第13章 大義ある救援戦
この文章は生成AIの力を借りながら、細々と進めています。ご了承ください。
春先。大村領は青田刈りもままならぬ。
だが年貢だけは増えていた。
大村城、評定の間。家臣が報告する。
「兵糧庫、残り少なし。」
若い武将が歯噛みする。
「市場はどうだ。」
「商人が売りませぬ。」
「なぜだ。」
答えは皆わかっている。
西彼杵半島、長与、日野家。
市場はそちらに流れている。
老臣が言う。
「ならば市場を通さねばよい。」
当主が顔を上げる。
「村から直接取れ。」
短い言葉。それは決断だった。
大村領北部。村役人が膝をつく。
「これ以上は……」
代官が遮る。
「米。」
「もう出せませぬ。」
「では蓄えを出せ。」
村人がざわめく。
「出せば冬が越せぬ。」
沈黙。代官の背後で槍足軽が槍を鳴らす。
「出せ。」
村は従った。だが目は従っていない。その噂はすぐ広がった。
「大村が村から奪っている。」
「市場を通さぬ。」
「兵糧が足りぬのだ。」
それは弱さの証明だった。
長与郷、日野龍重別邸。
空海が報告する。
「始まりました。」
龍重は頷く。
「直接徴発。」
「はい。」
龍重は静かに言う。
「奴ら、急ぎすぎた。」
空海が問う。
「攻めますか。」
龍重は首を振る。
「攻めぬ。」
空海の目が細くなる。
「では。」
龍重は答えた。
「救う。」
その頃、肥前佐嘉、龍造寺家中の鍋島清房の屋敷。若い女が文を読んでいる。日野柚那、鍋島の猶子。
その後ろに龍造寺の家臣。
「日野信太龍重殿からです。」
柚那は微笑む。
「面白い。」
文の内容は簡潔だった。
『村を救え』
それだけ。
柚那に問う。
「龍造寺に利は。」
「あります。大村が弱れば、西の港が動く。」
「ならば。」
静かに言った。
「救援だ。」
日翔寺、本堂。
地空が文を書いている。筆は速い。
小僧が読む。
「飢える民を救え。兵ではなく米を送れ。寺門より請う。」
地空は笑う。
「これで良い。」
小僧が聞く。
「戦ですか。」
地空は首を振る。
「大義じゃ。」
数日後、北部街道。
荷車が続く。米。粟。塩。干魚。紙。
旗には日翔寺、そして龍造寺家及び鍋島家、さらに日野家の印。
奇妙な行列だった。兵は少ない。だが荷は多い。
村人が集まる。
「米だ。」
「塩だ。」
泣く者もいる。
長与郷斉藤浜。龍重は浜にて報告を受ける。
「救援隊、北部へ入りました。」
「大村は。」
「様子見。」
龍重は言う。
「当然じゃ。」
空海が問う。
「攻めてきますか。」
「来ぬ。」
龍重は続ける。
「来れば。」
空海が頷く。
「民の米を奪うことになる。」
大村城評定の間。報告が入る。
「救援物資。」
若い武将が叫ぶ。
「奪え!」
老臣が睨む。
「待て。」
「なぜだ!」
「民の米だ。」
沈黙。だが若い武将は止まらない。
「兵糧がいる!」
当主は黙っている。そして言った。
「取れ。」
北部街道にて荷車が止まる。大村兵が現れる。
村人が叫ぶ。
「救いの米だ!」
武将が言う。
「徴発する。」
怒号が上がる。
「それは日翔寺地空僧正様からの米だ!」
「龍造寺の米だ!」
「鍋島の米だ!」
「日野の米だ!」
だが兵は止まらない。
袋が裂かれる。米がこぼれる。
その光景を、商人が見ていた。
僧が見ていた。村人が見ていた。
そして噂は走った。
数日後の大村領市場。
「大村家は救援を奪った。」
「寺の米を。」
「民の米を。」
噂は膨らむ。怒りは広がる。
長与郷、日野龍重別邸。
龍重の前に報告が届く。
空海が笑う。
「やりましたな。」
龍重は首を振る。
「絵にかいた自滅じゃわ。」
沈黙。そして龍重が言う。
「次じゃ。」
空海が問う。
「攻めますか。」
龍重はゆっくり言った。
「救う。何度でも。」
空海は目を細める。
「二度目は。」
龍重は静かに答えた。
「奪わせぬ。」
日翔寺の本堂、地空が笑う。
「見事じゃ。」
小僧が聞く。
「誰が。」
地空は杯を傾ける。
「欲じゃ。」
大村城評定の間。当主は独り座す。
机の上に報告。村の不満。市場の怒り。商人の離反。そして一行。
「民の米を徴発」
拳が震える。だが戻れない。焦りは止まらない。
長与の浜。龍重は海を見る。
南蛮船が遠くに見える。
空海が言う。
「龍造寺は満足しております。」
「有馬も動きません。」
龍重は頷く。
「よし。」
そして言う。
「囲いは。」
空海が続ける。
「続く。」
龍重は首を振った。
「違う。」
空海が見る。
龍重は言った。
「崩れ始めた。」
古来より、国家の滅びは外敵によるものよりも、内部崩壊によるものが多い。
兵に破れるより先に、民心が離れ、市場が壊れ、秩序が崩れる。
大村は、まさにその古い故事を再現する存在となりつつあった。
村からの直接徴発、救援物資の奪取、相場の混乱、逃散。
城はまだ立っている。兵もまだいる。だが、城を支えるものは兵だけではない。
民と銭と信である。それが、今、崩れ始めていた。
西彼杵半島、長与郷、日野龍重の屋敷。
空海が文を差し出す。
「大村北部、村落の離反が始まっております。」
龍重は黙って読む。
「救援米を奪われた村も、離れ始めたようです。」
龍重は文を閉じた。
「頃合いじゃ。」
空海が問う。
「挙兵ですか。」
龍重は頷いた。
「大義は揃った。」
日翔寺、本堂。
地空の前に龍重が座る。
「僧正。」
地空は笑う。
「いよいよか。」
龍重は言う。
「左様。文を。」
地空は筆を取った。書かれた文は短い。
『飢える民を救う者に、仏は門を閉ざさぬ。
日野は、民を救うために動いた。』
地空は笑う。
「これで十分じゃ。」
大義は整った。
数日後、西彼杵半島の浜。
船が並ぶ。日野家の船、漁船、塩船、商船。百を超える船団。
龍朋が先頭に立つ。
「海は任せろ。」
龍重が頷く。
「お任せ申す。」
龍朋の役目はいつも通り。守る者、海を抑える者。
船団は大村湾へ向かう。
大村湾、大村家の斥候が叫ぶ。
「船団!」
城内がざわめく。
「日野の旗!」
城の者が海を見る。無数の船。そして旗。
日野。日翔寺。そして西彼杵半島の商人たち。
戦船だけではない。塩船、商船。
異様な光景だった。
同時刻、大村城北部。
霧の中、兵が上陸する。日野の旗。そして村兵、
数千。
だが彼らは進まない。立ち止まる。
龍重が指示する。
「ここだ。」
青雲が動く。竹が立つ。板が組まれる。縄が張られる。土が積まれる。
半刻、砦が立つ。
さらにもう一つ、さらにもう一つ……合計五つ。
組み立て式速成砦、日野が峠で磨いた野戦築城に健の朧げな墨俣一夜城の知識が融合した技術。
青雲の若者が言う。
「完成。」
龍重が頷く。
砦は互いに視界を持つ。道を押さえる。水を押さえる。市場への道を押さえる。完全な包囲ではない。だが、流れは止まる。
同時に、使者が村へ走る。
触れが出された。
日野に従う村落、都市は二年免税。
さらに。
飢える民には米を与える。
添え状もある。日翔寺住持北天翔院地空僧正の印。
村人がざわめく。
「免税……?」
「二年……?」
それは大きい。村の命を救う。
さらに別の行列。旗が立つ。
本河内、桜岡の商家の旗。そして、日野家武将、永谷の旗印。
大量の荷車。米、塩、干魚、紙。
商人が声を上げる。
「救援物資!」
村人が集まる。泣く者もいる。
この光景はすぐ広がった。
「日野は米を出している。」
「税も取らぬ。」
「寺も付いている。」
「商人もいる。」
噂は川のように流れる。
大村城評定の間。報告が続く。
「北側、砦五。」
「船団、湾を封鎖。」
「村落、離反の兆し。」
沈黙。若い武将が叫ぶ。
「出撃すべきです!」
老臣が言う。
「金も兵糧もない。」
また沈黙。
城の外では、市場が止まり、村が揺れる。
兵が憔悴する。城はまだ落ちていない。
だが、城は孤立し始めていた。
長与郷。日野龍重別邸、奥座敷。
龍重は地図を見る。
空海が言う。
「囲いは完成しました。」
龍重は首を振る。
「まだじゃ。」
「城は落ちておらぬ。」
空海が問う。
「攻めますか。」
龍重は静かに言った。
「攻めぬ。」
「削る。」
日翔寺。
地空が杯を傾ける。
小僧が聞く。
「戦ですか。」
地空は笑う。
「違う。」
杯を置く。
「終わりの始まりじゃ。」
大村城、夜。
当主は城壁に立つ。
湾を見ると船団。
北部遠くに砦。
動く商人の灯。
そして、静かな城。
籠城はまだ宣言されていない。だが、城は、すでに囲われていた。




