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告白  作者: 桜餅
2/3

夕暮れの教室

■シチュエーション

夕暮れの教室


■登場人物

・東雲

 本作の主人公。後輩のつぼみに恋心を抱いており、告白を決意する


・つぼみ

 主人公の後輩。主人公の事が好きだが、引っ込み思案な性格のため、告白する勇気を出せずにいる

夕暮れの教室、いつもなら誰もいない寂れた教室に二つの影があった。

一つはすらっとした体型の男の子、もう一つはその男の子よりも頭一つ、二つ分小さく、

腰まですらっと伸びた髪が伸びた女の子。


今この場所で、一人の男の子が自分の人生を掛けた一大勝負に出る。


「ふぅ……」


気持ちを整えるように小さく息を吐く。

勇気を振り絞って、彼女を呼び出したが、やはり緊張する。

だけど、この夕日が、風が、自然に構築されたこの状況が、

俺には何かに後押しされているような気がした。だから、俺は――


「……どうかしたんですか? 東雲先輩」


「っ……」


喉まで出掛かっていた言葉が彼女の瞳に吸い込まれるように、消えていった。


「顔赤いですよ? もしかして熱があるんじゃ……」


「あ、いや……」


そう言われた途端に居心地が悪くなって、視線を逸らしてしまった。

消えてしまった伝えたい言葉を頭の中で反芻する。


「…………」


どれくらい経ったのだろうか? 考えた時間は10秒にも1分にも思えた。

何度考え直したところで伝える言葉はたった一言、ここで言わなければ後悔する。


「あ、あのさ!」


緊張なのか、たまたまなのか、若干声が裏返ってしまったが構わず続ける。


「は、はい」

俺の声でびっくりしたのか互いに緊迫した空気が流れる。


「あの、だな……えぇっと……」


喉がカラカラに渇いていく。まさか告白するという事がこんなにも恥ずかしくて


緊張することだなんて思いもしなかった。


「…………」


彼女が黙って俺の言葉を待っている。夕日のせいかその頬は若干赤く染まっていた。


「……っ!」


勇気を振り絞って、言葉を――


「俺、つぼみちゃんの事が好きだ! だから……俺と付き合ってくれ!」


頭を下げ、右手を前に突き出す。

身体がすごく熱い、秋なのにも関わらず全身から汗が滲む。


「………………」


しかしどれだけ待っても突き出した手が掴まれる事はなかった。

ダメ……なのか。

そう思った瞬間、無力感が体中を襲う。

あぁ、振られるってやっぱり辛いんだな……。

そんな気持ちを押し込み意を決して頭を上げる。

するとそこには――


「……っ……ぐすっ……」


瞳に大粒の涙を浮かべた彼女の姿があった。


「え? え? わ、悪いっ! お、俺なんか変な事言ったか!?」


くそっ!? 気づかずに彼女の気の触るようなことを……ど、どうすればいんだ!?


「あっ……ちがっ……ちがっいます……。これは……その、う、嬉しくって……っ」


「嬉しい……? それって……」


まさか――


「……はいっ、わ、わたしも……好き、ですっ……。こ、こんなわたし……でよければ付き合って……くださいっ!」


彼女からの逆告白、それを聞いた俺は思わず背中に腕を伸ばして抱きしめた。


「あ、あの……」


突然のことで驚いたのか彼女が戸惑いの声を上げる。


「よかった……本当に……よかった……」


俺が抱きしめているのになぜか彼女に優しく包まれているいる気がした。

彼女の甘い匂いとその柔らかさを体中で感じる。

あぁ、抱きしめて改めてわかった。やっぱり俺は彼女が好きだって事が……。


「怖かったんだ……もし、振られたらどうしようって、それで関係が壊れたらって……でも、本当に……よかった……」


「東雲先輩……」


「ご、ごめん。なんかみっともない姿を見せちゃって……」


それから数分ほど抱き合った後、我に返った東雲が恥ずかしそうに目を逸らす。


「い、いえ……その、東雲先輩、可愛かった、ですよ……?」


「えっ゛……?」

突然可愛かったと言われて困惑する東雲。

男に対して可愛いというのは如何な物かと思うが、口には出せずにいた。


「あっえとその、違うんです! し、東雲先輩でもあんな表情を見せるんだなぁっと思って……」


「お、男の人に可愛いなんて言ったら失礼、ですよね……ごめんなさい……」


「そ、そんな事ないよ。うん。可愛いかぁ……はは……」

申し訳なさそうに謝るつぼみを見て、戸惑いながらも微笑ましく思う東雲。


「そ、それでその、これで俺たち恋人同士って事で、そのいいよね……?」


不安になった東雲がゆっくりと問いかける。


「は、はい……その、ふ、不束者ですが、よろしくお願い、します……」


ゆっくりと頭を下げるつぼみ。

それは挨拶の時に使う言葉だ、と突っ込みそうになる東雲だったが、じっと堪える。


「こちらこそ、その、よろしく……」


恥ずかしそうに目を少し逸らしながら答える。


「はいッ!」

その言葉に、満面の笑顔で答えるつぼみの表情は夕陽に照らされ、とてもキラキラと輝いていた。


Fin

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