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2章 英雄の卵13

「領主様に会ってみたいって。そりゃ無理だろう」


「まあ、そうだよね」


 これが知っている人物なら、事態は簡単だったのだけれど、話が急に大きくなってしまった。まさか、衛兵をけしかけたのがこの町の領主とは。

 当然、僕はディマニウォールに来たのは初めて。領主に密告どころか、あった事もないそれは皆同じだろう。

 いや、どういうことだ。領主って。

 この町に暮らして居るフューメンならあるいは知り合い矢もしれないが。分からない。

 この街でフューメンの名前はそれなりに大きい。確かこの町に入った時もフューメンのことを衛兵が知っていた。街でも学者のことかと知られ、ちょっとした有名人ではある。

 ユマノに潜入してから、よく信頼を勝ち取ったのだろう。だからって、領主に直訴できる程か。僕みたいなよそ者にも会って話を聞いてくれる、なんて横紙破りな人ではないみたいだし。


「どうにかならないかな。ええっと」


 どういったものだろうか。素直に目的が言えるわけもなく。話を包装し拡大解釈して、その命令は怪しいだなんて言ってみても、それは領主を疑うのと同意義。咄嗟には良い訳が思いつかなかった。


「そう、もし下水道に居るのが吸血鬼だったとしたら、とっても危険だろう。はっきり言ってただの衛兵では太刀打ちできないと思う。闇の中では特にね。一体の化物を探しに行ったら最後、街全体が吸血鬼の国になったなんて笑い話にもならないよ」


 苦しい。

 あらをつつかれる前に逃げてしまおうか。

 胡散臭い顔の目を名一杯細めて僕を見る。

 僕の言葉は大層胡散臭かろう。


「一応俺たちは淫魔だと聞いているけどな。化物を見間違うだなんてよくある話だし、その可能性もあり得るか」


「そうだよ。きっとそう


「けどな。だからって領主様にも会えねえよ。俺だって無理だ。それにもし本当に吸血鬼だったとしても、これ以上出来る事はない。結局は森を見張り、下水道を捜索するしかないのさ」


 そうだろう。こんな戯言を実現しようだなんて。ただの衛兵には荷が重い。自分でどうにかするしかない。

 こんな事ならフューメンの書斎に忍び込む方がずっと簡単だった。

 本人に話を聞くか。書斎に忍び込むか。

 どうする。陽動?誘拐。目立つような事をしてはダメだ。僕たちはお尋ねもの。フューメンに頼んでみるか。しかし。

 険しい僕の顔を見て何を思ったのか。おじさんは、ふと思い出したかのように尋ねた。

 

「そうだ。お前、結構強いよな。あの吸血鬼を追い返すぐらいだし」


「そりゃ狩人をやっていたからね。弓の腕なら頼って貰っても構わないよ」


 けレド、今雑用をしている暇はないかもしれない。

 

「護衛はどうだ、対人の」


「経験はあるよ」


 つい昨日の事だけれど。

 嘘ではないし自信もある。

 いや、嘘だった。守っていたのは人ではなく化物だ。サキュバスの少女が2人。それに片方はファ人に対する悪意丸出しの。相手はグールと衛兵。人類の敵と言われても言い訳できないところだ。


「それなら、領主とは会えないだろうけれど、領主に近い人間には会えるかもしれないぜ」


 どういうわけか。事態は突然裏返った。

 僕にとってあまりに都合良い言葉だ。

 一番奥にある立派な机。その戸棚をまさぐると少しくたびれた紙束を取り出した。ここに送られた手紙をまとめて要るに違いない。その内の1つ、特徴的な封蝋で止められていたスクロールを手に取った。

 おじさんはその他よりも立派な手紙を広げ、机上にバーンと出したのだった。


『領主から衛兵への命令と言っても、何も領主が直接ここにやってきたわけではない。かくも当然、領主が其の足でトコトコ歩いてやってくるわけもなし。それは執事と私兵が持ってきた。

 その伝令は、下水道に化物が紛れ込んでいるという情報と、それを民に知られないよう排除しろというものだった。そりゃ一大事だ、私兵に対処させることでもないが、お国の援助を頼むほどでもない。果たしてそれを一体どこからそんな情報を仕入れたのだろうという疑問はあっても命令そのものには疑問なんて欠片もなかった。

 だが書簡は2つあった。

 1つは、化物から街を守る旨の命令。

 そしてもう一つ。これには大層扱いに困った。

 丁寧に折りたたまれ、封蝋で止められていたそれを開いたとき、目眩がするほどに。


【年若く、腕が立つものを寄越して欲しい。護衛としての任をこなすのに適した人を1名必要である。私よりも更に若く、化物にも負けない実力者が好ましい。それが美少年であれば尚】

 

 署名はシャルーン・ディマニ。

 つまりもう一つの便箋は領主の娘のものであった』

 

 良いね。賛否感想お持ちしております。

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