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繋がりのドミグラスソース  作者: 山いい奈
4章 再開に向かって
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第3話 ホール係として

どうぞよろしくお願いします!( ̄∇ ̄*)

少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。

 翌日の土曜日、夕方から守梨(まもり)はなかもずにあるビストロのアルバイトに入る。


 ここはお父さんの調理学校時代の友人、秦野(はたの)さんがオーナーシェフを勤めるお店で、お店の名前は「ビストロ サトル」という。サトルは秦野さんの下の名前である。


 なかもずは御堂筋(みどうすじ)線の終点駅である。大阪市の隣、(さかい)市になる。大阪府では大阪市に次ぐ大きな市で、ふたつめの政令指定都市となっている。


 最近では大仙陵古墳を始めとする百舌鳥・古市古墳群が世界遺産登録されたことで、注目を浴びた。


 松村(まつむら)さんに紹介してもらった「サトル」なのだが、席数も結構あり、料理人もふたりいる。なので複数いるフロア係として入れてもらえたのである。


 開店時間は17時。さっそく予約のお客さまで席は埋まり始める。


 フロア係は守梨を含めて3人。うちひとり、平木(ひらき)さんと言う女性がソムリエだ。他のドリンク作りも平木さんが主に担当する。


 守梨ともうひとりの尾村(おむら)さんが、お料理のサーブを主にする。守梨が入ったお陰で仕事が楽になったと、平木さんも尾村さんも言ってくれる。


 始めた当初は本当に慣れなくて、迷惑もたくさん掛けてしまった。お客さまに頭を下げることも多々あった。それをふたりはさり気なくフォローしてくれた。守梨の目標を知った上で、鍛えてくれたのだ。


「食器をテーブルに置く時は、音を立てん様にな。お皿の裏、糸底をテーブルに沿わす様に置くんや」


「フロアではどんなに急いどっても、早歩きもあかん。走るなんて以ての外や」


 始めはそんな当たり前のことすら注意されてしまった(てい)たらくだったのである。緊張したり、気負ってしまったこともあるのだが、お母さんにも何度も言われていたことなのに、すっかりと飛んでしまったのだ。


 ふたりは厳しくも暖かかった。それが本当にありがたかった。お陰でどうにかホール係として(さま)になって来たと思う。慌てることが少なくなり、ちょっとしたアクシデントなら対応できる様になって来ている。


 ビストロは居酒屋と違い、羽目を外したりする様なお客さまは少ない。これも幸いしたと言える。客筋が良いと言うのだろう。それはこの「サトル」のお料理や接客の賜物(たまもの)なのだ。


 ワインに関してはソムリエの平木さんがいるから、守梨が関わることはあまり無い。だが平木さんとお客さまのワインの話を聞けるだけ聞き、できるだけ銘柄(めいがら)と平木さんのセールスコメントをメモし、お母さんのワインノートと照らし合わせ、勉強して来た。


 多分松村さんは、勤めている人の人柄も考慮してくれたのでは無いだろうか。確かにお父さんの学生時代の同期だから頼みやすいというのはあっただろうが、万が一新人いびりでもあろうものなら、修行どころでは無い。


「はい、守梨ちゃん、これ5番な」


 カウンタ越しにお料理が出てくる。オーナーシェフ渾身(こんしん)の、牛すじ肉の赤ワイン煮込みである。芳醇(ほうじゅん)な香りが漂い、お腹が鳴りそうになってしまう。


「はい」


 守梨はそれを受け取り、速やかに、だが優雅に、お客さまの元へと運んだ。




 「サトル」の閉店は22時である。着替えようとバックヤードに入った守梨は、まずいつもの癖でスマートフォンの通知をチェックくる。すると(ゆう)ちゃんからSNSでメッセージが入っていた。


 珍しい。祐ちゃんとは平日毎日会っているので、こうしたメッセージを送り合う必要があまり無いのである。


 緊急だろうか。守梨は、いの一番にそのメッセージを開いた。


「明日の日曜日、昼ごはん「テリア」で食べてええやろか。俺が作る」


 それに、守梨は迷うこと無く「もちろんええよ。待ってる」と返信した。


 美味しいものが食べられるのだから、大歓迎である。守梨は口角を上げながら、ロッカーを開けた。

ありがとうございました!( ̄∇ ̄*)

次回もお付き合いいただけましたら嬉しいです。

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