第15章 多すぎる新設
この文章は生成AIの力を借りながら、細々と進めています。ご了承ください。
春の終わり。
大村城が静まり、旗が降りてからまだ日が浅い。
戦は終わった。
だが、国は始まったばかりだった。
長与郷、日野龍重別邸。
机の上には文が山のように積まれている。
空海がそれを見て言った。
「戦の方が楽でしたな。」
龍重はため息をついた。
「戦は敵が見えるが、国は敵が見えぬ。」
空海は笑う。
「敵は役所にあり、ですな。」
龍重は文を一枚めくる。
「新設、新設、新設……。」
紙には同じ文字が並んでいる。
役所。役人。倉。港役。街道役。堤役。
国が広がると、役が増える。
そして役が増えると……混乱する。
最初の決定は軍事だった。
大村北部。旧大村領の中でも最も不安定な地域。
そこへ派遣されたのは永谷一典。
粗暴。野人……だが、地形を知る男。
龍重は言った。
「北部は叔父上に任せる。」
永谷は笑った。
「山は好きだ。」
そこに付けられたのが青雲の一隊、土木兵三十、測量十、兵二十。
峠を整え、砦を築く。
永谷は山を見て言った。
「この山は走れる。」
横にいた空海が聞く。
「走る?」
永谷は笑った。
「山は馬より速い。」
そこから話が始まった。
強襲山岳兵
空海と永谷、二人の話は長くなった。
「山を走る兵。」
「軽装。」
「槍短い。」
「弓か?」
「いや石。」
龍重が横で聞いていた。
「遊びですか?」
永谷が答える。
「んにゃ、違う。」
指で山をなぞる。
「山の軍。」
「強襲山岳兵。」
空海は静かに笑った。
「龍造寺が泣きますな。」
次の問題、有馬。
島原半島の隣国。
攻めれば勝てる。だが攻めない。
龍重は言う。
「封じる。」
空海。
「どう。」
龍重。
「港。」
桜岡が答える。
「商人を動かしましょう。」
本河内光輝が続ける。
「米も。」
有馬には売る。だが、少し遅く、少し高く、少し足りなく。
空海が笑った。
「息が詰まりますな。」
柚那の文が届いた。
龍造寺家中、揺れている。
鍋島清房、沈黙している。
龍重は言う。
「動かすな。」
空海が聞く。
「何もしない?」
龍重。
「何もしない。」
しばらくして続ける。
「だが話はする。」
つまり、中立から親日野へ。
鍋島はまだ動かない。
だが、動かないことがすでに意味を持つ。
長崎港南部、戸町。ここに巨大な計画が始まる。
倉庫群。米、塩、干魚、紙、椎茸……そして新たに味噌、醤油、味醂など調味料。
さらに盤は広がる。
桜岡が図を広げた。
「三十棟。」
光輝が言う。
「少ないかと。」
桜岡。
「では五十。」
龍重が聞く。
「運べるか。」
光輝が答える。
「運びます。道を整えましょう。」
理由は単純。商人の、そして日野家の心臓になる。
だが問題があった。長崎は水がない。谷の町。
人口が増えれば水が足りない。さらに急峻な地形のため水害も多い。
そこで青雲が呼ばれた。計画は大きい。
山地には堤、溜池、井戸。低地の僅かな平地には防衛網も兼ねた上水路。
瞳が青雲とともに描く図面。空海が覗き込む。
「城より難しい。」
青雲の棟梁が言う。
「城は敵が攻める。」
「水は毎日攻める。」
そして、最大の混乱の原因。
放浪癖のある叔父、奈良橋家継の帰還。
後ろには知らない人が三十人。
龍重が聞く。
「誰だ。」
奈良橋が言う。
「拾った。」
内訳。石工、船大工、鋳物師、薬師、測量師
空海が頭を抱えた。
「人材増加は嬉しいが、また仕事が増える。」
奈良橋は笑った。
「人は必要だわなぁ。」
長与郷、日野龍重別邸。
廊下にも、庭にも、蔵にも人人人。
誰もが言う。
「役が足りぬ。」
星奈は帳面を書き続ける。
明日香は人を見続ける。
空海は軍を考える。
光輝は銭を動かす。
龍重はただ一言。
「増えすぎじゃろ。」
空海が答えた。
「村に非ず、国興しですからな。」
龍重は窓を見る。
港、山、街道、人。
全てが動いている。
国は静かに広がっていた。
夜。長与郷、日野龍重別邸。
昼の喧騒はまだ消えていない。
廊下には文。庭には青雲の図面。蔵には商人。
勝ったはずの国が、なぜか騒がしい。
龍重は縁側に座り、海を見ていた。
その時、久々に声がした。
忙しそうだな。
龍重は小さく息を吐く。
「戦より忙しい。」
声は笑った。
当たり前だ。戦は壊すだけ、国は作るからな。
龍重は黙る。
少しして龍重が言う。
「何だ。」
一つ聞く。
「聞け。」
お前が死んだら、この国どうなる?
龍重は笑う。
「縁起でもない。」
笑い話じゃない。
沈黙。
龍重は答える。
「空海がいる。」
空海が死んだら?
龍重。
「星奈がいる。」
星奈が倒れたら?
龍重は黙る。
声は続けた。
明日香が暴走したら?
龍重の目が細くなる。
声は言った。
今の日野は人で動いてる。
指を折るように言葉が落ちる。
龍重、空海、星奈、明日香、光輝、地空、誰か一人抜けたら止まる。
龍重は言う。
「それが戦国だ。」
声は静かに言った。
違う。それは国じゃない。
龍重は海を見たまま聞いている。
健は続けた。
歴史で何度も見てる。天才が国を作る。そして天才が死ぬと国が滅ぶ。
龍重。
「例は。」
俺の知る歴史では、甲斐武田家。安芸毛利家。相模北条家。
龍重の指が止まる。
声は言う。
尾張の織田信長が途中で役所を作った。
沈黙。
人だけ回すな、制度で回せ。
龍重は呟く。
「制度。」
声は頷くように続ける。
役職、軍、政、財政、土木、市場。
龍重。
「作っている。」
声は言った。
違う、それは今の人間用だ。
龍重は少し眉を寄せた。
声が言う。
龍徳。
龍重の視線が止まる。
梨香。
龍重は黙った。
声は続ける。
龍徳でも回せるか?
沈黙。
梨香でも回せるか?
龍重は答えない。
声は言う。
天才の国は滅び、凡人の国は生き残る。
龍重。
「凡人、儂基準じゃな。」
そう、国は普通の人間が動かす。
静かな夜。
港の灯が揺れている。
声がもう一つ言った。
もう一つ。
龍重。
「何だ。」
善意だけで組織は回らない。
龍重は笑った。
「それは知っている。」
健。
いや、まだ知らない。
龍重は黙る。
声は言う。
必ず悪意が出る。横領、派閥、裏切り、利権。
龍重。
「もう出ている。」
声は言った。
だから制度がいる。
龍重。
「どうする。」
声は答えた。
悪意を忘れるな。
龍重。
「……?」
悪意を制度に閉じ込める。
龍重は少し考えた。
「明日香が言っていた監査か。」
そう、権限分散、二重確認、任期。
龍重は小さく笑う。
「役所の敵は役所。」
声も笑った。
そうだ、人でなく仕組みを信用しろ。
しばらく沈黙。
遠くで青雲が杭を打つ音がする。
龍重は言った。
「龍徳。」
うん。
「梨香。」
うん。
龍重は空を見た。
「二人でも回る国。」
声は言う。
それが国家だ。
まずは農政を知り尽くした星奈に相談してみな。明日香に気を付けな。
「それはどういう……。」
宿題だ。考えろ。
長与の夜、国は未完成だった。




