表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄、結構ですわ。ただし私が裏で支えていた王室予算三万枚、今すぐ一括返済してくださるかしら?  作者: 朝比奈ミナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/28

第19話:『聖教会様。祈りで腹が膨れないのなら、教会の資産を売却しましょうか』

鉄屑と化した蒸気機関が立ち並ぶ、バルディア王立工房。

 そこへ現れた白銀の法衣の老人――聖教会の枢機卿、ガラッゾ。彼は手にした審判の杖を石畳に叩きつけ、慈悲深い聖職者の仮面の下から、どす黒い敵意を滲ませておりました。


「エレノラ・フォン・ロスタール。……数字という名の悪魔の言葉で人の心を惑わし、あまつさえ神から授かった『知恵(転生者の知識)』を奪い、私物化するとは。あなたの所業は、明白なる異端。神の調和を乱す冒涜ですわ」


 あら。異端、冒涜。

 使い古された、随分と安っぽい言葉ですわね。

 私はゆっくりと扇を広げ、枢機卿の威圧を鼻で笑いました。


「ごきげんよう、枢機卿様。……神の調和、ですって? ふふ、わたくしの目には、あなたのその立派な法衣を維持するための『不透明な寄付金の流れ』の方が、よほど世界の調和を乱しているように見えますけれど?」


「黙りなさい、悪魔の娘め! 教会の資産はすべて神の所有物。それを詮索するなど、死後、永遠の地獄に墜ちる覚悟がおありか!」


 地獄。ええ、結構ですわ。

 そちらの帳簿が綺麗なら、わたくしも喜んで案内していただきますわ。


「……シエル、例の『神の資産リスト』を」


 シエルが懐から取り出したのは、一枚の真っ黒な表紙の帳簿でした。

 それを見た枢機卿の顔が、一瞬、ぴくりと痙攣したのを見逃しませんでしたわ。


「聖教会が全大陸に所有する免税農地、合計三万ヘクタール。……さらに、過去十年間にわたり、信者たちから『罪の浄化』と称して徴収した金貨百二十万枚。……ですが枢機卿様、その莫大な資金のうち、実際に救済ボランティアに回されたのは、わずか三パーセント。……残りの九十七パーセントは、一体どこへ消えたのかしら?」


「なっ……何故、それを……っ!?」


「不思議ですか? 聖教会の会計監査マネーロンダリングを担当していた銀行……昨夜、わたくしがその全株式を買い取らせていただきましたの。……つまり、教会の隠し口座は、今この瞬間からすべて私の管理下にありますわ」


 私は、震える枢機卿の目の前で、冷徹に最後通牒を突きつけました。


「枢機卿様。本日をもって、聖教会の『免税特権』を全面廃止いたします。……過去に遡り、不当に得た利益に対する『信仰修正税』を課させていただきますわ。……一週間以内に金貨五十万枚を国庫へ納入なさい。できなければ……その立派な大聖堂、競売オークションにかけて、帝国の『公共浴場』にでも改装させていただきますわよ?」


「き、貴様……っ! 神の家を浴場にするというのか!? 気が狂ったか!」


「気が狂っているのは、飢えた民から最後の一銅貨を奪い、宝石を散りばめた杖を握るあなたたちの方ですわ。……祈りで腹が膨れないのなら、その杖を売って、小麦粉に変えるのが聖職者の務めではなくて?」


 枢機卿は杖を振り上げようとしましたが、背後に控えていた皇帝直属の騎士たちが一斉に剣を抜き、その動きを封じました。

 もはや、宗教の権威など、私の『数字』の前では紙屑同然。


「……準備はすべて整いましたわ。……枢機卿様、せいぜい神に祈りなさいな。……破産宣告を受けた者が、天国へ行けるかどうかの計算をね」


 私は枢機卿の横を通り過ぎ、工房の出口へと向かいました。

 背後で聞こえる老人の呻き声は、沈みゆく古い時代の、最後の悲鳴のように心地よく響きましたわ。


 ですが、馬車へ乗り込む直前、私はシエルからある報告を受けました。


「お嬢様。聖教会の奥深くに、もう一人……『真の聖女』と呼ばれる少女が幽閉されているようです。彼女の力は、リリアナのような紛い物ではない、本物の『奇跡』だとか」


「……あら。本物の奇跡、ですって?」


 私は、唇に指を当て、不敵な微笑を浮かべました。

 本物なら、なおさら結構ですわ。

 その奇跡を『商品化』し、教会の支配から解放して差し上げましょう。


 神様。

 あなたの代理人たちは、あまりに経営が下手すぎましたわね。

 これからは、このわたくし……エレノラが、正しい『信仰の価値』を教えて差し上げますわ。

第19話、お読みいただきありがとうございます。

「信仰修正税」――エレノラ様の容赦ない課税が、聖教会の腐った金庫を直撃しましたわね。

「大聖堂を公共浴場に」という煽り、枢機卿の顔色が土色に変わる様を想像してスカッとしていただけましたでしょうか。


ですが、教会側も黙ってはいません。

幽閉された「真の聖女」セレスティーヌ。

彼女の持つ本物の力が、エレノラ様の経済支配にどのような影響を与えるのか……。

あるいは、エレノラ様が彼女を「最強の広告塔」に変えてしまうのか?


面白かった!続きが気になる!と思ってくださった方は、ぜひ【ブックマーク】をお願いいたします。

皆様の応援が、エレノラ様の「教会の差し押さえ」をより完璧なものにしますの。


次回、第20話は『免罪符の発行、それは「無許可の通貨発行罪」に当たりますわ』。

宗教の皮を被った詐欺ビジネスを、法的に粉砕して差し上げますわ。

どうぞお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ