1-2
「ちょっと待っててね。もう直ぐご飯できるから。」
一階に降りて、リビングに向かうと食欲をそそる匂いがしてくる。
どうやら、ミミが料理を作ってくれているらしい。『ありがとう』と声をかけ、新聞をとりに玄関に向かう。
「新聞ならとったから、座って。」
朝の日課の新聞取りまでもやってくれていたらしい。
このロリっ子できるぞ。
「お弁当も一緒に作っといたから。一緒に食べようね。 秋人 」
さっきからミミに秋人と呼ばれると不思議な気分になる。うーん新種の萌えなのかな。
「なあ、ミミ」
「何、秋人?」
小首を傾げながら、パンをチョコっとかじる姿は最近の属性を追加しすぎて訳が分からなくなった萌えキャラとは違い由緒ある可愛さだ。
「何で当然のように家に居るんだ?それとお前さっき何した?殴った、殴ったよね。」
「だって秋人が強引なんだもん。もっと優しくしてくれないと女の子は駄目なんだからね。」
「あ…うん。」
そうだよな。女の子に強引な事したらエロゲじゃあ BAD END 。それなのに俺はただ気絶してぐうぐう睡眠してただけだもんな。なんだ、悪いの俺じゃん。
「『あ…うん』じゃねぇ。読者の方は間違いなく深い理由想像したぞ。何だよ『その瞬間秋人の時間は止まった。』って厨二病全開かよ。正直恥ずかしいよ。殴られただけかよ。」
とりあえず大声を出してみる。夢にまでみたかもしれないエロゲルートだけど、実際なってみると怖いぞ。だって起きたら女の子がベッドの上だぜ。何それ怖い。
かくいうミミは「現実を受け入れられない男って最低」といってきやがった。OK受け入れてやろうじゃないですか。
「その服どうしたの?」
「あれ?秋人の通ってる制服と違う?同じもの用意した筈なんだけどな。」
無理っす。受け止められません。
「勿論。秋人と一緒のクラスに転入だよ。」
ブイとピースする姿は年相応で可愛らしい。そういえばミミって何歳なんだ?
「うーんとりあえず、お前は誰で、俺とはどんな関係でこれからどうしたいの?それだけでも良いんで教えてください。」
これでもかというくらい頭を下げる。綺麗な垂直を描く俺の身体かっこ悪いぞ。
「やってて恥ずかしくない?まぁ良いわ、教えてあげる。私は『ミーミ・アストレア』で、秋人とは婚約者でこれから結婚して夫婦になるの。」
ウインナーをフォークで串刺しにしてパクッと頬張った。多分照れ隠しなんだろうな。
「宣戦布告なんだからね。」
ミミは恥ずかしそうにうつむいた。