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通り過がりにコーヒーショップ
窓を小突くとふらっと人影が現れた。今日はいつもより二分の余裕がある。
「コーヒー、あとクッキーも」
窓を開けた店長はいつもと同じ顔だ。
「はい、百円ね」
窓際に、マグカップと小皿を乗せるためだけの小さなトレイが置かれる。あらかじめポケットに入れておいた硬貨を渡して、コーヒーをすする。舌がひりつく熱さでのけ反りそうになるが、毎度の事なので気にしない。
「今日はニュースある?」
「さっき見た朝ドラが面白かったくらいかな」
「そりゃどうも」
クッキーを一口で嚙み砕いてから、コーヒーで飲み込む。
「今日は嫌な天気だね、一日中曇るって」
空を見た店長が言うのを横目で見ながらもう一枚のクッキーを食べてしまい、コーヒーを根性で飲み込む。喉元を過ぎても胃袋がカンカンに熱い。
「言うほど悪くないよ。ごちそうさま」
「毎度あり」
一瞬だけ目を合わせ、すぐに歩き出す。忘れられない熱さと、コーヒーの苦みが背中を押してくれたように思えた。




