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37/48

✜37 空間干渉


 うーん、あれはなんだろう?


 ステータスウインドウだけ(・・)が、なぜか大きく迂回して、こちらへ向かってくる。 


 あ、なるほど。ステータスをよくみたら、納得できた。


 ───────────────

 名前        カイト

 年齢         21

 種族         魔族

 生命力        88

 魔力         65 

 筋力         71

 敏捷性       121

 知性         53

 精神力        68

 器用さ        99

 スタミナ       74

 幸運         12

 キル数        78

 タワーディフェンスモード

 能力:ステルス・アイ

 能力を発動して、瞬きせずに目を開け続けている間、透明になれる。

 ───────────────


 透明になる能力、ね。目を開け続けている間ってのは面白い、だけど。


「シュリ、あの辺に風魔法を撃てる?」

「え? はい、わかりました……」


 ゴォォォッと、シュリが風速25メートルくらいの暴風魔法をステータスウインドウのあるところへ放った。


「ぐぁぁぁぁッ、め、目がぁぁぁッ!」


 やっぱ、そうなるよな。がんばって目を開け続けてここまで来たんだもん、暴風にさらされたらドライアイどころではない。


 目を押さえて苦しんでいるプレイヤーをヤコが一撃でぶっ飛ばし、先を急ぐ。


「スモーキー・タウン」


 次はなに?


 誰かの声が聞こえたと同時に急に白い煙が立ち込め、すぐそばにいるはずのヤコやシュリさえ、ほとんど見えないほど、視界が悪くなった。


「この煙の中ではボクだけが自由に……え、あ、ちょっ、ぐはぁ!」


 周りに展開しているゴーレムにフルボッコにされて、ステータスを確認する前に術者がキルされた。この白い煙のなかで、迷うことなく術者を叩けるってことは、ゴーレムって目で見て動いているわけじゃないんだ……知らなかった。

 

 本拠地と思われる城の前までやってきた。跳ね橋が下りていて、城門が開いている。


「シュリ、あの辺を爆破して」

「はい」


 エコー・キャノンという「音の爆弾」を城門の中へ投げ入れると、爆発して、かなり離れた自分達のところまでビリビリと振動が届いた。


「拙者のフォートレス・マジックが破れるとは……ガクッ」

 

 やっぱり罠だった。城壁と城門に見えていた場所はただの原っぱで本物の城はその奥に見えた。罠系の能力か……相手が間抜けで助かった。跳ね橋を下げて城門を開けておくって不自然にもほどがある。もうちょっと不自然さがなければ引っ掛かってしまっていたかも。


 もうネタ切れかな?


 城の門をゴーレム達にこじ開けてもらい城の中へ雪崩れ込む。


 上空からガーゴイルがあちこちから城の中へ侵入している頃なので、逃げ場もないだろう。


 遠くで悲鳴が何度も上がるのを聞きながら、ゆっくりと城のなかを進んでいく。


 ステータスウインドウ上の創造ポイントが増え続けていくので、もう勝負ありだと思う。


 おや? プレイヤー数が3/32でピタリと止まった。あとの3人はこの城にいないか、もしくはアダマンタイト並の硬さのゴーレムや、とても素早いガーゴイルを返り討ちにできる程の強者のどちらか……。


 城の奥に続く長い廊下の先に重厚な扉があったが、既にゴーレムの手によって破壊されていた。部屋の中へ入ると、3人の男が中央に立っている。


 ここに侵入したはずのゴーレムたちの痕跡がまったくない……。これは予想以上かもしれない。


「この城まで攻めてこれたのは、君が初めてだ。賞賛に値するよ」

「どういたしまして」


 眼鏡をかけた優男が中心にいて、左右のふたりはどうみても体育会系っぽい顔をしている。


 統括型軍師(ストラテジスト)勇者(ヒーロー)聖騎士(セイント)か。たしかに強そうだ。


 ステータス的には、ヒーローの能力が一番高いが、要注意なのはストラテジストという真ん中の眼鏡の男。ゴーレムとガーゴイルを10体ほど生成して、ヤコやシュリの護衛につける。


「やはりね。魔法ではなく何かしらの能力でこれほどのゴーレムを一瞬で作るとは恐れ入るよ」


 その割には顔から余裕が消えていない。様子を探るべく、ひとり前へ踏み出した。


 その瞬間、ヒーローの口の端が吊り上がったのが見えた。






 ここは?


 気が付いたら周囲が真っ暗で、立っている床だけが淡く光っている。


 真四角のフィールドで白と黒の正方形のマスが、交互に縦横8列ずつ並んでいる。まあ普通に考えたらチェスボードの上だと思う……。


 自分のまわりには取り込まれたであろうゴーレムとガーゴイルがそれぞれマスの中にいて、マスから出られないらしい。反対側にはチェスで使われる兵士(ポーン)やら騎士(ナイト)といった駒がこちらを向いている。


「どうです? 私の縮景領域(ミニチュアレルム)は?」


 ストラテジストの声……あの眼鏡、この罠に嵌めるのを最初から狙っていたのか。


 この能力の蘊蓄(うんちく)を長々と垂れ始める。癪に障るので要約するとこの中ではステータスの差はなく、チェスの駒として、勝敗を競うというものだそうだ。


 これがカリエテさんが自分を止めた理由か……空間系の能力。だけど……。


他人(ひと)が決めたルールに従うのは嫌いなんだ」

「なっ!? どうやって縮景領域から抜け出した!」


 エンシェントドラゴン戦で手に入れた空間干渉を使って、異空間を破り、3人のすぐ前に出てきた。


 ようやく眼鏡の顔に焦りが見えた。それではお仕置きターンといこうか?






【ファンタジー小噺36】

京都弁受付 VS 最初の街から出られない男、のお話


麺堂:新顔だな、貴様!

受付:あんたも転生者らしいわね~

麺堂:ほう、まあ、よろしく頼む

受付:それで、今日はどないしたん?

麺堂:ふむ、武器を買おうと思ってな

受付:それはええことやね

麺堂:ずばり金が無くてな

受付:それはお気の毒さんやね

麺堂:ギルドは金を貸してくれると聞いたが?

受付:それはちゃいますわ。返済の宛てのある人だけやで~

麺堂:我が返済しないとでも?

受付:そんなこと言うてませんわ~、ただ

麺堂:?

受付:大層な服を着てはるなって思って

麺堂:だからどうした?

受付:いえね、まず就職された方がええかなって

麺堂:失礼な、また明日くる、サラバ!

受付:ええ耳してはんね~

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