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神様の天秤

作者: Zoo

 大勢の人間が列をなして待っていました。

 私は不安になって、見ず知らずの前にいた方にこの列がなんの列なのかを聞きました。

 彼は言いました。

「これは死後の裁量を決める秤を待つ列です。あの秤で私たちの今後の運命が変わるのです」

 私は生前、大した人間ではありませんでした。

 それこそ人に言えば溜息をつかれるような、つまらないものだったと思います。

 ある男が天秤に乗りました。

 もう一方の天秤に、次々に人が乗って行きます。乗っても乗っても、天秤は一向にあがりません。

 私は見ず知らずの前にいた方に尋ねました。

「あの方は生前、何をしていたのですか」

「あの方は生前、医者をしていました。天秤に乗っているのは、彼がこれまで救ってきた方々です」

 やがて、大勢の人間が乗って天秤はやっと均等に保たれ、その人は目の前に現れた扉を開けました。

 もう一方の天秤の人間も現れた扉に入って行きました。

 次の人が天秤に乗りました。すると先程の人に負けず劣らず、大勢の人が天秤に乗りましたが、その後で天秤から降りて行きました。

 私は見ず知らずの前にいた方に尋ねました。

「あの方は生前、何をしていたのですか」

「あの方は生前、ある国の政治家をしていました。大勢を救いましたが、大勢が犠牲になりました」

 結局天秤にはその人の家族だけが残りました。その人は残った家族と扉の奥へ消えて行きました。

 やがて私の番がきました。

 私の反対側の天秤には誰も乗っていないのに、天秤が均等になりました。

 私は不思議に思い、天秤をよく目を凝らして見ました。

 そこには一匹のナメクジがいました。

 そこで私はようやく、そのナメクジが昨日、ふみつけそうになって、避けたときのナメクジであることに気がつきました。それはほんの気まぐれであり、ただふみつけたら気持ちが悪いと思った、それだけのことでした。

 私は目の前に現れた扉に手をかけたまま、しばらくの間考え事をするのでした。



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― 新着の感想 ―
[一言] とても深い内容ですね。 心に残ります。 ありがとうございました。
2015/12/05 09:20 退会済み
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[一言] 最後のオチでどういったシステムなのか理解しました。 短いなりに上手いことまとまってます。楽しめましたー。
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