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令和2年全国高校総体剣道女子団体決勝戦【中堅編開始】  作者: 目黒市
次鋒編

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21 元悪逆令嬢、翔ぶ

 風の魔術。

 もっとも魔素の消費が少なく、起動も簡単な魔術ね。

 前世の私が最も得意としていた魔術でもあるわ。

 というか魔術が少し、いえ、大変に苦手だったから得意というよりもこれぐらいしかまともに使えなかった。


 けれど他の火、水、土などの主要な魔術は魔術を起動するまでに時間がかかるし集中力も必要。剣を用いた白兵戦ではあまり使用されない。どちらかというと後方支援用の魔術なのよね。だから私も学ぶことにそこまで熱心ではなかったの。本当よっ! 決してエドワードのいうところの脳筋というわけではないの。


 風の魔術は主要魔術の中でも白兵戦に向いている。

 まず起動が早いこと。もちろん風自体を刃のように飛ばすとか、さらには竜巻を起こすなんて魔術は他の魔術同様に起動までの時間はかなりかかる。だけど、風の初級魔術は魔素の取り込みとほぼ同時に発動できるほど早い。


 今世との相性もいい。

 今世では魔術の起動に必要な魔素量がそもそも少ない。そうなると魔素量が少なくて済む風魔術は相性がいい。

 それにこの世界に魔術は存在していない。突然火や水を魔術で出したら流石に試合どころではなくなってしまうわ。


 


『風よ! 風よ!』


 今日は夏の大会出場メンバーを決める部内試合の日。

 初戦だった市民大会からもうひと月経った。

 日々の練習の中で、私は魔術を織り交ぜた剣術に磨きをかけ続けた。


「相変わらず可愛い気合だよねリリちゃん。だけど実力は可愛くないくらいついちゃって。でもセンパイとしてまだ負けられないのよね」


 部員全員の総当たり試合。

 上位四名が中学総体の市大会予選の出場者になり、上位五名が団体戦の出場メンバー。

 そもそも団体戦は補欠二名を加えた七名が登録されるので、私たちは試合結果関係なく部員全員一応団体戦出場メンバーになるのよね。


 一試合目の相手は二年生のユナセンパイ。

 部内では吉川部長、コシちゃんセンパイに次ぐ実力者。この夏の大会後の部長に決まっている人。

 剣道は私と同じく中学から始めたらしいけれど、運動神経だけはいいの、とよく仰っていた通り体力や反射神経もいい。上級生の先輩たちのように技や読み合い、というよりも遠間からどんどん飛び込んだり、手数で試合の主導権を握るタイプ。

 勢いがあって格上相手でも自分のペースに持ち込めれば強い。けれど悪い点もそのまま勢い任せというところ。粗が目立つし、相手が待ち構えているのが見え見えでも飛び込んで出鼻を打たれてしまうことも多い。


『魔術発動っ!』


 初級の風魔術を起動させる。

 今世では異常な暑さが猛威を振るう夏場に、エアコンの冷風を迅速に循環させるために使用していた魔術。そよ風レベルの強さの空気を自在に操る魔術。

 魔術を剣道で活用する、と決めた日からずっとこの風魔術の利用方法を考えてきたわ。

 

 飛び込みの時に追い風のように背中から相手へ向かって風を吹かせたりもした。

 けれど明確な効果が出るとは言えなかったの。

 

 そしたらたまたま見ていた動画にヒントがあった。


 自分の背後に風を集める。

 その風をさらに発動させた風で覆う。

 ここからが多少は難しい工程。

 覆った風を圧縮していく。 

 破裂しそうになる空気を必死に抑え込む。しかし前世と生まれ変わってから、合わせて二十年以上の経験で素早く、スムーズに行う。

スムーズに行う。

 ごめんなさい。ウソはよくないわよね。

 できるようになったのは先週ぐらいから。

 

 背中全体を包むように流れていた風が今や拳ひとつ分の大きさまで圧縮される。


「こないのならこちらから……」


 お互い剣先も触れ合わない、遠間の間合い。

 攻めっ気の強いユナセンパイが間合いを詰めようと動き出す。

 今っ!


 背中で圧縮された空気を包む風の魔術を解除する。

 圧縮されていた空気が、一気に吹き出す。

 その力は私の身体を勢いよく吹き飛ばす。


「う、うそっ!」


 普通ならば絶対に届かないような間合い。

 そこへ、予備動作なく飛び込む。

 突然、飛び込んできた私にユナセンパイは完全に虚を突かれて目を丸くする。

 

「面あり!」


 審判をしている吉川部長の旗があがる。


「リリちゃん、やっぱり強くなりすぎじゃないかなぁ〜」


 私は竹刀から伝わる一本の感触。その余韻を味わう。

 しっかりと通用する。

 私の欠点を補って、この時代の剣士たちと渡り合う武器になる。


 そう、私の魔術剣道!


「……もう一本!」


 再び剣を構える。

 試合は始まったばかりよ。

 

 

 次回更新は来週予定です。

 読んでいただきありがとうございます。

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