えとえと……ぁの……ちょっちょっと待ってね……」
すぅーはぁーと、とりあえず深呼吸……落ち着け私……。
いつもみたいに好きって言うだけなのになんでこんな……。
「その、あ、ありがとう。凄く嬉しい。とっても、とっても」
なんか日本語がおかしい気がするけど気にしない……。
「それでその……お返事、なんだけど……」
大丈夫。落ち着け……いつものように言うだけ……ってちょっと待って!?
いつものように言ったら私ただの変態じゃん!? ふ、普通に言おう。普通に……うん。
「わ、私は……」
あぁ……なんか喉から凄い乾いてるし、汗も凄いかいてる……。
ずっとずっと憧れてたのに、いざこうなると完全に上がっちゃうなんて……。
「そのだから、えと……」
ただ一言、好きと返すだけなのに中々声に出てくれない。
いつもはあんなに簡単に出てくるのに……。
「…………」
結城君が待ってるのに……早く伝えないと……。
「うぅ……えと、えっとね? 私、は……」
頑張れ、頑張れ私……。結城君に格好良い所見せなきゃ……!
「その、わ、私も、ゆ、結城君の事が、その、す、好き、です……。だから、その、お願い……します……」
言った……言っちゃったよ……私……なんなのこれ恥ずかしすぎない!?
「ぁっ……は、はい!!」
「あ、あはは……」
喜ぶ結城君、可愛いなぁ……。
「そ、それでその、い、一ノ瀬先輩」
「な、なにか……?」
「も、もしこの後用事がなければ、一緒に帰りませんか……」
「あっ……う、うん。いいよ」
あ、憧れの結城君との下校!? なんなのもう!? 幸せ過ぎだよ!!!
ってちょっと待って……そういえば佐友里が……あれ、メール……?
「ご、ごめん結城君。ちょっと携帯、みてもいいかな?」
「は、はい! どうぞ!」
「ごめんね」
えっと……『なんかよく分かんないけど、結城君と上手くいったみたいだから先に帰るね。明日詳細よろしく』
佐友里……えっと『ありがとう佐友里。また、明日話すね』
これで、よし。
「お、お待たせ。それじゃあその、帰ろうか。えっと、結城君」
「は、はい! 一ノ瀬先輩!」
Fin
いつもご愛読頂きありがとうございます。
月1回と投稿ペースはかなり遅いですが、まだまだ投稿していきますので、
楽しみにお待ち頂ければと思います。
さて、次回からの投稿ですが、今までのようにただの単話としてではなく、
同じ場所、同じ登場人物でシチュエーションだけを変更した物が3話ほど続く予定となっております。
何カ所か内容が被ってしまう所が出てくるかと思いますが、そういう物だと思って頂ければと思います。
今後とも、短編連載小説「告白」を宜しくお願いします。