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✜12 休息


「ゲゥッ」


 一匹はシュリの魔法で撃ち落とした。もう一匹は肉薄したが、上手くかわして大型ナイフで羽に傷をつけたので、バランスを失って床を転がり、縁から落ちていった。


 あっぶな、シュリの魔法が当たらなかったら体当たりされて、はてしない高さから下へ落ちるところだった。


 一度、結界の近くまで引き返して、結界を背にしてクロスボウを放つ。だが全然当たる気がしない。それだけ空を飛ぶ相手と対峙するのはリスクが高いといえる。


 互いに打つ手がないまま、しばらく時間が経つと、ガーゴイルの矢が尽きた。ガーゴイルは弓を投げ捨て、両手の長く尖った爪で獲物を引き裂こうと建物のなかへ入ってきた。


「あとは任せろ!」


 そう言い、ヤコが結界から飛び出すと、次々にガーゴイルを返り討ちにしていく。速さにおいてはヤコの方が遥かに勝っている。戦闘センスにいたっては、大人と赤ん坊ほどの差があるので、ガーゴイルはまともな抵抗もできないままヤコに蹂躙されていった。


 


 また動きだした。


 床がしばらく上昇を続けると再び壁が現れ、縦に伸びたトンネルを上へ進むようにしばらく上昇すると、螺旋階段が上に伸びていて、中央は吹き抜けになっている空間に出た。


「1時間以内に塔を登り切ってください」


 機械音声が聞こえたので、すぐに行動へ移した。螺旋階段が何段あるのか分からないため、ジョギングくらいのスピードで階段を駆け上がる。


 シュリへ小型クロスボウとリュックサックをその辺に捨ててかまわないと話す。自分も大型ナイフだけ残して、クロスボウは階段の下へ置いた。


 スタミナがいちばん多いヤコは、ブロードソードをそのまま持っていくそうだ。まあ、途中で魔物が出たら、目も当てられないのでお任せする。


 シュリのまだ割り振っていなかった割り振りポイントと自分の創造ポイントを階段を上りながらスタミナへ割り振る。自分の創造ポイントは万が一に備えて、3,000ポイントは残しておく。


 階段を登り始めて、15分くらい螺旋階段の対面側の数段上あたりで動くものがちらりと見えた。1周回ったあたりで魔物……レアメタルゴブリンがたくさん階段を降りてくるのがハッキリみえた。


 こんなにいたらレアでもなんでもないんだけど……。などと愚痴は心の中でこぼして、余計なことはしゃべらずヤコを追い抜き、一番先頭へ出ようとしたら、ヤコの手によって遮られる。


「こんな連中、わざわざ相手することはない」


 そう言うと、彼女は蹴ったり殴ったり、掴んで放り投げたりして銀色の光沢をしたゴブリンを螺旋階段から落としていく。──その手があったか。でも創造ポイントが惜しい気がする。


 って、あれ、創造ポイントが急に増えた!?


 999ポイントずつ増えていく……そうか、落下したゴブリンの経験値が創造ポイントとして入ってくるんだ。


 降りてくるレアメタルゴブリンの処理はヤコに任せて、階段を登るのに専念する。


「ハァハァ……」


 ヤコも息が上がってきた。合図を送って後ろへ下がってもらった。


 最初に前へ出ていたらすぐに息が上がっていたはず。だけど今、すごいスピードで創造ポイントが増えているので、ステータスにポイントを振り放題だった。結果、スタミナだけならヤコよりタフになった自分が誕生した。


「制限時間内での最上階到達を確認しました。クリアタイムは58分41秒でした」


 結構ギリギリだったけど無事クリアした。機械音声がアナウンスする。


「それではこれより24時間の休息後、光っている円内へお入りください」


 見渡す限りの砂漠が続いている。ずっと上空へ来たはずなのにおかしい。──脳がバグりそうになる。シュリやヤコはそこまで驚いていない。魔法という枠で片づけれたら何でもアリだが、科学の発達した世界で生まれたせいか、この辺はいまだに慣れていない。


 音声案内のとおり目の前には光っている魔法陣がある。自分のステータスウインドウの端っこで24時間のカウントダウンが進んでいるので時間を間違えることはなさそう。


 そして、あからさまにここで休めと言わんばかりの家が砂漠の真ん中にポツンと建っている。


 誰が指示しているか知らないが音声案内のとおり、素直に休息を取ろうと思う。家の扉のドアノブへ手をかけると、鍵はかかっておらず簡単に開いた。


 家だな。それも日本でよく見る一般的な家にしか見えない。


 玄関で靴を脱いで中へお邪魔する。ヤコやシュリへ同じように靴を脱ぐよう話す。宿屋で泊まった時、土足スタイルだったのでたぶんこの世界の住人は皆、家は土足のままだと思うから。


 冷蔵庫を開ける。その昔、友だちの家の冷蔵庫を開けたくてソワソワした気持ちが蘇ってくる。なんだろう? あのイケないことだとわかっているのに手が伸びてしまいそうになる衝動は……。


 ちなみに冷蔵庫や冷凍室には自分ん家にもあるような野菜や肉などが揃っている。コンロはなぜかIHコンロが備え付けられていて、背面には電子レンジや炊飯器まである。電気というものがこの世界にあるのか知らないが、冷蔵庫のなかはちゃんと冷えているし、リビングの照明もスイッチを押したらついた。


 キッチンの蛇口を上げるとちゃんと水が出た。お湯にも切り替えられるので、この分ならお風呂も入れるだろう。







【ファンタジー小噺】

不良が転生! でも喧嘩して友情を育めない、のお話


虎丸:へへっ、お前らが「双竜」コウジとユキヤか?

コウジ:キミも転生者なんだろ? 仲良くしようよ

虎丸:ちょっ、壁ドンって、お前……

コウジ:唇が柔らかそうだね?

虎丸:お、お前いったい何を///

ユキヤ:コウジ……なんでそんなヤツを……

コウジ:ユキヤもおいで、一緒に友情を育もう

虎丸:お前らこれは友情なんかじゃ!? ぁ……






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