01 林道ユウカについて興梠の証言
誤字も多いと思います。小説と呼ぶには未熟ではありますが読んでいただければ幸いです。
平成25年身元不明の少女が地元警察によって発見、保護された。
彼女が発見されたのは、K県とM県の県境にあるT山。
標高1700メートルほどの山。
発見したのは地元の消防団だった。登山に来ていた大学生3名の遭難事故。その捜索の最中、普段は人も立ち入ることのない登山道から大きく外れた渓谷の底に1人の少女を発見。
保護された後の病院で測定された資料によると、身長130センチ。体重は30キロ。当時12歳であったことを考えると平均よりも小柄である。
少女の発見については当時地方新聞の片隅に小さく載っただけであった。
「あれは人間ではなか」
捜索に参加していた消防団員である興梠氏は発見時のことを思い返して眉をしかめた。
遭難した大学生は県外の人間で、夏季休暇を利用して旅行に来ていた。
登山経験は何度かあったらしく、充分な装備も準備していた。しかし不運とはつきもので、些細な油断とその結果による事故。
地元の消防団、警察、猟友会など様々な人々が捜索を始めた。
登山道から大きく外れた渓谷の下で3人は身を寄せ合いうずくまっているところを発見された。
そこで捜索は打ち切られる筈であったが、彼らは女の子がいた、と口を揃えて訴え出たのである。
極限状況における幻覚かと思われたが、3人が揃って詳細に少女のことを語るのを聞いて、再度捜索隊が再編されることとなる。
そうして発見したのはその大学生たちを見つけた渓谷をさらに山奥へと進んだところだった。
滅多に人も踏み入れないそんな山深くに少女は立っていた。
汚れて真っ黒な顔。ボサボサに伸び放題の髪。そんな中、鋭い光を放った双眸が捜索隊の面々を真っ直ぐに捉えていた。
興梠氏は最初、少女の姿を目にした瞬間駆け出そうとした。
それは周囲の同僚たちも同じだったはずだ、と回顧する。
しかし誰1人としてその1歩目を踏み出せなかった。
「お、おい!」
なんと同行していた猟友会の中には猟銃を構えようとするものまでいた。
そんな人を制しつつもそれは仕方がない、と内心で同情した。
目の前に立つ、自分の娘よりも小柄な女の子。だというのに、自分たちは死を感じているのだ。
殺される、という感情。
ここにいるものは少なからず生死と隣り合わせにする仕事や、現場を体験している者たちだ。
だからだろう、明確にそういった場で感じる火事場の空気感をその少女から感じたのだ。
獣。
少女の皮を被った獣がいたのだ。
「都会の人にはわからんかもしれんが、人間なんて弱い生き物よ。簡単に死んじまう。道具がなければなんもできんて。昔、熊と出くわしたことがあったが、やはり人とはちがう。生物的に圧倒されるんよ」
興梠氏は目の前の少女は人ではない何かだったと、遠くをみるようにつぶやいた。
その後、しばらくの睨み合いが続いたが少女を無事に保護して下山。
近くの病院へと輸送された。
大まかな設定のみなので、後から変更等も多いと思います。読んでいただきありがとうございます。