ある一日……。
…………………。
光、光……。まるで何も遮るものがないかの如く光はただ強く、強く。
まぶしい……。
まぶしい!!
ここで俺……高橋雄一は目覚めた。
「はっ!!!」
そこはいつも寝ていたふかふかのベッドでは無かった。お気に入りのマリオの時計も、ピカチューの貯金箱も無い……。そこは屋根も無く、庭も無く、ただだた溢れんばかりの日光が俺の顔を照らしていた。
「うぁ……」
俺はあまりの眩しさに手で顔を覆った。
シャリ。
手には砂がついていた。
砂?
俺は思わず辺りを見回す。
そこは……砂漠……、とでも言えばいいのか。とにかく辺り一面が砂の世界だった。
……鳥取砂丘?
俺は頭を横に振る。
俺の家は埼玉だぞ……。そういえば、父さんは? 母さんは? 妹のミキは? どこいった? まてまて、そもそもどうして俺はこんな何も無い砂漠みたいなところにいるんだ? まさかサハラ砂漠?? ゴビ砂漠?? いや、やっぱり鳥取砂丘なのか? というより、どうして俺はこんなところで一人でいるんだ??
怖い……寂しい……。
「かあさ~~~ん!!」
俺は精一杯叫んだ。聞こえるはずのない声だ。だが叫ばずにはいられない。俺は立ち上がり遠くまで聞こえるように叫んだ。
「とうさ~~~ん!! ミキ~~~!!!」
ガン!!
何かに引っかかった。
俺はそれを見る。先端部分が固い何かだった。軽いものかと思って蹴飛ばそうとするとびくともせず、むしろこっちが痛い……。というか俺はどうも裸足だったようだ。そりゃ蹴ろうとした親指が痛いはずだ。
ん?
俺は自分の格好を見回す。それは裸……素っ裸……だった。
はぁ? なんで裸??
変態による誘拐か??
中学3年の俺はそんなことを思いつつ、この奇妙な状況を考えた。砂漠に俺一人……しかも素っ裸……。
俺は直前のことを思いだそうとする。もしも誘拐だとしたら、どうして俺は犯人達に捕まっていないのか……。何故こんな砂漠に一人なのだろう?
? 頭が痛い!!
思いだそうとすると頭の芯の部分がジンジンと痛む。
だが一瞬。何かを思いだした。それはスカイツリーくらいの高さから埼玉の街を見下ろしている風景。
飛行機にのせられたのか? 俺は……。
だんだんと分かって来た気がした。誘拐犯は俺を飛行機にのせどこかの砂漠に素っ裸のまま放り投げたのだ……。
だが、なぜ?
何か違う気がする。
何か……何かを身落としている気が……。
その時、風が吹き、砂が舞い上がった大地が、俺の下に“ある物”を連れてきた……。
あ? アレは!!
俺はそれをうまい具合にキャッチした。
それは一枚の新聞の切れはし……。
そして中身を見て驚く。
東京新聞??
俺は再度辺りを見回す。ここはやはり鳥取砂丘なのだろうか? 日本の新聞が不意に飛んでくるなんて……。もしも鳥取砂丘なら人を呼べる。
少々気分が上向いた俺は新聞を見た。
新聞にはデカデカと「日本滅亡」「怪獣出現」と書いてあった。
はぁ??
新聞にはその怪物……いや怪獣の写真がでかでかと映っていた。
「なんじゃこりゃ????」
紫の体。するどく尖った牙。1000本近くある触手のようなもの……。タコ? イカ? 大王イカ?? ゴジラ?? いやビオランテか? その全ての手? 触手には青いヒレのようなものがついていた。
俺の頭は最高にこんがらがっていた。そして、その新聞記事の裏面を見る。
『死者ついに5000万人を突破』
はぁ??
いやいや、5000万人?? 日本の人口の半分近く?? ありえねーだろそんな事……。
水爆実験を都心でやったとしてもこんなことにはならないのではないだろうか?
だが……もしも本当であれはとんでもない大惨事である。
いやいやありえないでしょ(笑)
あーもう本当に……。
ったく嘘かきやがって。
こんなことあるわけない。そういえば風の噂で虚構新聞というものがあるらしいと聞いた事がある。あれに違いない。変なもん作りやがって。
そして新聞を放り投げようとした時、俺はあることに気付いた。
自分の手の甲に青いヒレのようなものがあったのだ。
「なんだ??」
そのヒレは突然別の生物かのように動き出し、その数を増やしてゆく。
「あ、あああ、なんだこりゃ……なんだこりゃ??」
逆の手の甲にも同じような青いヒレが生え、ビクビクと動き出す。
「あ? あ?」
いつの間にか持っていたハズの新聞が親指の腹の部分にすっぽり入るくらいに小さくなっていた。
何故? 小さくなったんだ? 何故?
俺はもう一度あたりを見る。すると先ほどは見えなかった山々の景色が見えてくる。ただし、剥げ山ばかりであるが……。
しかし、何やら景色の縮尺がおかしいように感じる。自分の目線が高すぎるような気がするのだ……。
その瞬間気づく。
新聞が小さくなったのではない。
俺が大きくなっているのだ。
「うわあああ!!! これは!!! アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
俺の体はどんどんと紫色になっていき。口からは牙が生え指は細かく別れその一本一本が伸びてゆく、まるで指が1000本以上あるかのようだ。
俺の体は更に加速度的にどんどん大きくなっていき際限を知らない。
そうか一瞬だけ見えた埼玉の街を見下ろした映像は……俺が“立って”埼玉を見下ろした映像だったのか……。
「ウゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
もう地球には一匹の生物のみしか存在しない。海にも山にも川にも、木も鳥も馬も牛も羊も犬も猫も魚も虫もプランクトンもバクテリアも、ありとあらゆる生物が存在しない。
「ウゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
存在するのは一匹……俺……高橋雄一だけ。




