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異世界転移してみたら、いきなり賞金首になっていた件  作者: 阿部 祐士
第1章 異世界転移してみたら、賞金首になっていた

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夜襲

 その夜、海斗達はリサリアの家族から宿の食堂で歓待を受けた。テーブルにはこれぞとばかりに田舎料理が並んでいた。質素ではあるが、温かみを感じる味付けであった。

 リサリアの父親は

「どうも、うちのリサの命を救って下さったそうで」

と礼を言いながら、海斗の木製のジョッキに葡萄ジュースを注いだ。

 海斗はジョッキを置くと

「いえ、その前にリサからいろいろとお世話になりました。リサが助かったのは、本人の人徳によるものでしょう」

と謙遜した。

 母親もにこやかに笑いながら

「大したおもてなしもできませんが、せいぜい田舎料理をたくさん食べていって下さい」

と優しい口調で言った。

「それでは遠慮なく!」

と昼飯を食べていない結衣は料理をかきこんだ。

 アリシアはため息をつきながら

「私が言うのも何だけど、お邪魔虫女、もう少し上品に食べられないのかよ……」

と言うと、食卓を囲んでいる、結衣以外の皆から笑いが起きた。


 夜が更けて、海斗たちが二階の個室で就寝している最中であった。海斗は何か焦げくさい臭いがしたような気がして、目を覚ました。起き上がると、部屋は白い煙で満ち、喉がひりつく程だった。驚いて胸当てと剣を身につけて扉を開けると、鎧姿のアリシアや結衣も廊下に出ていた。

「ダーリン、一階は火の手が激しく、階段は使えない。窓から飛び降りるしかない」

 そう言うと、アリシアは扉を開けて海斗の部屋に入り、窓を開けた。

「ダーリン、先に降りてみる。何ともなかったら、続いてお邪魔虫とダーリンも飛び降りてくれ」

 そう言って間もなく、窓から飛び降りた。鎧姿で重いだろうに、アリシアは両足で無事表通りに着地した。

「ダーリン、この高さなら大丈夫だ。お邪魔虫と一緒に飛び降りてくれ」

「了解!」

 そう答えると、海斗は先に結衣に順番を譲った。結衣は、海斗の予想以上に軽やかに着地した。盗賊の衣装を着ているからか? そう考えている最中にも、どんどん部屋に煙は充満していく。海斗も急いで飛び降りた。

 何とか無事に着地すると、グレイモンドの灯亭の一階は炎に包まれ、二階に延焼しようとしていた。

 そんな矢先。思いもつかなかった光景に海斗は驚いた。冒険者らしき男がリサリアの父親の喉元に、昼間逃げ去った盗賊の頭目が母親の喉元に、それぞれナイフを突きつけていた。どちらも一触即発の様子をうかがわせながら、アリシア達に無条件降伏を要求していた。 

 頭目の背後には、同じく武装した三名の男たちが控えていた。見た目は冒険者風だが、目つきは鋭く、その装備と(たたず)まいは、まさしく刺客といった雰囲気を醸し出していた。

「Kaito、Yui、武器を捨てて神妙にお縄につくなら、この者達の命までは取らない。だが、抵抗するようなら……わかるよな?」

「お父さん、お母さん!」

 リサリアの悲痛な叫びが、火炎で照らされている街中を駆けめぐる。海斗はアリシアに相談した。

「どうする。武器を捨てて投降するか?」

「そんなことしたって、リサの両親が本当に無事かどうかはわからない……」

「しかし、投降しなければ、リサの両親は確実に殺されるぞ」

 焦れた刺客が

「どうした、決まらないのか? 決まらないのなら、決心がつくようにしてやるぞ」

と言うと、リサの父親の喉仏の下でナイフを少し動かした。首の切り口から一筋の血が垂れる。

「お父さん!」

 リサリアの叫び声を聞き、海斗は決心した。剣を捨てると

「わかった。とりあえず俺が捕まるから、リサリアの両親を離してやってくれ」

と両手を挙げて、頭目たちに近づいていった。

「ダーリン!」

 叫ぶアリシアに海斗は振り返ると目配せをしながら、蹴るしぐさをした。アリシアは黙って様子を窺う。

「お前だけでは駄目だ! そこの仮面をしている盗賊姿の女もだ! 鎧姿のお前はどう見てもYuiではなさそうだからな!」

 結衣はたじろいだ。

「えっ、私も?」

 結衣がそう言って、まごついている間にも、海斗は両手を挙げたまま頭目たちに歩み寄っていく。海斗を縄で縛り上げようと、頭目の後ろで控えていた刺客一名が両手で縄を持って、海斗に近づいてきた。

 その時であった。

 海斗は近づいてきた刺客の腹に膝蹴りを食らわせた。海斗は

「今だ、アリシア!」

と叫ぶ。アリシアは、海斗が石畳の道路に置いた剣を海斗の方に向かって蹴ると、剣は回転をしながら、海斗の近くに止まった。

 それを見ていた頭目は

「ふざけやがって! お前らがやったことが、どういうことになるか、教えてやる」

とナイフでリサリアの母親の首に切りつけようとした。


 剣を拾った海斗は焦った。時間が足りない――!


 そう思った瞬間、母親を拘束していた頭目がよろめいた。

 何とリサリアが頭目に向かって突っ込んできて、母親ごと体当たりをしたのだ! 海斗はその隙を逃さなかった。


 海斗の剣が、頭目の背後から一閃を浴びせる。

 悲鳴をあげて、母親を離す頭目。

 母親は拘束を逃れると、足をもつれさせながらもアリシア達の方へ走り出す。

 海斗は単身となった頭目の頸動脈が通っている辺りを斬って、とどめを刺す。


 隣では、父親を拘束していた刺客が悲鳴をあげていた。その方へ海斗が振り返ると、刺客の手の甲にはナイフが突き刺さっていた。どうやら、アリシアが投げたようだ。海斗は父親を手放した刺客の後頭部を柄で一撃加えると、刺客はよろめいて倒れてそのまま意識を失った。


 炎に照らされた石畳に二つの影が、揺れながら海斗の背後から忍び寄っていた。

 リサリアがはっと振り返ると、二人の刺客が剣を振りかぶっていた。


 それを見た瞬間、リサリアは何も考えずに体が動いていた。


 海斗が残り二名の刺客の方にむき直した時、リサリアの悲鳴が聞こえ、リサリアの体が力なく海斗の胸にもたれかかってきた。リサリアには背中を裂く二閃の刃痕があり、その傷口から赤い雫が石畳に音もなく滴り落ちていた。

「リサリア!」

 海斗の叫びは、炎で人や建物の影が揺らめく表通りを貫くように響いていった。

 お読みいただき、ありがとうございました。


 リサリアのとった行動は、海斗にとって大きな転機となります。

 この出来事が、海斗の心情にどのような変化をもたらすのか、丁寧に描いていければと思っています。


 次回も読んでいただければ幸いです。


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