表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

新たな物語

長編は数年ぶりになります。

よろしくお願いします。

 故・青峰あおみね 柳太郎りゅうたろうの最後記憶は、胸から血に染まった剣先が突き出している光景。

「必ず会いに行くから、待っててね」

 耳元から聞こえる優しい女性の声。しかし体から力が抜けていき、振り返る事ができない。

「あ…、え…?」

 剣が引き抜かれ、溢れ出る大量の血が地面を染めていく。視界は黒く染まり、自分がどこで何をしていたかも思い出せず。彼の意識はこの世から消えた。




 意識が戻った時、まだ周囲の景色は真っ暗で何も見えない。

(えっと…俺は確か)

 朦朧とする意識の中、少しずつ記憶を思い出していく。

(俺は死んだのかな?)

 自分で言うのもなんだが、平凡な人生だった。30歳手前で彼女なし。一人暮らしで仕事はで毎日残業をして家に帰っては寝るだけ。祝日は家事と買い物で一日が終わって誰とも交流はない。趣味といえばネット小説やアニメを見て現実逃避をする程度。人に刺されるような、とくに女性に恨みを買うような覚えは全くない。

(でも仮に死んだなら、ここはどこなんだ?)

 考え事をするとき顎を触る癖があったため、手が顔に触れる。

(え…?)

 手の感覚は違和感がなかったが、顔の形は明らかに人のそれとは違っている。おまけに、表面は少しヌルヌルしていた。

(そんな…)

それから全身を意識してみると、明らかに今までなかったような感覚を背後に感じる。恐る恐るそれに手を伸ばし、背中と尻の辺りに人には本来無いモノに触れた。

(嘘だろ…)

 それだけで、自分が人ではない“何か”になったのは明らかだった。そして正面に手を伸ばせば硬い何かに触れる。それは少し暖かく、それが周囲360度を覆っていた。

(…卵、なのかな?)

 前世では暇つぶしでネット小説を読み、転生に対して全く知識がないわけではない。だが、実際になってみると自分で現実を受け入れる事ができない。

「カタカタ、カタカタ…」

 恐怖で歯が震え、現実から眼を逸らす。思い出されるネットの知識では、主人公は割とすぐに順応している場合が多かったように思う。すぐに魔法の修練を始めて最強になったり、人ではなくなったから思考も変わってすんなり受け入れられてたりとか…。

(そりゃ、物語だしな…)

 もちろんすぐに戦場に送り込まれたり、殺し合いをする羽目になったりするような作品だってあった。だが今わかっているのは、ここは今の自分のような人外が住まう世界。しかも自分はその住処にいるということ。

(俺は、物語の主人公にはなれないよ…)

 主人公が進まなければ、物語は進まない。この物語はこれ以上進むことなく、暗い殻の中で終わろうとしてた。




 意識を取り戻してからどれくらいの時が経ったのか。夢であってほしいと眠り、起きて絶望する事を何度も繰り返した。おそらく、殻を破る時期は等に過ぎているのだろう。肉体が少しづつ、弱っていくのを感じている。

(こいつを切れば楽になるけどな…)

 腹の中心から伸びる管。おそらく鳥のように殻に胎盤が付いていて、そこに繋がっているのだろう。でなければ、呼吸をしないで今も生きているはずがない。

(こんな駄作は、早く終わればいい…)

 一歩を踏み出す勇気も、自分で幕を下ろす覚悟もなく時が過ぎるのを待つ日々。それでも、変化はあった。

(…また、来たのか)

 最初は真っ暗だった世界。今もそれは変わっていないが、微かに色の付いた流れが見えるようになってきた。

「キュギュイ〜」

(もしもーし、お姉ちゃんですよ〜。まだ出てきてくれないのか?)

 それは突然現れる白い塊。ボヤけているが、なんとなく今の自分と同じ姿かたちをしているように思う。“それ”から放たれる白い光は自分の中に流れ込んできて、奇声と共に心に語りかけてくる声になる。その光が流れ込んでくるたび、周囲の色づいた流れが強くなるのを感じる。

「キュウィ〜」

(とっくに生まれてもおかしくないんだけどな?)

 流れ込んでくる光、周囲に見える色の流れ。何となくそれが魔力だとか気と呼ばれるような力のはわかってきた。おそらく、この自称『姉』という存在はとてつもなく強い力を持っているのだろう。

「キュ〜」

(よいしょっと!)

 一瞬訪れる浮遊感。今まで近くで語りかけるだけだった白い光が周囲を包み、手の伸ばせば届く距離にある。

「キュ、ギィキュ〜、キュキュガ〜」

(ママがね、君は生きる気力が無いから放っておきなさいって言うんだよ)

 一度だけ、この白い光とは違う大きな何かが遠くに見えたことがあった。もしかしたら、あれは母親だったのかもしれない。どうやら今の母親というのは、自分の心境を見抜いているようだ。何となく居た堪れなくなり、これ以上声を聞きたくなくて頭を抱える。耳はどこにあるのが分からないが、奇声は聞こえなくなった。

(あ、動いた!)

 それでも、頭ではなく胸の奥に染み込んでくるような声は消えてくれない。

(なんで出てきてくれないの? 早く一緒に遊ぼうよ。美味しいものも沢山あるよ)

 無邪気で明るく、優しい声。だが、それでも外の世界への恐怖は消えない。

(…怖いよ)

 あらゆることが怖い。見知らぬ世界、見知らぬ生物、人でなくなった自分。それだけでも人としての自分が、外の世界では生きていけないと警報を鳴らしているようだ。

(そっか…。でも、大丈夫!)

 周囲が完全に白い光に包まれ、光と共にぬくもりが流れ込んでくる。

(お姉ちゃん、最強だから。…何があっても、“君”を守るよ)


“守る”


優しく囁かれたその言葉。だが何故か今まで自分を支配していた暗い気持ちが晴れ、顔をあげる。そこに広がる光に、抗えないようか畏怖すら感じた。そしてその光に向かって手を伸ばす。不安も、恐怖も、迷いも…全てを忘れて。

『パキパキッ』

 崩れ去った壁の向こう。そこには優しく微笑む白いドラゴンの顔がある。

「キュギィ、キュアァ」

(やっと会えたね。…クロノス)

 視界に入る漆黒の鱗に覆われた手。そこに姉は頬を擦り付ける。そこに感じるのは温もりは、新たな物語の幕開けを知らせていた。





あらすじはできてますが、仕事であまり書く暇無いので、投稿は不定期になると思われます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ