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第12話 過去を乗り越えた少女

小夜は部屋の中から、ドア越しに久遠へ話しかけた


「……今度の相手。私の事を馬鹿にしてきた人なの」


「……そうなんだ」


「うん。昔っからなんだ」


小夜は昔の事を打ち明けた。


「5年前──」


第零異能記録学園に入学する前のことだった。


「うん」


「大丈夫かしら。夜桜さん弱いのに。誰にも勝った事ないでしょ」


「……うん。第零異能記録学園行ったら強くなって貴方を倒すから」


「無理だと思うよ。ずっと弱いままよ」


「そんなことない絶対強くなる」


「せいぜい頑張って」


(絶対、勝って見せる)


「そこから私を馬鹿にしてくる事が多くなったの」


「なるほどね」


「でも、今は黒刃先生に鍛えてもらってるでしょ」


「……うん。自信がないの。勝てるか」


「小夜なら勝てる」


「……勝てなかったら?」


「それでもいい。勝つ事が強いって思わないかな。俺もラストメモリアを使う時はめっちゃ怖いよ。記憶を奪われるし。みんなの事忘れてしまうから」


「でも、霧凪綾瀬には負けたくない」


「じゃあ、今日その殻を壊そう?」


「……出来るかな?」


「みんなと頑張ろう」


「わかった。私、頑張る」


小夜はドアを開けた。


「私はもう逃げない」


「その意気だ」


「早く行かないと時間がない」


「うん」


四人は急いで学園へ向かった。

やがて試合会場に到着すると、観客席では小夜がまだ来ていないことにざわめきが起きていた。


「まだ、夜桜さんは来ないですね」


「そうですね。このまま来なかった場合。棄権とみなします」


「私の勝ちね」


「規定の時間を過ぎましたので、夜桜小夜を棄権とし――」


「ちょっと待った」


そこにきたのは小夜だった。


「な、な、なんと夜桜きました」


「ですね。どうします?棄権はなしにしますか?」


「そうですね。棄権はなしで。このまま戦ってもらいましょう」


「わかりました。これから、霧凪綾瀬VS夜桜小夜の試合が始まります」


「逃げなかったのね」


「うん。本当は逃げたかった。だけど、ここで逃げたらいつもの私だから」


「逃げなかったのは認めましょう。この試合で貴方は負けることになるの」


「絶対に負けない。貴方に勝つために戦う」


「それでは試合開始」


二人は試合場の中央で向かい合った。


夜桜は霧凪に斬りかかる。霧凪は軽く笑った。


「ふっ」


「試合中だよ。なに笑ってるの?」


「夜桜が真正面からくるとはね」


夜桜は霧凪の剣を受け止め、はじいた。

霧凪はすぐに斬り返したが、夜桜も剣で受け止めた。


「キンッ!」


「カンッ!」


お互い一歩も引かなかった。霧凪は技を繰り出す。


「霧凪・零界(きりなぎ・れいか)」


辺りは霧に包まれた。霧凪の姿が見えなくなった。


「ゴホゴホ」


(──なにも見えない)


「この技は気配も音も消える技よ。小夜はどこまで耐えられる」


「なにも見えないし音も聞こえない。どうしたら」


小夜はどう対策するか考えていた。


「この霧は消えないわよ。なにしても無駄なのよ」


「そんなのはわからないよ」


「私に勝ってから言ってちょうだい」


夜桜の体に霧凪の剣が食い込んだ。


「ザクッ!」


右肩を斬られた。


「クッ!」


小夜は右肩を抑えた。


「このまま、勝たせてもらうわよ」


「私が勝つんだから」


「どうやって勝つつもり?この状況で勝てる見込みないのよ」


霧凪は再び斬りかかる。


「これで、終わりよ」


小夜に斬りつけたが、手応えがなかった。


「ッ!」


「私の技。夜桜•影消」


小夜も気配を消した。


「どこに行ったの?」


「この技を使うしかない。夜桜・晴天ノ刃(よざくら・せいてんのやいば)」


小夜は新技を編み出していた。辺りの霧が一瞬にして晴れた。そして、霧凪の姿が現れた。


「貴方、そんな技なかったはず」


「これは私の新しい技。あの後から黒刃先生と特訓の成果だよ。ここで初めて成功した技だから」


「それがどうしたっていうの?」


「無音霧刃(むおんむじん)」


音を消した斬撃が飛んできた。小夜が受け止めた。受け止めたはずなのに、なぜか斬られた。


「グサッ!」


(受け止めたのになんで斬られたの?)


「なんで、斬られたって思ってるでしょ?この技は音を消した斬撃。気づいた時には斬られてるのよ。1発だけ放ってないのよ。2発放ったからくらったの」


「クッ!」


「それでも、霧を晴らしただけじゃないよ。桜が落ちた――これが、この技のもう一つの能力」


「なにッ!」


「サァー!」


「いけ〜!」


「こんな技くらわない」


「キンッ!」


「カンッ!」


無数の桜の花びらが鋭い刃みたいに霧凪に斬りつける。かなりのダメージを受けたように見えたが、

霧凪はまだ立っていた。


「ハァハァ。まだ戦える」


「綾瀬ちゃん、もうこの戦い終わらせよう?」


「まだまだ」


「もう無理だよ」


「これで終わりにするね。夜桜・終刻斬」


霧凪の斬撃を受け止めた。

しかし、その瞬間――霧凪の体に斬撃が走った。


「カハッ!」


「ここで、負けるわけにはいかない」


ヨロケながら小夜に近づいてきた。

霧凪はそのまま倒れた。


「勝者。夜桜」


「勝ったの。やった〜」


「よかった。小夜勝てたんだね」


「うん」


「今度は私と綾人だね」


「うん。頑張らないと」


小夜と霧凪の戦いは終わった。


翌日、綾人と雪乃もそれぞれ別の相手と試合をした。

二人とも苦戦したが、なんとか勝利することができた。


そして、夏休みに入った。


「夏休み入った〜」


「うん。四人でどこか行かない?」


「いいね。どこがいいかな」


「私は、海に行きたい」


「いいけど。いつにす?」


「俺は明日から一週間ほど実家に行くんだ」


「そうなんだ」


「うん。ラストメモリアのことを聞きに。だからその後ならいいよ」


「わかった。その後に行こう」


翌朝、久遠は朝早く寮を出た。


「この時間は人が少ないな」


駅に着いて電車の切符を買って駅のホームに向かう。お腹も空いてたから自分で作ったオニギリをベンチに座って食べる。


食べ終わった頃、電車が駅に到着した。久遠は電車に乗り込んだ。実家までは電車を乗り継いで、約二時間かかる。


「ガタン、ゴトン」


だんだん、街が見えなくなり山だけになって行く。


二時間ほど電車に乗り、次の駅で乗り換えた。


この電車に乗れば、実家の最寄り駅に着く。


電車は目的地に着いた。電車を降りてから、久遠は駅から続く道を歩いていった。

山道をしばらく歩くと、見覚えのある家が見えてきた。

ようやく実家に着いた。久遠は玄関の扉を開けた。懐かしい匂い。


「ガラガラ」


「ただいま」


「お兄ちゃん、おかえりなさい」


「ただいま。親父は?」


「お父さんなら自分の部屋にいるわよ」


「わかった。ありがとう。親父に会ってくる」


「わかった」


「親父、ただいま」


「うむ。おかえり」


「親父に聞きたいことがあるんだ。ラストメモリアについて」


「そうか。ラストメモリアはドラゴンから作ったって言ったよな」


「うん」


「だから、使う者は記憶を奪われる。主に呪いのようなものだな」


「そうなんだ。俺はまだ使いこなせない。今の先生がラストメモリアを抑える腕輪を貰ったんだ」


「なるほど」


「うん。後、ラストメモリアを狙ってるやつもいるの知ってた?」


「ワシの時も、ラストメモリアを狙う組織が動いていた。だが、完全に壊滅させることはできなかった。」


「そうなんだ。そいつらはなにがしたいんだ?」


「ラストメモリアの中にいるドラゴンを復活させ、この世界を破壊し、記憶を奪いたいのであろう」


「まだはっきりとはわからないんだよね?」


「そうだな」

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