2章 プロローグ
2章
短いけど許して
1章をちょっと手直ししました。
「ポカ、早くしないと門がしまっちゃうよ」
「はーい。けど、姉ちゃんもう少し見て回ろう。今日は大きな奴が取れる気がするんだ」
「ハイハイ。でも暗くなっちゃうよ」
「分かった」
今日も森で薪を拾う。
薪と言っても、地面に落ちている枝を拾い集めるだけだ。木を倒してもちゃんと乾かさないと燃えにくいし煙るらしい。姉ちゃんに聞いた話だからよく分からないけれど,
お店で売っているような薪は、僕たちじゃ作れないみたいだった。
それでも食べ物を煮炊きするにも薪が必要だ。滅多に雪は降らないけれど、その前には枝を拾い集めて置かなきゃならない。
そうじゃないときっと凍えてしまう。
けど悪いことばかりじゃない。多めに拾えば買い取ってくれるし、山菜や、木の実を拾えば腹が膨れる。運が良いと小動物を捕まえられる事もある。
特にお金になるのがキノコだ。教会の司教が高値で買い取ってくれる。
今日は特に良いものが見つかる気がした。
日が傾き、沈むまではまだ時間があるけれど、今日は少し長居しすぎてしまったらしい。
木々に覆われた森は。薄暗く不気味だけれど、一瞬のうちに真っ暗闇になる。
「姉ちゃん」
返事はない。
ついさっきまで一緒に居たのに。気がつけば闇。
風が吹く度に、何か居るのではない香と錯覚する。
そして良くない予感は、恐怖へと変わる。
グルルルルルッ
複数のうなり声。
狼のものではない。狼よりも湿っていて、生臭く。残酷な音だ。
暗闇には魔が住む。
夜に町の外へ出てはいけない。そこには化物が居るからだ。
周囲を見渡しながら後ずさる。確かに居るのに、見つからない。恐怖は次第に膨れ上がり肌を覆い、震えが走る。
パキリ ッと。
足の裏から乾いた音が鳴り、それを合図に眼光が迫った。
籠を投げ捨てて走る。
町の方向は分かる。きっとこいつらも森の外へは出てこない。今はまだ夕暮れ時、森の外はまだ明るいはずだ。
ハア、ハア、ハア。
息が乱れる。
背後にある複数の音。獣の足音が次第に近づいてくる。振り返ることは出来ない。音だけが刻々と終わりを告げる。耳元で囁かれているような。化物の息遣いが恐怖を加速させる。まるで弄ばれているかのようにすら感じる。
ようやく明かりが見える。
体力も限界だ。
もし森の外でも襲われたら。そんな事は考えていられない。
ただ、生にしがみつくように。全てを吐き出す。
「グアアアアアアァ」
吠える。飛び、跳ね、駆ける。
獣のような生の咆哮を吐き出し、何もかもをかなぐりすてて前へ進む。
「はぁはぁ」
木々の隙間から見えた光。希望の光がようやく見えた。
光を手を伸ばし。
グルラララララ。
そして、引き戻された。
腕を噛みつかれ。森の中へと引きずられる。弄ばれていたかのようではない。まさしくこれは遊びだったのだ。弱者を一方的に狩る遊び。森に迷い込んだ愚か者を殺す。
キャチャチャチャチャ。ギャゲクカカ。
化物の笑いが木霊する。四方八方から聞こえるそれは、嘲り笑っていた。
絶望が押し寄せる。
体を引きずられる痛み。腕を貫く牙。遠のく空。
僕は諦め。そして目を閉じた。
パンッ。
顔が化物の体液で覆われる。
化物の脳天を貫く一矢。
すさまじい音だ。よほどの強弓なのだろう。
薪が爆ぜたような乾いた音が肉が弾けて散らばる度に聞こえてくる。
僕を引きずる化物をいとも簡単に破壊して、地面まで矢が貫通する。木に当たれば矢諸共砕けていた。
「コオオオオオオオオン」」
獣が吠える。
警戒しているのだろう。僕をおっていた時よりもよほど機敏に動き回る。
もう一つ矢が放たれ、化物の足を削り飛ばした。その攻撃は森の外、光の内から放たれたことを確認してだろうか、奴らはたちまちに逃げ帰った。
恐怖は過ぎ去る。
僕は絶望から生き残ったのだ。
「ポカ」
「運が良かったね。僕が通りがかって」
森の外には涙を流す姉と、小さな英雄がそこには居たのだった。
良いね。賛否感想お持ちしております。
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