表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
肥ノ国立志伝~戦国制度革命史  作者: 日野龍哉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/22

第18章 長崎連合都市群と龍造寺強襲

この文章は生成AIの力を借りながら、細々と進めています。ご了承ください。

挿絵(By みてみん)

 初夏、長崎の港はさらに膨らんでいた。倉庫が増え、桟橋が伸びる。南蛮船が停まり、帆柱が谷の空を覆う。

 だが龍重は言った。

「まだ港ではない。」

 空海が聞く。

「では何です。」

 龍重は海を見る。

「国の心臓じゃ。」

 銭が流れる、人が集まる、そして噂も流れる。

 その噂はやがて肥前平野にも届いた。


 肥前、龍造寺家佐嘉城。

 龍造寺隆信は地図を見ていた。

「長崎。」

 短く言う。家臣が答える。

「日野が押さえております。」

 隆信は腕を組んだ。

「港は銭を生む。」

 しばらく沈黙。

「奪うか。」

 家臣が言う。

「難しいかと。」

 理由は明確だった。

 西彼杵半島と山岳地形、そして海軍。

 平野の軍では簡単に攻められない。

 隆信は言った。

「ならば。」

 指が地図を北へ動く。

 少弐領。

「ここを叩く。」

 家臣が驚く。

「日野ではなく?」

 隆信は笑った。

「圧をかける。」

 日野の港は北肥前の商圏に食い込んでいる。

 少弐を叩けば商人が逃げる、市場が揺れる、長崎の流通が乱れる。

 隆信は言う。

「港は兵で落とすものではない。」

「市場で落とす。」

 そして軍が動いた。龍造寺の兵が北肥前へ向かう。

 神浦城、日野龍重邸。

 空海が文を読む。

「来ましたな。」

 龍重が頷く。

「龍造寺隆信、肥前の熊か。」

 空海。

「少弐を叩いております。」

 龍重は笑った。

「予定通りじゃ。」

 空海も笑う。

 実はこの動きは日野と鍋島の共謀。

 数日前、鍋島家に密書が届いていた。送り主は日野。内容は単純。

『龍造寺を動かせ。』

 鍋島清房は国境で大規模な巻き狩りを行う。練度向上の為によく行われる。だが、少弐家はそれを挑発と受け取る。

 そして北肥前へ軍を出す。龍造寺家は攻め込まれったと反撃。結果、北肥前が荒れる。責任は誰に行くか……巻き狩りを行った鍋島清房。

 空海が言う。

「鍋島殿は責任を取るでしょう。」

 龍重。

「当然じゃ。」

 空海。

「龍造寺家中は荒れます。」

 龍重。

「疑心暗鬼。」

 龍造寺は内部で疑う。

 鍋島か、少弐か、日野か。

 空海が言う。

「戦わずして削る。」

 龍重。

「戦国は人が崩れると国が崩れる。」


 肥前国、龍造寺家佐嘉城。

 報告が入る。

「鍋島清房、出家。」

 隆信が眉を寄せる。

「何?」

 家臣。

「迂闊な巻き狩りの責任を取り……。」

 沈黙。

 隆信の顔が変わる。

「嵌められたか。」

 家臣が言う。

「日野。」

 その名が出た瞬間、評定が静まり返る。

 龍造寺家は気づき始めていた。

 日野は兵ではなく流れを作る国だということに。


 その頃、長崎では別の問題が起きていた。

 瞳が図面を見ている。

 青雲の設計図。長崎、長与、神浦。港町が線で繋がっている。

 瞳は言った。

「危ない。」

 青雲の棟梁が聞く。

「何がです。」

 瞳が指を置く。

「道。」

 長崎の町は谷にある。発展は街道沿い。

 つまり、一本の線。

 瞳が言う。

「ここが止まると。」

 棟梁。

「町が止まる。」

 瞳。

「そう。」

 しばらく沈黙。瞳はさらに図面を広げた。

 長崎、長与、神浦。そして周囲の村。

 瞳は言う。

「密集しすぎ。」

 棟梁。

「城ですか。」

 瞳は首を振る。

「違う。」

 少し間を置く。

「連合都市群。」

 棟梁が首を傾げる。

 瞳が説明する。

「町を一つにしない。」

 指が地図を動く。

「港、市場、倉、工房。」

 それぞれを別の町に置く。そして複数の街道で繋ぐ。

 瞳が言う。

「一つ落ちても。」

 棟梁。

「全部は落ちない。」

 瞳。

「そう。」

 これは物理的連合村落だった。

 龍重が来た。

「何じゃ。」

 瞳が図面を見せる。

 龍重はしばらく黙った。

 そして言う。

「城じゃな。」

 瞳。

「町。」

 龍重は笑った。

「町が城になる。」

 空海が言う。

「これは面白い。」

 瞳。

「敵が来ても。」

「町が散る。」

 龍重は窓から港を見る。

 長崎、長与、神浦。そして周囲の山。

 龍重が言った。

「日野の国は。」

「城を作らぬ。」

 空海。

「町を城にする。」

 龍重。

「そうじゃ。」

 海風が吹く。遠くで南蛮船が帆を張った。


 龍造寺は北で荒れている。

 長崎は南で広がる。

 そしてこの時、誰もまだ知らない。

 この構想が、後に九州最大の都市圏になることを。


 龍重は静かに言った。

「戦は近い。」

 空海が答える。

「ええ。」

 龍重。

「だが。」

 港の灯を見る。

「我らはもう城の中におる。」

 長崎連合都市群。

 その構想が静かに動き始めていた。


 肥前国、龍造寺家佐嘉城。

 評定の間は静まり返っていた。

 龍造寺隆信の前に文が積まれている。

 北肥前の報告。少弐領の混乱。鍋島の処罰。

 そして、長崎。

 隆信は文を叩いた。

「分からぬ。」

 家臣が顔を見合わせる。

「何がでございます。」

 隆信は言った。

「戦がない。」

 沈黙。

 隆信は続ける。

「城も落ちておらぬ。軍も出ておらぬ。だが市場が消えた。」

 家臣が答える。

「日野。」

 隆信。

「どうやってだ。」

 誰も答えられない。家臣の一人が言う。

「商人を呼びますか。」

 隆信が頷く。

 数日後、肥前の商人が呼ばれた。

 米商人、塩商人、油商人、数多の商家の大旦那たち。

 だが答えは同じだった。

「分かりませぬ。」

 隆信の眉が動く。

「なぜだ。」

 商人は困った顔をする。

「米はあります。」

「塩もあります。」

「ただ。」

 少し間を置く。

「流れが変わりました。」

 隆信は小さく呟いた。

「……人を動かしておる。」

 商人。

「長崎へ。」

 沈黙。

 隆信は机を叩いた。

「理由を聞いておる!」

 商人は震えた。

「……。」

 答えは出ない。

 商人は市場を読む。だがこれは市場ではない。

 制度だった。この戦に気づく可能性があるのは、博多・堺・京の大商人。

 だが肥前にはいない。

 隆信はしばらく黙った。

 そして言う。

「よい。」

 家臣が聞く。

「よろしいので?」

 隆信は笑った。

「分からぬ戦は。」

 少し間を置く。

「戦に非ず。」

 家臣。

「では。」

 隆信は言った。

「戦にする。」

 龍造寺家は旧来の方法を選んだ。

 兵、制圧、大軍。

 方向は決まっていた。

 日野ではない、少弐家。


 肥前北部、龍造寺の兵が動いた。

 少弐家の城が囲まれる。最初は小競り合いだった。小城、砦、小規模戦。

 しかし隆信は止まらなかった。

「潰せ。」

 少弐は古い名門。だが国力は弱い。

 城が落ちる。また一つ、また一つ。

 家臣が言う。

「殿。」

 隆信が見る。

「何だ。」

「無理があります。」

 理由は明確だった。

 大義がない。龍造寺の攻撃はただの侵略。

 そのため少弐の家臣団は散った。

 だが降伏ではない、逃げた。

 土豪が山へ消える、旧臣が城を捨てる。

 そして、少弐は滅んだ。

 だが問題はその後だった。


 少弐家家臣団は四散した。

 北肥前の土豪、国人、武士。

 だが奇妙な噂が流れた。

「日野へ行け。」

「米がある。」

「役がある。」

 日見峠から桜馬場、長崎、長与、神浦。

 そこでは役人が必要だった。

 村役、港役、土木役。

 制度国家、星奈の制度と明日香の選抜。

 そして人事合議。

 旧少弐家臣の一部はその制度に吸い込まれた。


 龍造寺城。

 隆信の前に報告が届く。

「旧少弐家臣団。」

「日野へ流れております。」

 隆信。

「何?」

 家臣が続ける。

「さらに。」

「鍋島清房。」

 隆信の目が細くなる。

 鍋島清房。

 先の戦で責任を取り家中から除籍された男。

 だが今、旧少弐家家臣団の中にいる。

 そして、日野へ導いている。

 隆信が言う。

「裏切りか。」

 家臣が言う。

「表向きは。」

 少し間を置く。

「糧のために日野の役人として出稼ぎとのこと。」

 沈黙。

 隆信は初めて気づいた。これは人を取る戦だった。龍造寺は城を取る。日野は人を取る。

 隆信が言った。

「何をしておる。」

 家臣。

「制度。」

 隆信。

「制度か。」

 家臣が説明する。

「役所、奉行、役人、人事。」

 龍造寺城が静まり返る。

 隆信は呟いた。

「国か。」

 家臣が答える。

「はい。」

 少し間を置く。

「日野は国を作っております。」

 隆信は窓を見る。

 平野、遥かに広がる筑後平野。

 そこでは兵が国を作る。

 だが、西の山と海では違うものが動いていた。

 隆信は言った。

「分からぬ。」

 家臣が聞く。

「何がです。」

 隆信は静かに答えた。

「兵ではない。」

 少し間を置く。

「仕組みだ。」

 沈黙。

 龍造寺家は初めて日野家の本当の姿を見た。

 それは城ではない、軍でもない。

 制度という怪物だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ