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✜18 和風なサキュバス


「これで3つ目か」

「アラタもずいぶんと強くなったな」

「いや、能力頼りな戦い方だからもっとヤコを見習わないと」


 1週間でダンジョンを3つクリアした。特に頭を使ったり工夫することもなく、入り組んだ迷宮を踏破するノーマルなダンジョンだったので、戦闘ゴーレムを大量に生成し、物量に物を言わせて、すべて短時間でクリアした。


 ダンジョンは1層ごとに拠点化できるので、3つのダンジョンで合計で100近くも拠点が増えた。これで日々の創造ポイントへの加算がますます楽しみになってきた。


 あたりはすっかり日が落ちていて、月明かりはあるが、森の木々が邪魔をして月の光が下まで届かないので、クリエイティブで頭に装着するヘッドライトと手には電池式のランタンを持っている。できれば小さなほら穴などあればテントセットをクリエイティブして交替で眠れるのだが……。しばらくあてもなく歩いていると。


「湖だな」

「あ! ホントだ」

「……なんか見えているが、アタイだけか?」

「いや……たしかに見えてる」


 森のなかに水が澄んでいてとてもきれいな丸い形をした湖を見つけた。結構、規模は大きく、きっと森の動物たちが立ち寄る憩いの場になっているに違いない。


 それはいいのだが、ヤコのつぶやき通り、視えちゃいけないものが視えている。


 和服を着た女性、和傘を差している。空から桜の花びらが降っているが、上空には桜の木どころか何も見当たらない。だが、目を疑うのはそこではなく女性座りをしているその場所は湖面の上、浮かんでいるようにしか見えない。


「おお、どなたか妾を助けてくれるものはいないものかのぅ」


 やけにデカいひとり言だな……。よよよっと斜め下へ頭を垂れながらセリフじみたひとり言を口にしている。


・・(よし)()・・・・・・(ここは静かに)・・・・・・・(この場を去ろう)

「酷いお人よのぅ、お主?」

「うわぁぁぁぁ、びっくりしたぁぁ!」


 いつの間に背後へ!? 細く白い腕が両方の脇の下から這い出て胸を触られて身体じゅうの毛が逆立った。


「離れろ化け物!」

「なんと野蛮な……その(ほう)、このような野蛮な女を囲って楽しいかえ?」


 ヤコの豪剣が背後へ走ったが、少し離れたところから緊張感のない声で質問してきた。かわした?


「アタイが野蛮だって? はッ上等だ!」

「態度と胸だけが出しゃばりのようじゃのぅ?」

「こ・ん・のぉぉぉ、化け物女が!?」

「ちょっ、待ってヤコ、少し話を聞いてみよう」

「そうじゃ、いきなり斬りかかってきおって、この脳筋女め!」

「うわぁ、こんなに切り刻みたい衝動が起きたの初めてだわぁ……」


 ヤコを説得すること5分、ようやく落ち着いたので、目の前で宙に浮いてお茶をすすっている女性に話を聞く。


「妾はサクラ、ヴァールギュント第3試練のダンジョンマスターじゃ」


 先ほどからステータスは見えていたので、予想はついてはいた。種族のところに「ヴァールギュント」って書いてあるからだが、その後ろにサキュバスと書いてある。


「それで、なぜダンジョンマスターがこんなところへ?」


 これまでの試練では種族の欄にヴァールギュントと書かれたタコさんや白いウサギは、どちらもダンジョンの一番奥の方へいた。彼女……サクラも迷宮の主ならダンジョン最奥で冒険者がやってくるのを普通待っているものではないだろうか?


「よう聞いてくれた。実は第3迷宮を占拠されてしまっての……」


 事の発端は、ダンジョンマスターのサクラが誰も訪れない迷宮に嫌気が差し退屈しのぎのため、本来、湖の底にある迷宮の入口を湖面へ移動させたのが始まりだそうだ。


 釣り糸を垂らして時間を潰していたところ、湖にラミアと呼ばれる上半身が人間の女性で下半身は蛇の魔物が群れで現れたそうだ。


 話を聞くと、たくさんの人間が彼女たちラミアが棲んでいたダンジョンへ押し寄せ、命からがらここまで逃げてきたとのことだった。


 ラミアは人間や他の種族の雄をさらって子を産むので、サクラは「妾のような美女じゃないから、無理やり攫わないと相手もされんのかの?」とついつい余計なことを口走ってしまい、逆上したラミアたちに大事なダンジョンを占拠されたという口が災いを招くという何とも言えないエピソードを語ってくれた。


「そっかー大変だね、それじゃ」

「ちょっ待つのじゃ……ここまで話を聞いて去ろうとするとは冷たすぎるぞ」

「え、だってコチラに得なんてないし」


 それにヴァールギュントの試練って、毎回、意表をつくものばかりで、酷い目に遭わされる。他のダンジョンを回った方がよっぽど効率がいい。


「得ならあるぞ、耳を貸してみよ」

「……ななな、なんて提案を!」

「お主、初心(うぶ)じゃのう……この者らは奉仕してくれんのかぇ?」


 いや、刺激強いって、無理無理、鼻血が出て気絶しちゃうって。


「アラタ様になにを仰ったんですか、サクラ様!」

「いやなに、●●●や●●●など当たり前じゃろう?」

「ぷしゅー!」

「し、シュリぃぃぃ!? 気をしっかり!」


 シュリが、勇敢にも質問したが、あえなく返り討ちにあってしまった。


「おのれー、淫猥の権化め、よくもシュリを」

「何かの余興を演じておるのか? お主ら……」


 サクラは「他にもあるぞ」と別の提案を出してきた。それによるとラミアたちを追いだしてくれたら、金貨や銀貨が有り余っているので、山のように分けてやると言ってきた。


「引き受けよう」

「アラタ……お前ってヤツは……」


 ゴメン、ヤコ……。クエリの街を今後、もっと発展させようと考えると背に腹は代えられないんだ。わかってくれ!






【ファンタジー小噺(17)】

続・ダンジョンが家の地下にできた人、のお話


紘:よし、顔を隠して配信で稼ごう

母:紘、ダンジョンで遭難したらどうするの?

紘:え、それは誰か助けに来るだろ?

母:顔も見せてないのに?

紘:それは……

母:あと、魔物の血とか「バァッ!」って出るんでしょ?

紘:まあ、そうだけど……

母:配信の運営会社が暴力を助長する配信はNG出すでしょ?

紘:相手は魔物だからいいんだよッ!?

母:ここで一句『現実を ちゃんと見てこそ 配信可』




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