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繋がりのドミグラスソース  作者: 山いい奈
3章 意図せぬ負の遺産
38/55

第16話 これからもともに

どうぞよろしくお願いします!( ̄∇ ̄*)

少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。

 翌朝、守梨(まもり)(ゆう)ちゃんは住吉(すみよし)警察署に(おもむ)いた。祐ちゃんが車を出してくれたので助かった。


 住吉警察署の最寄り駅は阪堺(はんかい)電車の住吉駅である。全国の住吉神社の総本社である住吉大社にも近い。


 電車を乗り継いで行ける場所なのだが、車の方が所要時間が短いのである。


 住吉警察署に到着して受け付けを済ませ、通された会議室の様なところで待っていたのは榊原(さかきばら)さんと丸山(まるやま)さん、そして昨日梨本(なしもと)を引き渡した警察官だった。


 梨本は始終反抗的で、取り調べは難航したそうだ。それでも梨本が(まく)し立てた慰謝料請求の理由は、ただの逆恨みだった。


 梨本が3人の女性を連れて「テリア」で食事をしていた時、大声で騒ぐわ暴れるわで、他のお客さまに(いちじる)しく迷惑となってしまい、お父さんがそれをやんわりと(たしな)めたそうなのだ。


 だがそれでも治まらず、何度も繰り返され、結局お店からの退去を(うなが)す事態に発展する。梨本はそれに恥をかかされたと感じたそうだ。


 どこの飲食店でも、お客さまには楽しく食事をして欲しいと思うものである。だが最低限のマナーやモラルというものはある。飲食店に限らず、それを欠けば弾き出されるのは道理である。


「あの物静かなシェフ、お父さんが言うくらいなんやから、よっぽどやったんやと思います。まぁ慰謝料やら何やらって店の前で大声出すぐらいなんやから、お察しってやつですわ」


 榊原さんはすっかりと呆れた口調である。守梨も同意見だし、きっと祐ちゃんもだろう。


「店のドアのガラス、あれ割ったんも梨本でした」


「あ、そうやったんですか?」


 実は守梨は、昨日の顛末(てんまつ)のお陰で、ガラスの一件のことがすっ飛んでしまっていた。梨本が連行されたことで安堵したのだが、実はまだ安心できないことを失念していたのである。玄関にチェーンを掛けるのはすっかり癖になったのだが。


「あらかじめ恐怖を与えることで、相手を、この場合はお嬢さんを御しやすくしようとしたと。梨本はチンピラです。あまり言えんのですけど、ルートがありましてね、シェフご夫妻が亡くなったこと、それから家にはお嬢さんおひとりで住んではることを知って、それやったら行けるて思ったんでしょう。仕返しを狙っとったんかも知れません」


「そうなんですか……」


 お父さんに(とが)められたのがいつのことなのかは判らない。だが両親が逝去(せいきょ)しておよそ4ヶ月。少なくともそれ以上、恨みを(つの)っていたのか。不当な感情なわけだが、された方は忘れないとも言う。特に梨本は粘着質そうだから、相当だったのだろう。


「それにしても原口(はらぐち)くん」


「はい」


「昨日はほんまにはらはらしましたわ。梨本を(あお)る様なこと言うて」


 そうだ。それは守梨も横で見ていて、本当にどきどきした。警察官である榊原さんご夫妻が後ろにいてくれたとは言え、危なかった。実際守梨たちは襲い掛かられかけたのだから。お父さんが守ってくれなければ、祐ちゃんが怪我をしていた。


「ああ、あれで梨本が殴るでもしてくれたら、話が早いと思いまして。そしたら暴行罪とかで逮捕できるやろかって」


 祐ちゃんのしれっとしたせりふに、榊原さんは「はぁー」と大きく息を吐く。呆れている様な、少し非難する様な。だが榊原さんの声は言い含める様に優しかった。


「そんなん、素人さんがやったらあきません。僕ら警察官でもやりませんよ。逆上したら危険ですからね。これからこんなこと無い方がもちろんええんですけど、万が一があったら、もうほんまに止めてくださいね。自分の身を守ることを優先してください」


「分かりました。すいませんでした」


 祐ちゃんは殊勝(しゅしょう)に頭を下げた。


 榊原さんでは無いが、守梨も本当にそう思う。祐ちゃんはこれから「テリア」の料理人になるのである。守梨とともに歩んでもらうのだ。自分を大事にしてもらわなければ。


 もう大事な何かを失うのは、まっぴらである。




 明日から、また守梨と祐ちゃんは「テリア」再開のために励む。懸念ごとは解決したのだから、心置きなく打ち込むことができる。


 守梨のセミナーも折り返しである。人脈を広げつつ、学ぶべきこともまだまだある。ビストロでの修行を兼ねたアルバイトだって続けている。祐ちゃんも納得できていない部分を突き詰めるのだろう。


 祐ちゃんとともにあれる安心感、そして心強さ。それは守梨の励みになる。負けない様に頑張らなければ。守梨はあらためて強く思った。

ありがとうございました!( ̄∇ ̄*)

3章これにて終了です。

次章もお付き合いいただけましたら嬉しいです。

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