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✜24 異門


「いちおう婚約はしたからの、クリアじゃ」


 そうなの? まあ、そうじゃないとあまりにも理不尽なゲームだからね。


 ───────────────

 ヴァールギュントの第3試練クリア特典

 「ダンジョン生成」を獲得しました

 ➡詳しい説明をみる

 <WARNING>ヴァールギュントの最終試練が開放されました

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「この機械音声とステータスウインドウもサクラがやってるの?」

「妾はあくまでダンジョンの管理を委託された身、細かいことは、よう分からぬ」


 そうなんだ。つくづく不思議なシステムだな。


 それにしてもヴァ―ルギュントの最終試練が開放されたってどういう意味なんだろう? 強制イベ的な感じなのだろうか……。


 ダンジョン生成の詳しい説明を見てみる。まあ予想はついていたけど、ずばりダンジョンを新しく造るものだった。ただ、ダンジョンをひとつ生成するのに100,000ポイントと莫大な創造ポイントが必要なので、そうそう使える代物ではない。


 うーん、ゴーレム生成、NPC生成、ダンジョン生成ときたか……。これってサンドボックス系ゲームの世界と多少、違いはあるが似通った部分が多いと感じる。


 もしかして、この島にダンジョンを作ったのって自分以外のあっちの世界から来たひとなのかも……そう考えると、いろいろと腑に落ちる。


 この部屋がダンジョンの最奥部なので、またあの水路を通ると思うと少し面倒だなと思いつつ、引き上げる準備をしていると、サクラが転移陣を開いてくれたので、一瞬で外の湖へと戻ってこれた。


「この湖を中心に街を作りたいんだけど?」

「それは良い提案じゃ、妾が管理してやろう」


 えー、大丈夫かな? 任せたら大変なことにならないか心配。でも、進んでやりたいと言うならやらせてもいいかもしれない。


 この湖の名前をサクラに聞いたところ、ユールンという名前と教えてもらったので、新しくこれから造る町も「ユールン」と命名した。さっそく土建ゴーレムと戦闘用ゴーレムを生成して、周囲の魔物を排除しつつ、ユールン湖を中心に湖上都市の建設を始めた。


 街ができるのは、まだまだ先なので、次にここへ寄った時にNPCは生成することにして、一度、クリエの街へ戻ることにした。水の街ユールンの今後のNPCの役割はあとで考えるとして、土建ゴーレムと戦闘ゴーレムの指令権をサキュバスのサクラへ委託した。


 たまにはクリエの街に遊びにこれるかをシュリが聞いたところ、彼女はこのユールン湖から離れられない事情があると答えた。それから自分に対して「また逢瀬を愉しもうぞ」と暴走が過ぎる妄想的虚言を口にしたので、スルーしたら「放置プレイも一興じゃ」とまったく動じた様子もなかった。


 ちなみにラミア達もここへ残り、彼女らの希望により、ユールンの街に総合病院を造ることになった。先ほど知ったばかりだが、彼女らは治療魔法と変身魔法が得意だそうで、各専門科の病棟を建てて、8人のラミアがそれぞれ内科、小児科、皮膚科、外科、整形外科、眼科、耳鼻咽喉科、精神科を受け持つ予定だと教えてもらった。いつか冒険者が大勢、この街へやってきて人手が足りなくなったら、ラミア達の支援のために看護師役のNPCを生成しようと考えている。





 2週間ほど他のノーマルダンジョンをクリアするため、寄り道しながらクリエの街へ戻った。川沿いの自分の家へ到着して一息つく間もなくテリヤキとフィオレが血相を変えてやってきた。


「冒険者が次々と?」

「ああ、命からがら逃げてきたらしい」


 これまでこのダンジョン島唯一の街だった冒険者の街が襲撃にあったそうだ。襲撃してきたのは、見たことのない角と黒い翼を生やした種族で、たった一度の襲撃で大勢のひとが命を落としたそうだ。


 この謎の襲撃者は、2週間近く前にダンジョン島と大陸を結ぶ定期航路上のあたりに突然現れた(ゲート)から湧いて出てきたそうで、ゲートの向こうにはダンジョン島と同じような「島」が見えたと複数の目撃者が証言しているとのこと。


 現在、宿屋の方が満員で、私財を持ち出せずに着の身着のまま逃げてきた人たちが大勢いて、他店舗なども無償で解放しているが、傷病人も多く、この街へ辿りつく人も日に日に増えていて街の建物の許容量を超えつつあるそうだ。


 すぐに岩山の外……街の外れへ移動した。なにかに役立てようと森を切り拓いておいた空き地へ土建ゴーレムを使って、仮設住居の建造を始める。それと並行してNPCと戦闘ゴーレムをセットにした捜索隊を編成した。まだ森のなかを彷徨っている人達をひとりでもこの街へ案内しようと各方面へ大量に放った。


 ───────────────

 拠点「ゴブリンの集落017」を奪われました

 拠点「ゴブリンの集落023」を奪われました

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 なっ……いきなりステータスウインドウから警報音が鳴ったので見ると拠点を奪われた(・・・・・・・)と出ていた。拠点化って自分にしかできないと思っていたのにいったい誰が?


 奪われた拠点は最初に発見したゴブリンの集落と冒険者の街にいちばん近い集落のふたつ。これって、もしかして自分と同じ能力を持った人間がいる? それとも頭に角と背中に黒い翼を生やした正体不明の種族の仕業? どちらにせよ、このままではマズイ、どんどん拠点を奪われてしまいそう。


 それだけならまだしも、いずれこのクリエの街や建設中のユールンの街へもやってくるかもしれない。早めに手を打たなくては……。





【ファンタジー小噺】

社畜から転生したのにP上司も一緒に転生しちゃった男、のお話


陸:遊ぶって、どうやるんだっけ……?

陸:忙しいのは百歩譲ってもいいが、Pことパワハラ上司はひどい

陸:自宅は寝るところ、それ以外はブラックな会社にずっといる

陸:過労死か。まあ当然だな。って転生? やった、ついてる

P:おう、君も転生したか、よろしくな

陸:え……

P:さっそくだが、食糧を調達してきてくれたまえ

陸:俺、ひとりでですか?

P:当たり前だろ! 急げ、日が暮れるぞ?

陸:はい……

P:まったく、少しは同期の渡辺君を見習いたまえ!

陸:もういいや……

P:ん? どうした突っ立っていたら飯にありつけんぞ?

陸:なんかどうでもいいや

P:お、おい、お前なにを!? あぎゃぁぁぁぁ!

陸:最初からこうしておけば良かった……ん? あ、そっか

陸:コイツと一緒に転生したのって神様からの贈り物か!

 

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