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✜43 曲者だらけ


「あいたたたっ……本当は繭でサナギにするのじゃ」


 そうなんだ。


 ピコンを繭の中へ包むとピコンがサナギになって、羽化したらドラゴン等に変身できるようになるそうだ。ただ時間がどれくらいかかるかはわからない、と顔面をミシミシ言わせている自分の手をタップアウトしながら話す。


 そういえば、繭って蛾の仲間である蚕が糸を出して繭を作るのは有名だけど、ハチとか蟻の一部も繭を作るんだったっけ?


 まあ、ピコンがサナギになって羽化するまでが、どれくらいかかるかが読めないので、先に済ましておいたほうが良さそう。


「アラタ様」

「今回はひとりで行ってくるよ」


 シュリが心配そうに自分を見ているので答えた。シュリとヤコは現在、ダンジョン島改造組合の中で縮尺不明なまま製作した仮の地図をベースに情景模型……ジオラマをメインスタッフとして作ってもらっている。製作作業から自分が抜けてふたりまで抜けてしまうと他のスタッフへ指示する人間がいなくなってしまうので、そのまま作業を続けてもらう。どうせ行きはガーゴイルに運んでもらって、帰りは空間干渉ですぐに帰って来られるので、そう時間はかからないと踏んでいる。


「それでは参るのじゃ」


 やっぱそうなるよな……。


 サクラ達が見つけたという蟻の巣がどこにあるのか、知らないので道案内を頼む必要がある。


「おい、変態淫婦!」

「なんじゃ? ロクに手も出せぬ意気地なし」


 黙々と模型を作っていたヤコが手を止め、サクラを睨む。


「アタイはシュリが先だから順番を待っているだけだ」

「あわわわ///」


 また始まった……。仲良くなったんじゃなかったの? ヤコが言い返すと、シュリの顔が真っ赤になる。


「とにかくアラタに手を出すなよ?」

「舌は出すがの、あいたたたたっ……残念、しばらく無理なようじゃ」


 まったく、誰が舐めさせるか、舐められたら身体の芯からゾクゾクするから本当にやめて欲しい。ん、なぜゾクゾクするんだ……。


「大丈夫、プルポがついているにゅ、モグモグ」

「リルネも駆けっこ頑張るラピ!」


 サクラのうしろにいるふたりも行くの? ひとりは先ほどからずっと何か食べてるし、もうひとりは落ち着きがなく、ずっとピョンピョンと飛び跳ねている。


「妾が空から案内してやる、ついてくるのじゃ」

「ふたりは?」

「各々で勝手についてくるので心配無用じゃ」


 おお、空を飛べるの? そういえば最初にユールン湖で会った時、湖面に浮いていたっけ。


 ふわりと浮いたサクラを追いかけるべく、ガーゴイルを2体生成して、抱えてもらう。


 まあリルネの方は俊足自慢だから、なんとなくわかるけど、プルポってタコなんでしょ? どうやって追いかけてくるつもりだろう?


 リルネは土埃を巻き上げて、森の中へ消えていったが、プルポはこちらを見上げて馬鹿デカい骨付き肉を食べている。美味しそう……でも、どっからあの肉を出しているんだ。さっき別のものを食べてなかったっけ?


 約15分ほど飛行したあと、目的地へ到着した。地面に大きな亀裂が入っていて、底を覗いても太陽の光が届いておらず、真っ暗で何もみえない。落ちたらひとたまりもない危険な場所。そのそばにリルネとプルポが先に着いていて、こちらを見上げて手を振っている。


「プルポってどうやって移動してるの?」

「鎖骨のところ3舐めで教え……嘘じゃ」


 腰に提げているUR武器、金剛杵(ヴァジュラ)を無言で手にした自分へ向けて、サクラはあわてて発言を訂正した。


「あれは、墨で空間を歪めておるのじゃ」


 テンペラリンクという能力で、地面や壁に墨を吹き付けると、墨がかかった部分が今いる空間と別空間を結ぶ扉となる能力だそうだ。ちなみに自分の空間干渉は移動系でいえば、目に見える場所への有視界移動とジャンプ先をあらかじめ決めておく設置式移動があるので、自分とはまた違った空間へのアプローチ方法となっている。


「ここじゃ」


 亀裂を数十メートル降りると、横穴があった。横穴は下り坂になっていて、どんどん下っていく。5分ほど進むと少し広めの空洞へ出た。


 サクラが指差したのは、空洞の天井に当たる部分に空いた穴……ここが巣穴の入口らしい。たしかにこれは誰も気が付かないはずだ。


 天井の穴へ上がると、真横に道が伸びていて、ひたすら進む。高さが1メートル50センチ、幅が1メートルもないくらいなので、かなり屈んで進まなければならないので結構苦労した。


 感覚的には数十分ほど歩いたところで分かれ道が無数にあった。


 分かれ道のどちらかを選択しても、しばらく進むと、また分かれ道が現れる。10回以上分かれ道を選んできたので、正直、今どこにいるのか分からなくなっている。


 こんな時にゴーレムやガーゴイルを大量に出して、数に物を言わせて攻略したくなるが、いかんせん通路の高さと幅が低くて狭いので、どちらも生成ができない。


「ギギィ!」


 ようやく遭遇したか。一番前を歩いている自分が、大型ナイフを持って兵隊蟻と会敵した。


「うしろも回り込んでくるかもしれないから注意してって、あれ……リルネは?」

「どこかへ遊びに行ったようじゃの」

「お腹いっぱいで眠くなったにゅ」


 こ、コイツら……。ウサギは姿が見えず、タコはすやすやと地べたで眠り始めた。変態サキュバスだけ起きているが、タコの頭の上で正座して、お茶をすすっている。


 ──曲者だらけで泣きそう。




【ファンタジー小噺42】

ゲームなのか異世界なのどっちなんだい? のお話


リョータ

:もうレベルが78。そろそろ魔王に挑もうか?

アカリ

:レベル? レベル……ね

リ:あっ、しまった……

ア:レベルってなんなの?

リ:それは……経験したものが数値化されたものじゃない?

ア:熟練度ってヤツ?

リ:そうそう

ア:力とか素早さは百歩譲っても運ってなんで上がるの?

リ:それは……努力したから?

ア:人間努力したら、みんな運がよくなるの?

リ:ま、まあ、システムだからこの辺は……

ア:システム? ここってゲームの世界なの?

リ:ぷしゅー

ア:ダメだこりゃ!


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