40 秋山リリの令和2年次鋒戦 04
短いです。
驚いたわ!
防具をつけていても感じる痛み。
確かに岩本の胴打ちは空振りに終わった。そして私の面打ちが入った、と思った。
本当にすごかった。
岩本は空振りに終わった瞬間、その勢いのまま回転したのよ。音すらも置き去りにする速さ。魔術も何も使わないでそんなことができるのね。
だけど、ね。
「……まだ負けてない」
悔しさはあるわ。
なのに嬉しいのよ。
『これが生きているってことなのかもしれないわね』
小さく呟く。
構え合った竹刀を岩本の喉元へ向ける。私の中心線はブレることなく、まっすぐと伸びる。
強さへのあこがれを失ったことはない。
やっぱり自由が好き。
以前は不自由から逃れようとしても不自由が私の心体を拘束しようと、その手を伸ばしてきたわ。
今は違うのかって?
そうね。
死んで世界は変わった。
いいえ、世界じゃない私が変わったのね。
アリストリア王国。
日本。
きっとこの先、私がこの岩本よりも、そしてお父様よりも強くなっても、世界中の誰よりも強くなったって世界は変わらないわ。
悔しくないのかって? 自由に生きたくないのかって?
そうよね。
我儘な私はそんなの我慢ならなかった。
世界は変わらないけれど、自分が変わることはできたのよ。
そうしたら、私を縛り付けようとする不自由は初めからなかったことに気づいたの。
変わっても変わらないものだってある。
だって『我がまま』に私は生きるんだもの。
『もう一度、今度は私の番よ』
一本取られたから何よ。
脇腹の痛みはもう感じない。
勝負はまだ始まったばかりなんだもの。
読んでいただきありがとうございます。次鋒編も予定なら後二話で終わります。引き続き読んでいただけると嬉しいです。




