24 令和2年先鋒戦
令和2年。
山奥から始まった物語は県の体育館へと移る。
感染症は世界的流行を見せず徹底した水際阻止は成功に終わった。
東京オリンピックも予定通りに開催。そのためインターハイの開催場所は関東以外の各県に振り分けられた。
高校総体剣道女子団体。
前年度優勝、さらに個人優勝者まで擁した私立六道学園が順調に決勝戦まで危なげない戦いをみせた。
そして対するは私立百葉創英高校。
創部3年目。さらに公式戦の出場自体が初というダークホースが連覇を阻むべく相対した。
しかし百葉創英高校が完全にダークホースだったかというとそうでもない。
主将としてチームを引っ張るのは全中で個人2位だった工藤ニナ。
さらにそれ以外の選手も全国レベルではなかったもの、地区レベルでは有力と言われていた選手たち。
そして消えた天才と言われた春風ヨウコまでもが加わっているのだ。
一部の選手や情報通の間では毎年注目校としてあげられてはいたのだ。だが、主将である工藤の方針で公式戦の出場は3年目の今年が初めてであり、やはり指導者もいない学校では部として成立しなかったのではないか、とささやかれていた。
けれど、満を持して出場した3年目。
圧倒的、とまでは言えないものの順調に地区大会、県大会と勝ち抜いて全国出場を勝ち取った。
特筆すべきは天才春風だ。
5年前の最後の公式戦で敗北した天才。
誰もが天才だったのは過去のこと。今ではただの人、と侮っていた。
けれど天才。されど天才。春風は無敗。春風は全勝。
天才と言われた才能は何一つ陰りを見せることなく決勝の舞台まで突き進んだ。
そんな百葉創英高校ならびに春風ヨウコを迎え撃つのは王者六道学園。
さらに六道学園には唯一春風に土をつけた林道ユウカが所属している。
まるで運命に導かれるように春風と林道は日本一を決める舞台で再び巡り合う。
それは運命なのか。
それを必然と思う者もいるのかもしれない。
人類の進化としての春風の『超共感覚』。
地球に生きる生物の根源としての林道の『野生』。
双方が衝突するのは必然。
文明が自然を破壊し侵略するように。
自然が文明を凌駕し蹂躙するように。
長い歴史が、偉大なる叡智が、悠久なる時が、2人の少女の間には流れる。
今、全国高校総体剣道女子団体決勝戦、先鋒戦が始まろうとしている。
赤、六道学園3年生林道ユウカ。
白、百葉創英高校3年生春風ヨウコ。
一礼。
試合場に足を踏み入れる。
その瞬間、どんな言葉も意味をなくす。
ただ剣を携えた2人の少女が向かい合うだけとなる。
竹刀を抜き去り。
剣先は触れるか触れないかの距離。
試合場は静寂に包まれる。
静寂が高い県営の体育館の天井まで張り詰める。
緊張と、期待。
その両方が極限まで振り切れる数秒の沈黙。
「はじめっ‼」
審判の試合開始の宣告が響き渡った。
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