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✜35 管理者


「アラタ様……」


 シュリが、ドサっと手に持っていたカゴを落とす。


「もしかして、けっこう寝てた? ってうわっ!」


 いきなりシュリにタックルを決められ、身体を起こしていたのに、そのままもう一度、ベッドへ仰向けに倒れた。


「良かったです……もう二度と目覚めないかと私、心配で……」


 胸の中に顔をうずめたまま、シュリが泣きじゃくっている。顔は見えないがクシャクシャな顔になっているんだと思う。


 こんなに自分のことを心配してくれるなんて、とてもいい子だ。ちなみにどれくらい気を失っていたんだろう?


「タマゴを食べた後、倒れて10日近く、意識がありませんでした」


 そんなに気を失っていた? でも10日近くも気を失っていた割には全然、お腹は空いてない。あと、本当に気を失ってたんだよね? さっきま管理塔にいたはずなんだけどな。あれを夢で片づけるにはあまりにもリアル過ぎる。上位天使タバサや管理塔(ザ・エデン)の守番の爺さん。そしてあそこで見た不思議な光景……でも、あの光景はたしかに夢だったっていうオチの方がすんなり納得できる。


 ──いや、夢じゃないなこれは。だって右手の甲に変なマークがあるし。


 自分のステータスを見ると、クリエイティブモードと書かれている隣に「第2位指定管理者」という文字が新しく追加されていた。


 ステータスウインドウを横へスライドさせていくと、第2位指定管理者の詳細が書かれているページがあった。


 ───────────────

【第2位指定管理者】

 ・神または第1位指定管理者に代わり、この世界を管理することができる

 ・管理範囲は大陸または島

 ・天候操作

 ・魂魄の生成と定着

 ・空間干渉

 ※ただし上位権限者の制御下にある場合はこの限りではない

 ───────────────


 上から見ていくと、まず「神」という言葉はわからないから放置する。その次に書かれている第1位指定管理者というのは上位天使タバサのことではないだろうか? 管理者権限を付与できる人物だ。当然、上位の管理者という意味なんだろう。


 管理範囲は、「大陸または島」と書かれていて、自分の場合はこのダンジョン島が管理範囲だと考えて間違いないと思う。その下に天候操作とあるが、これは実にありがたい。風水害などの自然災害と言われるものをすべて無しにできるし、農業では旱魃(かんばつ)に苦しむこともない。漁業では時化に遭わずに済むので安定的に海の恵みがこの島に享受される。まさしく神のチカラって感じだ。


 その次の魂魄の生成と定着というのはどういう意味だろう? ちょっとこれはよくわからない。あとで使って確かめてみようと思う。


 そして最後の空間干渉。この能力を手に入れるために今回、自分がリスクを冒してまで、古龍カリエテに挑んだ理由である。この能力さえあれば、敵対している侵略者側へ攻め入っても空間的な能力や魔法で閉じ込められることはない。他にも色々と使い道がありそうなので、この能力も実際、試して確認したい。


 それはそうと……。


 先ほどからシュリが自分の上に覆い被さってピクリとも動かない。他のひとに見られたら一発で誤解されそうだが、自分達は清い関係にある。断じて同衾共枕(どうきんきょうちん)のような関係ではない。


 ないのだが……。


 彼女はとても華奢で、白い透明な肌はフニフニしていて柔らかい。とてもじゃないが触ってはいけない神聖なものに感じてしまう。ステータスウインドウのチェックが終わった両手はヒマを持て余して、シュリの肩に触れようか否かと10回以上は手の上げ下げを繰り返している。


「くーZzz……」


 あ、寝てたのね……。


 寝息が聞こえたので、ようやく状況が理解できた。これまで自分のことが、心配であまり眠れなかったのかもしれない。


 それにもかかわらず、自分の浅ましさがとても恥ずかしく感じられてきた。


 このまま起きるまでそっとしておこう。彼女を起こさないようにそっと抱きかかえて、ベッドへ寝かせ、部屋を出た。


 ずっと寝ていたせいか、目がバチバチに覚めている。少し夜風にでも当たろうと家から出ると、塀の上に月を見上げているヤコが座っていた。


「起きたか」

「ヤコ、その左腕って……」

「ああ、義手だ」

 

 ここから遠く離れた大陸にある魔法王国エブラハイムで、開発された魔法の義手『真銀の腕(アガートミスリル)』は魔力を動力源にして、自在に動くというとんでもなく高価な品だが、冒険者の街からこのクリエの街へ避難してきた商人が命を救ってもらったお礼とこの街への定住権を得る代金として、ヤコへ贈ったものだそうだ。


 残念ながら失った左目はそのままだ。紅色の髪で左目を覆って目立たないようにしているが、夜風で髪がなびいた際、額の端から眼帯がチラリと見えた。


「それでアラタ、新しいチカラってヤツは手に入れたのか?」

「まあね、どうせ眠れないし、ちょっと試してみようかな」


 そう話し、第2位指定管理者になって得た能力を使ってみた。


「アラタ、これは……」

「……さすがは天使からもらった能力……これはヤバいかも」




【ファンタジー小噺】

軽い気持ちで書いたら賞を取っちゃった人、のお話


編集:先生、ここはもう少し盛り上げるシーンを

作者:は? 賞取ってから言ってくれる?

編集:先生、明日、打ち合わせありますんで編集部に……

作者:オンラインにして、午後以降ね

編集:先生、あとがきの方はもう少し読者に寄り添うような

作者:10万部超えさせてくれない読者が悪いから

編集:先生、●●先生のアニメ化へのお祝いコメントを

作者:俺が一番天才なのになんでアイツの駄作が? パス

編集:先生……先生?

作者:あれ、ここ、どこ?

女神:貴様にとっては、ある意味地獄だ。勘違い野郎ッ!?





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