先鋒 エピローグ
先鋒戦ラストです。ここまで読んでいただきありがとうございます。
「勝負ありっ!」
主審が試合終了を宣告する。
少女たちは竹刀を納める。
会場はざわめている。
「……任せて」
いつも言葉少ない少女は、戦い終えた春風に力強くうなずき試合場へと向かう。
次鋒である少女を見送り、選手席へと戻る。
「春風」
「……ニナさん」
面を外した春風の顔は火照って赤くなっている。
工藤にいつもの傍若無人な雰囲気はなく、心配そうに声をかけてきた。なぜだかそんな工藤の様子が珍しくてにへらっと春風は笑う。
「馬鹿風。なんだよその腑抜けた顔」
いつもの罵倒にも力がない。少し泣きそうな声。
「……勝ちましたよ」
「あぁ、お前はやっぱり天才だよ春風」
「ニナさんの声が聞こえたんです。もうやりきったと思ってもその声が勝てって私を励ましてくれたんです」
「――――――」
工藤が何かを口にした。
しかし春風はその言葉を聞いていなかった。
工藤の感情がとても綺麗だ、と思えたからだった。
いつも変わらず、変わらないその感情の形。自分に向けられていたその感情がなぜだかとても美しくて見惚れてしまったのだ。
まだ春風にその感情の意味はわからない。けれどそれはとてもとても大切なものに思えた。
「おい、聞いてんのか?」
「あっ、えっと、ごめんなさい、ニナさん。まだ耳鳴りがしてよく聞こえなかったんですけど」
春風は赤く腫れあがった右耳を見せて誤魔化した。
そんな春風を見て、溜息をついてから工藤はその頭を叩き笑った。
「勝ったからって調子乗るなよって言ったんだよ。馬鹿風」
「いたぁい、絶対違いましたよっ」
そんな工藤と春風に苦笑しながら試合の準備をしていた松笛が口をはさむ。
「ほら2人ともいちゃいちゃしてないで、リリちゃんの応援しようね」
「誰がいちゃいちゃだ。松笛」
「そうだよ、リンナさん」
令和2年全国高校総体剣道女子団体決勝戦。
百葉創英高校対六道学園。
先鋒戦。
林道ユウカ対春風ヨウコ。
勝者春風ヨウコ。
そして戦いは次鋒戦に続く。
次鋒戦。
岩本エミ対秋山リリ。
果たして結果は。
読んでいただきありがとうございました。評価、ブックマークしていただけると嬉しいです。次鋒戦編は明日、明後日あたりから投稿していきます。引き続き読んでいただけたら嬉しいです。




