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令和2年全国高校総体剣道女子団体決勝戦【中堅編開始】  作者: 目黒市
次鋒編

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12 元悪逆令嬢は転生した

 永遠にも思える時間を。

 いや、一瞬だったのかもしれない。

 

 暗闇の中に小さな光が見える。

 私は無意識にその光へ手を伸ばし。


 そして光が私を包み込んだ。


◇◇


「……秋山リリ。よろしく」


 お父様に斬られた記憶を最期に私の意識は終わったわ。

 次に目を覚ますと私は新たな生を受けていたんだからびっくり。

 それからこの世界の時間で十三年。

 私はこの日本という異世界で秋山リリという名前を与えられて二度目の人生を歩んでいた。


「ねぇねぇ、秋山さんは何の部活に入るか決めているの?」

「その髪染めてる? ってか秋山さんってハーフなの? お人形さんみたいでかわいい」

「どこ小? 私は南第二小だよ」


 ワコが語っていた世界によく似ているが、もしかしたらワコのいた世界だったりするのかしら。

 そう思うとリリィ・バーンズであった私と、今の秋山リリとしての私に繋がりを感じて気がして寂しさと嬉しさがこみ上げる。


「よかったら私たちと体験入部いかない? 女バスなんだけどさ」

「バスケクラブの時の先輩たちがいるから、上下関係も厳しくないよ」

「そうそう初心者も多いらしいの。だから秋山さんが初心者でも問題ないよ」


 ひとつ問題があるの。

 本当に深刻な問題。

 この世界に魔素がないとか。魔術がないとか。騎士制度がすでに廃れているとか。

 そんな悉くはくだらないことよ。

 深刻な問題。

 それは。


「……剣道部」

「えぇ⁈ 剣道部に入るの?」

「あそこ先生も厳しいって有名だよ。もしかして経験者なの?」

「……」

「秋山さんって無口系なのぉ?」


 難しいのよっ‼

 それはこの国の言語である日本語がかなり難しい、ということ。

 前世の記憶が生まれた瞬間から私にはあるわ。

 つまり赤ん坊のころから私は前世での言語を使用している。この日本語は私にとって第二言語となるの。

 文法や単語もまったく違う。

 自慢するわけではないけれど、前世の頃から勉強は得意でない。

 勉強するぐらいなら身体を動かしていたい。


「今年の入部希望者は一人、か」

「……」


 顧問を務めている教師が私の持ってきた入部届を受け取ると、困ったように頭を掻く。


 けれど対照的に私は歓喜に震えていた。

 剣道の存在はもちろん早くから知っていたわ。しかし両親は私にそれを許さない。明確には母親である秋山クロエ。今世の母は私に自身と同じ芸術の世界に進んでほしかったらしい。

 

 幼少時からの英才教育が施されたのはいいが、中身はリリィ・バーンズ。自慢ではないが美術的センスは昔からないの。

 だから私自身は自分に変な期待はしないで済んだのは救いね。

 けれど母には生んでもらった恩がある。なので無下にするわけにもいかず、向上心もなければ磨くべき原石もないむなしい絵画の道を幼少期は進むことになった。


 そして明日こそは、来週こそは、来月こそは、来年こそは自分の娘に自身と同じ才能の芽が生えると信じていた母もついに中学入学を機に諦めがついたらしい。

 才能がないのは自分が一番理解していたし、期待もしていなかったけれど、改めて好きにしていい、と言われれるのは少しばかりショック。


 けれど、前世から変わらず絵画の才能がなかったおかげで再び剣を握る許可がようやくでたの!


「ええっと、秋山くんだよね。剣道経験はあるのかな?」

「……ない、です」

「あぁ、そうか。もちろん初心者も大歓迎だよ。防具は学校のものがあるからね。今は授業で剣道はやらないけれど、昔は授業で剣道があってね。少し古いけれど残っているんだよね。竹刀だけは購入してもらうけれど安いのだったら千円くらいかな」

「……はい」

「……」

「……」

「……宮島ぁ。新入部員の面倒をみてやれ」


 顧問が武道場に併設された部室へ声をかけると中から道着姿の生徒がでてきた。


「うわっ、新入生だっ! やったぁ私も先輩だよ」

「宮島。彼女は初心者らしいから竹刀貸して素振りと打ち込みやらしてあげて」

「了解でーす」

「よろしくね。私は宮島アカリ。宮島先輩とか呼んでね。ええっと」

「秋山、リリ、です」

「うん、リリちゃんね。体操服は持ってきているよね。部室に案内するからそこで着替えよう」


 こくり、と頷いて宮島の後ろについていく。

 

 そうして私、リリィ・バーンズ改め秋山リリの新しい人生は始まったのよ。


 さぁ、異世界の剣術よ。私に見せてくれるかしら⁉

 

 せっかくの第二の人生。

 再び私は剣を手に取る。


 

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