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繋がりのドミグラスソース  作者: 山いい奈
4章 再開に向かって
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第8話 心を尽くして

どうぞよろしくお願いします!( ̄∇ ̄*)

少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。

 守梨(まもり)は各テーブルを回り、華奢(きゃしゃ)なシャンパングラスにベルエポックを注いで行く。静かにとくとくとくと流し、ワインボトルの口に白いナプキンを当てて液だれを防ぐ。


「こちら、榊原(さかきばら)さんご夫妻からいただいた、ベルエポックというフランス産のシャンパンです。どうぞご賞味ください」


 すると、あちらこちらから「ありがとうございます」「いただきます」と声が上がり、榊原さんはぺこりと頭を下げ、杏沙子(あさこ)さんは笑顔で小さく手を振った。


 それぞれがシャンパングラスを手に取り、乾杯などをして口に運ぶ中、守梨は厨房に入る。すると(ゆう)ちゃんの手によって1品目が完成していた。


「よろしく」


「うん」


 守梨はスープカップをトレイに乗せる。まずは上座の榊原さんご夫妻の分から、往復して松原(まつばら)さんご夫妻、そして祐ちゃんの両親と男性の順。


「こちら、今が旬のかぼちゃのポタージュです。まだ気温が高めですので、今回は冷製仕立てにしております」


 「テリア」では旬の野菜を使ったポタージュを、日替わりで用意していた。スープはシェアしづらいものだということもあって、ひとり分をスープカップで提供していたのだ。もちろんスプーンも添えて。


 今回は「テリア」のメニューから皆さんの好き嫌いやアレルギーなどを考慮し、コースの様に組んでいる。なのでスープもスープ皿でと思ったのだが、やはりいつもの様に、これまでの様にすべきだろうと決めたのだ。


 玉ねぎとかぼちゃをスライスして炒めて甘みを引き出し、ミキサーに掛けて()し、ミルクと生クリームを加え、お塩と白こしょうで味を整える。


 シンプルではあるが、だからこそかぼちゃのまろやかなふくよかさが引き立つのだ。


 次は前菜。ガラスの丸いプレートに、サーモンとアボカドのタルタル、パテ・ド・カンパーニュを盛り付け、グリーンとブラックのオリーブを添えた。


 タルタルに使うのはマヨネーズとクリームチーズをベースとしたドレッシングで、角切りにした生サーモンとアボカドを和え、セルクル型で抜いて、ディルを飾った。レモン汁も入っているので、ほのかな酸味でしつこさが抑えられているのだ。


 パテ・ド・カンパーニュもフレンチの前菜の定番である。豚肉と豚レバでコクと旨味のある一品に仕上がっている。ブランデーやナツメグでお肉の臭みは程よく抜け、ローリエで風味も豊かだ。


 これは1晩冷やして寝かせる必要があるので、昨日「マルチニール」での修行の前に、祐ちゃんが来て作ってくれたものである。


 オリーブはいつもお父さんが買っていた塩漬けをそのまま添えている。良い塩梅の口直しになるのだ。


 お魚料理は、かれいのポアレ・粒マスタードソースである。白身であるかれいは淡白な魚なので、マスタードソースは蜂蜜で甘みを与え、ワインビネガーの酸味であっさりと仕上げている。


 彩りにズッキーニのくし形切りをオリーブオイルで焼き付け、一緒に白いお皿に盛り付けて、ソースを掛けるのだ。


 そして、口直しにライムのグラニテを出して。


 メインのお肉料理は、絶対に皆さんに食べて欲しかった、ドミグラスソースを使った一品。タンシチューである。


 牛タンはすり下ろした玉ねぎに漬けてから下茹でをして、臭みを取ってから表面を焼き付けて、赤ワインやドミグラスソースなどでことことと煮込んで行く。玉ねぎももちろん炒めて使うので無駄にならない。


 濃いブラウンをまとった牛タンは、ふっくらとしつつほろっと柔らかく、口の中でほどける。ソースにも旨味がたっぷりと詰まっていた。器に盛り付けてから生クリームを回し掛け、彩りにイタリアンパセリを添えた。


 最後はデザートである。シンプルにレモンシュガーのクレープだ。レモンの半月切りを飾ってある。甘みと酸味を兼ね備えた、食後にぴったりな軽いスイーツである。松村さんが持って来てくれた貴腐ワインも出した。


 最後の最後にコーヒーか紅茶。こちらはお好きな方を選んでもらった。アイスとホットも選べる様にしている。


 全てのお料理が終わり、祐ちゃんは後片付けに入っているはずだ。守梨はフロアの片隅で皆さんを見守る。話し声は控えめなのだが、笑顔が満ち、とても和やかな雰囲気になっていた。


 皆さまに楽しんでいただけただろうか。祐ちゃんのお料理は美味しく食べていただけただろうか。寛いでいただける空間作りができていただろうか。守梨が選んだワインは、お口に合っただろうか。


 心を込めた。精一杯気を配ったつもりだ。祐ちゃんもいつも以上に丁寧に作業をしていた。なので、できることなら少しでも(むく)われて欲しい。


 守梨は胸を高めながら、沙汰を待つことになるのだった。

ありがとうございました!( ̄∇ ̄*)

次回もお付き合いいただけましたら嬉しいです。

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