設定とそれから
暗い部屋の中に座る男が一人。パソコンの光とタイピングの音だけが主張する。
男の名前は寺坂徹、今年21歳である。頭はそこそこよく、運動もそれなりにでき順当に行けばある程度の生活をおくれるはずであった。
その自堕落な性格がなければ。
父母ともに高名な弁護士であり家庭は裕福だが、2人が家に帰ってくることは滅多に無い。そして徹はそれにこきつけ大学を休み続けネットサーフィンの毎日を送っていた。
いわゆるニートである。
「あ〜、なんか面白いゲームねえかな〜。ってなんだこの広告。あなたの世界をガラッと帰る。不思議な旅へようこそ…ってもうちょっとひねったキャッチコピーあるだろ…まあやってみるか!」
そうしてクリックした先にはゲームのキャラを作るメイキング画面が表示されていた。
容姿 0
知能 0
力 0
カリスマ 0
魔法 0
※MAX100
課金制 10ポイントにつき一万円
保有ポイント50
「あー、ポイントを振り込んで強さを決めるやつか、それにしても元々が50って少なくないか?てか課金たかっ!最大45万かよ!んーまあ月のお小遣いから出せるけど…ばかばかしいよなぁ。やめーた!」
画面を放置してベッド寝っ転がる。
ゲームのことを頭の隅に追いやり読みかけの小説に手を伸ばす。
しかし何故だかあのゲームのことが無性に気になってしまっていた。本の内容などまるで頭に入ってくる気がしないのだ。
「あー!もう!やるっきゃねえか!くそっ!45万課金!はいどーーん!」
勢いに任せ45万を一気に費やす。よくよく考えれば正気の沙汰ではないが、もうすでにこのゲームに飲み込まれてしまっていたのかもしれない。
全ての数値をMAXまで振り、ゲームのスタートボタンを押した。
と、途端に画面が眩く光り元の暗さに戻った時、部屋に人影はなかった。