表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移してみたら、いきなり賞金首になっていた件  作者: 阿部 祐士
第1章 異世界転移してみたら、賞金首になっていた

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/14

仮面

 それからさらに一時間後、アリシアは一人で海斗たちの下へ戻ってきた。

 一応海斗は周りを見渡したが、周りに他の冒険者が潜んでいる気配はなかった。

「アリシア、ずいぶんと時間がかかったじゃないか」

「悪い、悪い、ダーリン。ちょっと手間取ってさ。まあ何故時間がかかったのかは、後の楽しみ、ということで」

 アリシアの何とも意味ありげな発言に、海斗はすぐにでもその理由を知りたかったが、アリシアはおかまいなしに続けた。

「これがその仮面さ」

 アリシアから、顔の上半分を隠す、金縁に青もしくは赤を基調とした色の仮面をそれぞれ手渡された。

「見た目ずいぶんと目立つけど、本当に大丈夫?」

 アリシアはせっかく買ってきてやったのに、といった顔をして

「私の買ってきた仮面にいちゃもんつける気か! これを着けとけば仮面を着ける前より目立たなくなる効果があるんだよ!」

と、声を荒げた。

 それまで少し不安げだった海斗は、ほうとした顔を見せて

「そうなのか」

と少し驚いた様子だった。

「そう。ただし弱点が一つある。それは着けている人間の強い感情に弱いこと。特に強い怒りや恐怖、興奮をおぼえた時に仮面が半透明に透けてくる。そして、目立たなくなる効果も薄れる」

 結衣は肩をすくめて首を振りながら言った。 

「それじゃあ仮面の意味がないじゃん」

 さらにイラッときたアリシアは

「しょうがないだろ、私の手持ちの金で買えるのはこのグレードしかなかったんだから!」

と怒鳴った。

「まあまあ」

 海斗はアリシアをなだめた。アリシアは、仕方がないなといった顔で怒りを収めると、

「後、ここに戻ってくるのに時間がかかったのは、ついでに旅用の服を買ってきたからなんだ。服屋の姉ちゃんにコーディネートを頼んだら、時間がかかっちゃってさぁ」

ともったいぶるように言った。

 そうか、そういうことだったのか。海斗はほっと胸をなでおろした。

「ダーリンたちの服装だと目立つだろ?」

 金のない俺たちに服まで買ってきてくれるとは。海斗はアリシアの厚意に感謝すると同時に、さっきまで疑っていたことに対して、少々胸に痛みを覚えた。

「そうだな。よく気がついてくれた。仮面共々本当にありがとう」

「いいってことよ」

 海斗たちはアリシアが用意した服に着替えた。


 海斗は丈が太ももの半分まで隠れる深緑色のチュニックの上に茶色のレザーベルトでウエストを締めている。下半身はレザーのレギンス、さらにその上に膝上まで隠れる皮の半ズボンを履き、足は頑丈そうな皮のブーツが膝下より下を守ってくれている。

 さらにアリシアは、海斗に多少傷跡が目立つ中古の鉄の胸当てとアリシアがかつて使っていた剣もプレゼントしてくれた。そして海斗は剣を背負うために右肩から左脇の下にかけて斜めに剣帯を掛けた。


 結衣の装備は、革製のボディスーツや、暗褐色のフード付きマント、足音を消す柔らかい靴、手には指先が露出した手袋などのシーフの衣装。そして、最低限自分で護身してもらうためのダガーが手渡された。


「ありがとう、アリシア。あなたのこと、初めていい人だと思えたわ」

 結衣が感謝の言葉を伝えると、アリシアは

「初めてが、余計なんだよ。初めてが!」

とツッコミをいれることを忘れなかった。どうにも二人の相性はよくなさそうだ。

 そして、二人は最後に仮面を着けた。


「それじゃあガレアの町に行って、情報収集してみるか。まずはアリシアが依頼を受けた冒険者ギルドから行こう」

「その前にダーリン、あんまりこんなこと言いたかないんだけど、仮面や服、装備を買って手持ちの金も、ちと心細くなっているんだ。冒険者ギルドに行くなら、ついでに仕事の依頼を受けたいのだが、それでいいかい?」

「そいつはすまない。どれだけ役に立つかわからないが、仕事を手伝わせてもらうよ」

「ついでに、ダーリンやお邪魔虫も冒険者登録したらいい。ただし本名は名乗れないから、仮の名前を考えておく必要があるけどね」

「わかった。どんな名前が自然なんだ?」

「そうだな。そうだ、昔パーティの仲間だった奴の名前がカイル・アルティスって言うんだけど、アルティスって、この辺じゃありふれた名字だからダーリンにはちょうどいいんじゃないのか?」

「俺はアリシアの仲間だった人の名前を名乗らせてもらう、ということか。わかった、そうする。結衣の名前はどうしようか」

「そうだな、お邪魔虫はユリッサ・フローレスって言うのはどうだ? フローレスっていうのもよく聞く姓だから怪しまれないと思うぞ」

「それならいいけど。ちなみにユリッサって誰のファーストネーム?」

「誰じゃなくて、仲間が飼っていた雌犬の名前」

「あなたねぇ……」

「いいだろ、犬の名前だって。人間でもファーストネームとして使う可能性もなくはない」

 つまり、日本で言ったら「モモ」とか「小太郎」あたりになってくるのだろうか。結衣の怒りを買いそうだから、もちろん海斗は声に出して言わなかったが。

「とりあえずこれで名前も決まったし、ガレアの町で情報収集しに行くぞ。結衣もそれでいいな?」

「名前に関しては、本当は良くないけど、良いことにしといてあげる」

「よし、それじゃあ行くぞ」

 アリシアは海斗の腕を抱きながら、海斗と一緒に歩き始めた。結衣もおもしろくなさそうな表情を見せながら、二人の後をついていった。

 その瞬間だった。先程と同じく人の悲鳴に似た鳴き声が森中を駆けめぐった。海斗の体はびくっと震えた。その時、海斗の仮面が半透明になったことに結衣は気付いた。

「……この仮面、ほんとに厄介ね」

 結衣は、アリシアに聞こえないぐらいの声でつぶやいた。

 ガレアの町までは、歩いて数十分だ。だが、そこで彼らを待っているのは情報か、それとも――。

 海斗達の未来を暗示するかのように、森の上から覗く空には黒雲がじわじわと広がり始めていた。

 ここまでお読みいただきありがとうございました。


  仮面と新しい装備を手に入れ、海斗たちは町へと向かいます。 ただ、この仮面の弱点が今後の逃亡生活にどのように影響するのか……。 それ以上に、結衣の『犬由来の偽名』の方が、彼女の日常生活に深刻なダメージを与えそうですが(笑)。


 そして次回、海斗は『新たな女の子』と出会います。 この出会いが、逃亡と情報収集の旅にどのような波紋を広げるのか。

 いよいよ海斗たちの波乱万丈の冒険譚が始まります。


 引き続き楽しんでいただければ嬉しいです.


※ちなみに、本作はアルファポリスにも同名で掲載しています(少し先の話まで公開中です)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ