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✜31 魂の成長


 通常、ステータスウインドウは青色だが、真っ赤な色で「警告」と書かれたウインドウがいきなりポップした。


 もちろん、鞭で叩かれたように全力で横へ向かって走る。


 なにこれ……真っ黒な炎。赤い炎のブレスに比べると、そこまで速くない。初動が良かったお陰もあって余裕を持ってかわせた。自分がこれまでいたところを確認したが、特になにか壊れたり、爆発したりしていない。


 でも、どういう効果があるのか確認しておかないと。警告が出るくらいだから、生命力が無限でも当たっちゃいけないって意味だと思う。走りながら、ガーゴイルを1体生成して、ドラゴンへと突撃させると黒いブレスに飲み込まれた。これでなんの異常もなければ、そこまで警戒しなくてもいいかも。


 なっ、黒いブレスが直撃した途端、ガーゴイルが空中で固まった。……石化とは違う。石化なら羽ばたいていた状態が固まり、地面に落ちるはずだが、空中で静止した状態を維持している。もしかしてガーゴイルの時間に干渉している?


 もし、そうならやはり回避して正解だった。炎などの物理的な攻撃は自分にはもちろん無効だが、例えば睡眠や混乱など精神に作用するものに対しても無限の精神力=抵抗力を備えているから問題ない。


 だけど、時間そのものに干渉されたら……。自分の抵抗力に関係なくすべてが停止してしまう。もし停止してしまったら、それはどれくらい効果がある? 数秒? それとも百年? そう考えると恐ろしくなる。


 七色ブレスというのは、七種類のブレスのことらしい。その後も数種類のブレスを吐いてきた。毒のブレス、雷のブレス、氷のブレス、酸のブレス……だけど、どれも自分には無効なものばかり、警告のサインも出ない。


 油断はしていないつもりだったが……。


 ───────────────

 【警告】

 七色ブレス「魂縛」のエネルギーを検知しました。回避不能と推定。

 ───────────────


 紫色の炎だが、形が先端に楔のついた鎖に見える。それが無数に……そしてどんなに避けても、どこまでも追尾してくる。


 警告表示が出た時点でたぶん生命力とか精神力とかに関係なく作用を受けるタイプなんだろう。それが回避不能って、詰んだなこれ……。


 逃げきれない。前後左右から迫る鎖に観念して立ち止まった瞬間。


 ガガッと鈍い音が鳴った。瞑っていた目を開くと四方すべての鎖が弾かれていた。青白い結界……これって。


「ピッ!」

「どうしてここに!?」


 ピコンは、シュリやヤコに預けてきた。自分について行こうと留守番を嫌がっていたが、ピコンまで危険に晒すわけにはいかなかった。それなのにどうして?


「ヴワァァァァ!」


 次にドラゴンの右眼のすぐそばで、目も開けられないくらいの閃光が弾け、古龍が後ろに仰け反りながら悶えている。


「アラタ様!?」

「悪いなアラタ、アタイは止めたんだがな」

「ふたりまで……いったいどうして?」


 シュリの閃光魔法は不死系の魔物に使うのが一般的だが、目くらましの用途にも使える。


 バツの悪そうなヤコと相対してシュリは、かろうじて命を繋ぎとめた自分の胸元へ飛び込んできた。


「ここから早く逃げ……」

「イヤです!?」

「だって危ないか……」

「危ないのはアラタ様の方です!?」


 先ほど一瞬、たしかに諦めた。それをすごく責められた。


「イチャついてるところ悪いが、そろそろ来るぞ?」

「イチャついてなんかいませんッ!?」

「はいはい」


 ヤコが呼びかけたので、確認すると古龍カリエテは、時折頭を振っているが、だんだんと視力が戻ってきているようだった。


「アラタ様、約束してください」

「うん?」


 シュリが自分から離れて、遠くから魔法で援護できる距離まで下がりながら、伝えた。


「絶対にあきらめないでください」

「ゴメン、わかった。約束するよ」


 返事を聞いたシュリは厳しい面持ちから少しだけ表情が柔らかくなった。


 本当にゴメン。心配かけて……回避不能と言われてあきらめて立ち止まってしまった自分が情けない。こんなにも自分を思ってくれる小鳥や彼女たちがいる。皆のためにもこんなところで、負けてなんかいられない!


 ───────────────

 魂の成長を確認しました。

 これにより器の昇華……「超越」ができます。

 「器の昇華」を行いますか?


 ➡はい

  いいえ

 ───────────────


 警告以外で、ステータスウインドウ画面がポップアップするのはめずらしい。魂の成長……もしかして今、この場で成長した? でも、考えるのは後でしよう。すぐに「はい」を選択する。


 あれ? なにも変わっていない。エンシェントドラゴンは、手前にいる自分を視界に収めると、ブレス攻撃から直接打撃へと切り替え、尻尾をしならせた。──速すぎて回避が間に合わなかった。ドラゴンの尻尾に叩きつけられ、視界がぐるぐる回ったあと、岩壁に激突して岩壁を5メートルくらいのクレーター状に丸く陥没させて、ようやく止まった。


 ぉぉお、りゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!


 打撃は無効なので痛くも痒くもない。岩壁にめり込んだまま、ステータスウインドウの前にキーボードを出して、方向キーとエンターキーを連打しまくる。


 その理由は、各ステータスの横にあった「限界値」という文字が消えていたから。おそらく器の昇華をしたことによって人間の限界を「超越」したんだと思う。創造ポイントを再びステータスに割り振れるようになっていたので、腐るほどある創造ポイントを一気に投下して能力を高めていった。



【ファンタジー小噺30】

自分が叱られてないのに変な感情に目覚めた王様、のお話


妃:この泥棒め、恥を知りなさい! 恥をッ!?

王:ゾクゾクッ

妃:? あなたどうしたのかしら?

王:ふぇ? オホン、何でもない

妃:そう……それよりその者を鞭打ちの刑に処しなさい

王:ふーッふーッふーッ

妃:あなた本当に大丈夫?

王:だ、大丈夫、ふーッ

妃:早く妾に詫びろ詫びろ詫びろぉぉーーーッ

王:我が生涯に一片の●●●●(ピィーー)


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