異世界へようこそ(1)
初投稿作品なので、文体がおかしな所があるかもしれませんが、ご了承下さい。
目を開いたら、匠の親友二人が目の前にいた。
ただ、場所がおかしい。
「……というか、ここはどこだと思う?」
匠が涼、徹に一応質問してみた。
「わかんねーな」
「さーな」
同じ意味合いの返し言葉にため息を一つ付きたかったが、少し考えてみた。
「たしか僕ら、担任のビィーンの車に乗っていたはずだよね?」
「あぁそうだぜ。だけどバイト後の帰り道で捕まって」
「盛大にビンタを食らった後にな」
三人ともに記憶は一緒だった。しかし、どう言う風に転んだら、こんなにも景色が良く、風が涼しく吹き抜ける丘の上にいるのだろうか?
「えーっと、確かさっきまでは———」
と、記憶を遡ってみた。
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事の発端は、三人の働いているバイト先にあった。世間一般では『クラブ』と呼ばれる、大人達が楽しく、時には甘く夜のひと時を癒す店であることだ。だからと言って、この三人が世の女性を癒すわけではない。この店は『ホストクラブ』ではなく、『ホステスクラブ』なのだからだ。どの店でも一緒だか、まぁホステスクラブでの男の仕事と言ったら、ボーイと呼ばれる給仕的なものか、ホステスを送り迎えをする運転手かのどちらかだ。(支配人や副支配人ってのもいるが、ハナから無理なものは除外しておく。)そして、高1で最近三人とも誕生日を迎えた16歳の俺達が運転免許を持ってる訳もなく、必然的にボーイとして働くのは至極真っ当な事だ。当たり前だか、16歳の現役高校生を雇ってくれる様な店ではあるはずがないので、履歴書改竄・年齢詐称など数々の工程を経たお陰で働いていられるのだ。
だが問題が一つ、残念な事に高校生であるがゆえに学校に行かなければならない事だ。どんなに仕事が早く終わっても午前4時頃だ。下手したら朝7時半まで掃除などの雑用の仕事をする事だってある。それから家に帰って寝たとしても眠気が治まる訳もなく、ポカポカする朝から雀の囀りとお経の様な英文を左右の耳に流されたら誰だって机に屈してしまう。だから三人は授業は睡眠の為に惜しみも無く利用していた。教師達も最初は叱咤していたが、三人が態度を改める事も無かったので、終いには注意はおろか質問を当てられる事すら無くなっていた。しかし、一人だけ注意し続けた教師がいた。それが先程会話に出てきた数学教師の花田実だ。生徒指導員の仕事も兼用しているからか、はたまた生徒を叱る事に生き甲斐を感じているのかは解らないが、兎に角三人を執拗に注意してきた。やれ内申点だの、やれ将来の事だのと、正直有難迷惑だった。こちらは夜からの仕事の為に体力を回復しているのに、いちいち注意の為に起こされたら溜まったものじゃない。ちなみに『ビィーン』と言うあだ名は、徹が海外のコメディー番組を見てたら、あのブスッとした仏頂面が激似で爆笑し、さらに内容もあの顔でコミカルな動きで大爆笑。すぐさま三人の呼び名になったのは言うまでもない。
そんなこんなで3ヶ月が経ち、11月も後半に差し掛かった頃、ビィーンが三人の学校生活に違和感を感じたのかも知れない。そして、まさか三人とも尾行されていとは知る由もなかったのだ。この日も仕事が5時前に終わり、三人とも疲れきった表情で裏口から店を後にした。筋道を通って繁華街に出た瞬間、涼、徹、匠の順番でいきなり平手打ちを食らったのである。
その後は学校に強制連行され、集まった生活指導員にお釣りが出るくらいにボコボコに殴られ(体罰ではない程度に)、校長室で有難いくらいに説教され、停学3週間と補習1ヶ月の『お土産』まで貰って、ビィーンの車で三人共自宅まで送迎されていたのである。途中車内でビィーンが『俺はお前達の為に間違った道を歩かせたくなかったからだ!だから尾行をしていたんだ!」と何をストーカー紛いの事をしておいて、偉そうに語っているんだ?と、三人共イラついて聞いていたが、如何せん、三人は仕事明けからもう2時間以上経っていたので、眠たさのピークが訪れていたらしい。程なくして三人共に徐々に深い眠りに落ちていった。
ただ、車の助手席に座っていた匠がうっすらと覚えているのは、誰かの「うわっ!」と言う声と、朝の光を遮る大きな黒い影が瞼の裏に感じた所で意識を失った—————
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匠が記憶を頼りに導き出した答えは、
『僕ら三人とも死んでいるだろう』
というものだった。
これには涼、徹の二人は驚いていたが、
「まぁ匠が言うのならマジかもな」
「だけどそんな実感わかねー」
と匠の推測に納得している様だった。
事実、匠がこの三人の中で一番の頭脳派ある。授業中、他の二人と一緒に寝ている事が大半なのだが、10月にあった中間テストは学年の中で上位に位置していた。それは匠の場合はかなり特殊で、教科書など「二、三度読み返したら大抵の内容は覚えられる」ものだ。『完全記憶能力』などと言う、最近巷で流行っていたアニメなどとは違って、時間が経てば徐々に忘れていくらしい。はしょって言えば、人より物覚えが格段にいいって事だ。そんなお陰でテストでは常に上位を維持していたのである。テスト前になると、涼、徹の家庭教師係扱いになり、次第に三人の中で保護者的な立場を築いていったのである。そんな訳で涼と徹は匠の事をかなり信頼しているからこそ、あのような返事になったのである——————
「つーか、じゃあ、俺らはビィーンの運転のせいで死んでしまったと?」
「……まぁそういうことかな」
「ぁんのクソ教師、ふざけんなよ!!」
匠の返答に涼は本気でキレた。
まぁ涼がこうなるだろうなぁと予測はしてた。だって短気だし。
「まぁ死んでしまったことはしょうがないとして———」
「「しょうがなくはないだろ!!」」
涼と徹にハモられてしまった。
話が進まなくなりそうなので、面倒臭いがまずは涼の怒りを抑えよう。
「あいつが僕達と一緒にいなかったことはいろんな意味でラッキーだよ」
「なんだよ、『いろんな意味で』って?」
「もし一緒にいたら、涼はあいつをフルボッコにしてしまうだろ?僕は涼を犯罪者にはしたくないからさ」
「……ふぅ、何かこのやり取りが馬鹿らしく思えてきた」
「そうそう。何事も穏便に」
涼はあまり納得のいく顔をしていなかったが、的を得ない会話に諦めたのか、溜息をついていた。もう怒りも収まっている。
ただ、今度は徹が何か納得がいかない顔をしている。
「さっきの話なんだけど……」
徹の言葉に顔を向ける二人。
「匠の事は信じてるけど、もし仮に死んでいんだとしたら、何で俺達はこう、何て言うか……『まだ生きてますよ』みたいな感じ……なんだろうな?」
「「……」」
徹の言っている事はよく解る。
確かにあの時死んでいたのだとしたなら少しおかしい。一瞬天国かなぁと考えてはしたが、今の状況はあまりにも現実味があって矛盾している。夢であったとしても同じ様なものだ。
さらに言えば、周りにも違和感を感じた。さっきまで少し肌寒い11月の空だったのだか、今は少し暖かい4〜5月頃に様変わりしている。
……何だか頭が痛くなってきた。
今の状況より、今後の事を考えよう。
「……深く考えてもしょうがないか。それでこれからどうしようか?」
匠の問いかけに涼が言葉を返した。
「ここがどこか分からないから、適当にぶらついてみよーぜ」
涼の提案に特に異論はない。
「「オッケー」」
「じゃあ早く行こーぜ」
考えるだけ無駄なこの状況を打破すべく、まずは動いてみると言う答えに行き着いた。
と、三人が歩き始めようとした時に『それ』は起こった。突然、空間の一部が歪み始めたと思いきや、人間と思わしき物体が一瞬で三人の目の前に姿を表した——————
頑張って次の話を作っていきまーす。
iPhoneでは入力が辛い……。