02 ■■は女の子だけの特別
みんなクルミのことを可愛いって言ってくれるの。
小学校に入学してからは、クラスの女の子たちはクルミのことを褒めてくれる。
「クルミちゃんのお洋服かわいい」「クルミちゃん遊ぼう」「わたしがクルミちゃんと遊ぶんだよ」「クルミちゃんっ!」
当然だよね。
クルミは可愛いもん。
「クルミ、宿題やったの?」
例外はリンナ。
リンナは変わらずクルミのことを見下ろしてるの。まぁリンナの取り柄なんてクルミよりも背が高いことぐらい。
「クルミ、まだ逆上がりできないの? 簡単でしょう」
可愛い女の子には運動なんて必要ないの。もういつもリンナは煩い。
「そんな顔しないでよ。勉強しないで後で泣きを見るのはクルミだからね」
リンナには感謝が足りないと思うの。
だってクルミが幼馴染なんだよ。それってすごい幸せなことじゃないのかな。
「うるさいの! クルミが泣くことなんてないの」
「はぁ」
けど今はリンナの小言を聞いている場合じゃないの。
クルミは今忙しいの。
「忙しいって、漫画読んでるだけじゃない。しかもそれ私のだし」
「リンナのものはクルミのものでしょ」
「はぁ」
煩いリンナは無視して漫画に戻る。
リンナのって言っているけれど、それは間違いよ。これはリンナの小母様の漫画だもん。小母様は少女漫画の愛好家なのだそうだ。だからリンナの家にはびっくりするくらい大量の少女漫画があるの。
だからクルミは小学校が終わったら、リンナのお家で少女漫画を読むのが日課なの。
パパやママはクルミの我儘はなんでも聞いてくれるけれど、お小遣いに関しては厳しいの。読んでも読んでも読み切れないほど、たくさんの漫画があるここは楽園。
読んでいると、小母様がおやつとジュースもくれるの。
「リンちゃんは少女漫画よりも少年漫画の方が好きだから、クルミちゃんが少女漫画好きでおばさんも嬉しいの」
「うん。すっごくドキドキして大好きなの」
「そうよねぇ」
小母様は目をキラキラさせながら少女漫画について語る。
正直、言っていることはまったくわからないけれど、とっても好きなことは伝わったし、大人なのにそんな風に子供みたいな小母様が大好きなの。
「いい、クルミちゃん。リンちゃん」
まるで秘密を告げるように小母様は小声で教えてくれたの。
「■■は女の子だけの特権なのよ。愛だの、好きだのは大人や男だって持ってる。だけど、■■だけは女の子だけの特別」
「すっごい。クルミも特別持ってるの?」
「うーん。クルミちゃんとリンちゃんもまだまだ子供だからどうかしらね」
「えぇー。クルミもう子供じゃないよっ!」
「この間も泣いてたじゃん」
「リンナは煩いの」
「それに給食のピーマンだって私が食べてあげてるじゃん」
「むぅうう」
クルミとリンナの言い争いを小母様は笑いながら見守って、おやつのケーキを出してくれたの。
「苺はクルミがもらうから、チョコはリンナね」
「はぁ、わかってるよ」
「ふふっ、まだまだ■■よりも食よね」
◇◇◇
小母様が言っていた■■。
クルミはもうその言葉を失ってしまったの。
どんな気持ちなのかわからないの。
きっともう■■は届かないどこかに。
読んでいただきありがとうございます!




