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第5話「ラブコメヒロインが強引なのは、話を作るためです」

幼なじみの芽愛の転校から一か月、なんとなくやる気の出ない、梅雨のある日。主人公の高明は、芽愛からのとある提案を受けることになる。

「……雨、雨、雨」

 今日もまた、雨が降っている。

高明(こうめい)、帰ろう!」

 梅雨の金曜日、二年二組……つまりは僕のクラスの教室。芽愛(めい)が僕を呼んでいる。

「ほら、高明!」

 芽愛、フルネームは神楽坂(かぐらざか)・アースキン・芽愛。最近、英国から転校してきて再会した、僕の幼なじみ。

「私への扱い、流石に酷くない?」

 母親譲りの金色の長髪、蒼い眼、白い肌。日本人離れした外見だが、半分は日本人の血も入っている。

「……みんなに対して、同じ対応をしているつもりだよ」

「嘘、立英ちゃんにはそういうことできないでしょ?」

「……そんなことは」

 そもそも、そういう機会すら生まれないと思うんだけどな。

「いや、そんなことは良いんだった、早く帰ろうよ」

「……雨が止んでからにしないか?」

「天気予報で言ってたよ、一日中雨だって」

「……そんなものは見ていない」

「え! なんで見ないの?」

「……空を見ればわかるからだ」

「予報を見た方が良いと思うよ、先のことまでは分からないでしょー」

「……気が向いたらな」

「それで、帰らないの?」

「……」

「止むの待ってたら、明日になっちゃうよ」

「……それもいいかもな」

「いいから。帰るよ、ほら」

「……腕を引っ張るな」

 僕から帰ると言い出さないと、いつもこれだ。

「お二人さん、今日も仲良しだね」

 こいつは小村井(おむらい)、僕のクラスの男子の中心的存在。

「小村井君、茶化してる場合じゃないよー、高明、帰ろうとしないんだよ」

「神楽坂さんに甘えてるんだよ、こいつ」

「ちょっと待ってくれ、僕がいつ……」

「自明の理だぞー、高明」

「そんなこと……」

「まあ、確かに高明、私に甘えているのかもね」

「いや、そんなことは……」

「だったら自分で歩いてよー」

「……分かったよ」

 僕がこいつに甘えているわけがない。僕は、自分の意思を大事にしているだけだ。それを歪めているのが芽愛に他ならない。

「ほら、行くぞ……」

「はいはい。じゃあね、小村井君」

「はいよ、お幸せに」

 全く、いつものことだが、小村井は僕たちの関係をなんだと思っているんだ。既に何回繰り返しただろう、このやり取り。


ガラガラガラ……


「高明、傘は持ってるよね。朝、差してたし」

「……ああ」

「全く、止むまで待つなんて無茶苦茶だよ」

「……止んでいた方が濡れずに帰れるだろ、傘を差す必要もない」

「前提がおかしいんだよー、さっきも言ったけど」

 そんなことは百も承知である。

「でもまあ、止んでいた方が良いっていう発想は悪くないと思うけどね」

「……そうか」

「うん、そりゃ止んでいた方が良いに決まってるよ」

 全く、変に肯定されても返す言葉が無くなってしまう。

「……まだ、止んでないみたいだけどな」

 学校の中央玄関。それぞれ靴を履き替える。

「それは当たり前だよ、前提条件がおかしいんだから」

「……なんで梅雨なんてあるんだろうな」

「大自然の摂理だよ」

「……人間からしたら、たまったもんじゃないな」

「人間中心に世界できてるわけじゃないんだから、当たり前」


バサッ……


 嫌々、朝も差した傘を開く。本当なら傘なんて使いたくもないが、雨が止まないから仕方がない。

「本当に高明、傘が嫌いだよね」

「……好きになる理由がない」

「傘良いじゃん、可愛い傘だとテンション上がるし」

「……傘なんて、ビニール傘で構わない」

「身だしなみに無頓着だと、立英ちゃんに嫌われちゃうよ?」

「……なんでここで、初台さんの話になるんだ」

「立英ちゃんの話になると、特段食いつきが良いからだよ」

「……そんなことはない」

「ねえ高明」

「……なんだよ?」

「最近、立英ちゃんとお話してる?」

「……してない」

「まあ、そうだよねえ」

「……そもそも、接点がないだろ」

「接点なんて自分から作りに行くもんだよ」

「……接点を作りに行く理由がない」

「ああ言えばこう言う」

「……それはこっちのセリフだ」

「立英ちゃんと仲良くなりたくないの?」

「……仲良くなる理由がない」

「せっかく、先月の取材できっかけできたのに」

「……そんなものは知らない」

「私は、立英ちゃんと連絡先交換したけどね」

「……え?」

 いつの間にそんなことをしていたんだ。そんな素振りすら見せなかったが。

「あ、そうだ。高明とはそこまでメールしないし、そのままになってた……」

「……ん?」

「アドレス変えたの、連絡してなかったね」

「……変えたのか?」

「流石に、不味いと思って……」

「……僕の名前が入っているからか?」

「そう、朱苑(しゅおん)先輩とアドレス交換する時に、流石にどうかなあって思って……」

「……もしかして、知ってるのか?」

「何が?」

「……初台さんが」

「ううん、先輩と交換した後に変えたから、立英ちゃんは新しい方しか知らない」

「……先輩は知ってるんだな」

「うん、その時に気が付いたからね」

「……そうか」

 ……まあ、先輩になら良いか。

「やっぱり、立英ちゃんのことを気にしているんだね」

「……いや、そんなことは」

「あとで、新しいアドレス送るからね」

「……ああ」

「高明のアドレスに変わりは無いでしょ?」

「……ああ、大丈夫だ」

 こうもあっけなくアドレスを変えられてしまうと、なんだかな。いや、そもそも僕の名前が入っていたのがおかしいんだが。

「そうだ、ついでに立英ちゃんの連絡先も欲しい?」

「……いらない」

「本当?」

「……本当だ」

「まあ、くれって言われても絶対にあげないけど」

「……それなら、さっきの質問の意味がないじゃないか」

「やっぱり欲しいんでしょ?」

「……欲しくない」

「大丈夫、友達の個人情報を勝手に売り渡すような真似はしないから」

「……そもそも、欲しいなんて一言も言ってない」

「本当にいらないなら、そんなにムキにならないでしょ」

「……ムキになってない」

「ほら、ムキになってる」

「……もう知らん」

「欲しいなら、自分から貰いに行ってね」

「……欲しくないから、貰いに行くことは無い」

「まあ、今日はこれくらいにしておくか」

「……『今日は』ってなんだ」

「今日は諦めるって話」

「……明日以降も諦めてくれ」

「ううん、私は諦めないよ」

「全く……」

「明日やれば、上手くいくかもしれないからね」

「……そんな、一日二日で変わるわけがない」

「まあ、それはそうかもしれないね」

「……ああ」

「だけど、そうじゃないこともあり得るよ」

「……だとしても、可能性はかなり低いだろ」

「まあ、そうだけど」

「……なら、やるだけ無駄だろ」

「毎日継続することに、意味があるんだよ」

「……疲れるだけだろ、変わるわけないのに」

「変わるわけないからこそ、やる意味があるんだよ」

「……意味が分からない」

「今はそれでもいいよ、私は毎日、種を蒔くだけだから」

「……なんで種蒔きの話になるんだ」

「そういうものなんだよ」

「……どういうもんなんだよ」

「多分、今の高明には分からないと思うよ」

「……なんだか馬鹿にされている気分になる」

「馬鹿にはしてないよ、一ミリたりとも悪意はない。そういう風にできているってだけ」

「……やっぱり訳が分からない」

「だから良いよ、今はそれで」

「……納得はできないな」

「そういうもんだよ、仕方ない」

「……でもな」

「焦ったらダメなんだよ、きっと」

「……別に焦ってない」

「まあ、それならそれでいいけど」

「……良くないだろ」

「ほら、信号変わったよ」

「……ああ」

 芽愛のせいで頭の中がごっちゃごちゃだ。本当に意味が分からない。

「雨で滑りやすいから、気を付けてね。車道で転んだら大変だから」

「……子供扱いするな」

「滑らないなら何でもいいよ、なんて言ってもらっても構わない」

「全く……」

 ここで滑ったら恥ずかしいので、足元に意識を傾ける。


ピチャ……ピチャ……ピチャ……


「よし、無事に渡れたね」

「……横断歩道ぐらいで大げさだ」

「毎日何人かは、交通事故で亡くなってるんだよ?」

「……それくらい知ってる」

「じゃあ、気を付けないと」

「……そこまで気を付ける必要があるのかって言いたいんだ」

「まあ、そこまで気を付ける必要はないと思う。事故に遭うときは遭うもんだし」

「ならやっぱり……」

「今日はもう、この話はしないよ」

「……交通事故の話なんて、これが初めてだろ?」

「まあ、高明からしたらそうなるか」

「……どういうことだ?」

「ところでさ、高明」

「……まだ話の途中だ」

「明日予定空いてる?」

「……おい」

「空いてる?」

 ……意地でも、僕の話を聞く気がないらしい。

「……予定?」

「うん、予定」

「……空いてない」

「空いてるって聞いてるよ、(あん)ちゃんには」

 杏、僕の妹の中学三年生。やたらと裏で芽愛と通じている。

「……それなら、僕に聞く必要ないだろ」

「それでも、本人に聞くプロセスは必要だと思って」

「……予定がないことを知ってるなら、意味がない質問だろ」

「やっぱり予定ないんだね」

「……ハメたな」

「ううん、ハメたわけじゃない。杏ちゃん経由で、予定がないことを聞いていたのは本当。高明が勝手に自爆しただけ」

「……それで、何の用があるんだ?」

「物分かりがよろしい」

「……既定路線だろ?」

「なんのことやら」

「……とぼけるな」

「別にとぼけてないよ」

 その得意顔、自白しているようなものだぞ。

「……それで、何の用なんだ」

「フライパン」

「……フライパン?」

「フライパンを一緒に買いに行って欲しいんだって」

「……誰と?」

「杏ちゃんと私」

「……なぜ?」

「フライパンが錆びちゃったんだってさ、知ってるかもしれないけど」

「……それで、なんで僕に声がかかるんだ?」

「ついでに買いたいものがあるんだって」

「……つまりは荷物持ちか」

「そういうことだね」

「……そもそもなんで、芽愛からそれを伝えてくるんだ」

「帰ったら直接聞いてみて」

「……芽愛が一緒に来る理由も分からない」

「杏ちゃんの要望だよ」

「……杏の?」

「うん。相談しながら、買う物決めたいんだって」

「……なるほどな」

「それで、来てくれる?」

「……断れるなら断る」

「良いよ、高明の権利は認める」

「……本当か?」

「でも私は、『うん』と言うまで引き下がらない、という権利を行使する」

「全く……」

「さあ、どうする?」

「……そういえば、天気は大丈夫なのか?」

「今日の夜には止むらしいよ、晴れだって」

「……そうか」

「じゃあ、OK?」

「……不承不承のOK」

「交渉成立だね!」

「……こんなものは交渉とは呼ばない」

「立派な交渉だよー」

「……そんなわけはない」

「まあ、細かいことは良いじゃない」

 ……いや、細かくはないだろ。

「……まあ、良いよ。それで、明日の何時に出かけるんだ」

「午前十一時頃だよ。私が高明の家に行くから、そこから出発」

「……そうか」

「うん、それでみんなでランチ食べてから行く感じ」

「……分かった」

「じゃあ、そういうことでよろしく」

「……了解」

 そんな感じで、芽愛とは別れた。


       ※ ※ ※


 自宅。

「お兄ちゃん、おかえりなさい」

「……ただいま」

 リビングに入ると、妹の杏がソファに寝っ転がっていた。

「話聞いた?」

「……なんの話だ」

「知らないふりしなくても大丈夫だよ」

「……本当に知らない」

「そんなわけないよ、今さっき芽愛ちゃんから連絡貰ったもん」

「……それなら、僕に聞く必要ないだろ」

「それでも、本人に聞くことは必要でしょ」

 なんだろう、このデジャヴ。

「……フライパンだろ」

 さっきのやり取りを繰り返すのは嫌だからな。

「そうそう」

「……そもそも、なんで芽愛を通して耳に入るんだ」

「芽愛ちゃん通した方が楽なんだよ」

「……直接言えば良いじゃないか」

「嫌だよ、お兄ちゃん面倒だもん」

 僕のことを何だと思っているんだ、我が妹は。

「……それだと、芽愛に面倒がかかるんじゃないのか?」

「それは大丈夫、芽愛ちゃんはお兄ちゃんの扱いに慣れてるから」

「……家族のお前の方が慣れてると思うが」

「そんなことないよ、嫌々やってるところはあるんだよ」

「……」

「芽愛ちゃんが戻ってきて良かったよ、負担が減ったから」

 兄に対して、面と向かってこれを言うか。

「……明日、十一時頃だったな」

「うん、よろしく。お昼ご飯のことはお母さんに伝えてあるから」

「……分かった」

 着替えがまだなので、とりあえず自分の部屋に戻る。


       ※ ※ ※


「……相変わらずだな、野党は」

 夕食を終え、入浴後の自室。僕はいつも通り、スマホでSNSを見ていた。

「……またブーメランやってるんだな、全く」

 とある野党議員のアカウント。自身が疑惑まみれなのに、いつも通りに政権の批判をしている。全く、これだから政権交代が起きないんだ。

「……小腹が減ったな、なんか探してくるか」


       ※ ※ ※


 リビングの冷蔵庫を覗いてみたが、目ぼしいものがなかった。

「……買ってくるか」

 コンビニはちょっと高いからな、少し離れた小型スーパーに行こう。

「お兄ちゃん、どうしたの? おなか減ったの?」

 杏が廊下の方から入ってきた。

「……なんでそう思うんだ」

「お兄ちゃんがこの時間にリビング来るとしたら、おなか減ったと考えるのが自然だよ」

 全く、僕のことをなんだと……

「……なんか欲しいものあるか?」

「いらない、この時間に食べると健康に良くないから」

「……わかった」

「お兄ちゃんも控えた方が良いよ」

「……そんなに沢山食べるわけじゃない」

「間食自体が良くないんだよ」

「……それでも、なにか食べたいんだ」

「歯磨きし直すの、面倒じゃない?」

「……そんなことはない」

「まあ、お兄ちゃんの好きにしたら」

「……言われなくてもそうするよ」

「雨は止んだみたいだけど、気を付けてね」

「……何に気を付けろと言うんだ」

「まだ地面が滑りやすいだろうから、転ばないようにってこと」

 またも既視感しかないやり取りだ。意地でも繰り返すわけにはいかない。

「……分かったよ」

「じゃあ、行ってらっしゃい」

「……」

 僕はサンダルを履いて、家を出た。


       ※ ※ ※


 買い物帰りの暗い道を歩く。

「……ん?」

 無線のイヤホンのバッテリーが残り少ないようだ。

「……仕方ない、外して帰るか」

 ちょうど、好きなアニソンのサビの部分が流れていたが、途中で電源が切れる方がムカつくので、自ら電源を切る。

「……雲がかかっているのか」

 我が町のシンボルであるプラネットタワーだが、雲のせいでよく見えない。

「……まあいいか、転ばないようにしないとな」

 転んだら笑いものだ。誰かに見られていなくても、自分の中で許せない。

「……明日、面倒くさいなあ」

 全く、なんで僕が付き合わないといけないんだ。無理やりでも予定を入れておけばよかったかな。

「……はあ」

 意味のない話か、避けられる道はなかったと諦めよう。こんなことに気を取られる方がイライラする。

「ちょっと散歩してから帰るか……」

 あえて寄り道をして、自宅を目指すことにした。


       ※ ※ ※


「おはよう! 高明!」

「……ああ」

 土曜日の早朝、自宅の玄関。お節介な声が寝起きの頭に響く。

「元気ないなあ」

「……こんな早朝に元気があるわけないだろ」

「もう十一時だよ?」

「……早朝じゃないか」

「どうせまた、夜更かししたんでしょ」

「……三時まで起きていただけだ」 

「それを世間では夜更かしって言うんだよ」

「……世間の定義なんて、僕には関係ない」

「健康に良くないよ、朝ご飯だって食べてないでしょ」

「……さっき起きたからな」

「やっぱり、朝ごはんは食べないと」

「……平日には食べているじゃないか」

「それはそれ、これはこれ」

「……平日は言う通りにしているだろ、だったら休日くらいは良いじゃないか」

「……分かった、今日は説得を諦めることにした」

「……永遠に諦めてもらえるとありがたい」

「私が諦めると思う?」

「……思わない」

「じゃあ、覚悟してね」

「……疲れるからやめてくれ」

「芽愛ちゃん、お待たせー」

 杏は支度を終えたようだ。

「大丈夫、高明と話していたから」

「なんの話?」

「夜更かしの話―」

「ああ……」

 やっぱりな、という顔をする我が妹。

「ねえ高明、今日はもう説得する気はないけどさ、いつもそんな遅くまで何をしてるの?」

「……言う必要性がない」

「どうせ、スマホとかいじってるんでしょ」

 何故分かる。話さないようにしているのに。

「……どういう根拠だ」

「高明が、生産的なことで夜更かしするとは思わない」

 僕は何だと思われているんだ。

「夜更かししてまで、勉強やクリエイティブなこととかしないでしょ」

「……するかもしれないじゃないか」

「高明に限って、それは無いと思う」

「……どうしてだ?」

「高明は、楽なことしかやろうとしないから」

「……部活では、そこそこ働いているじゃないか」

「あれは表面的な振る舞いでしょ、高明は本質的には頑張らないんだよ」

「……僕の何が分かるんだ」

「悪気はないよ、改めろとも言うつもりもない」

「……悪気がないならいいのか」

「悪気がないのに悪いことになるの? 私は状態をただ述べているだけ」

「……普通の人間にそれ言ったら、絶交されるぞ?」

「高明は絶交しないでしょ?」

「……なぜそう思うんだ?」

「高明は絶交する労力すら惜しむんだよ、そこまでして絶交する方が損だと考える」

 こいつ、僕より僕の心理を分かっているんじゃないだろうか……

「間違ってる?」

「……間違ってない」

「二人とも、いつまでやってるの。そろそろ行こうよ」

「そうだね。待たせてごめんね」

「ううん、大丈夫」

「……僕も合わせて言われるのは心外だ、僕は被害者側なんだから」

「はいはい、分かったから行くよ」

 この扱いである。


ガチャ……


 ……今日は晴れてるな。

「駅はあっちの方角だね」

「うん。それにしても杏ちゃん、今日の洋服可愛いね」

「ありがと、雑誌に載ってるのを参考にしてみたの」

「高明も見習った方が良いんじゃない?」

「……なぜ?」

「立英ちゃんと仲良くなるために」

「その人って、生徒会の人だよね」

「そうだよ、写真あるよ」

「……なぜ、そんなものを持っているんだ」

「この前遊びに行ったときに、一緒に撮ったんだよ」

 どうして、こんなに早く仲良くなれるんだ……

「可愛い人だね」

「でしょー」

「うん、お兄ちゃんが好きそうな感じ」

「やっぱそうだよねー」

「……二人して不穏な話をするな」

「でも好みでしょ、お兄ちゃん」

「……どうしてそう思うんだ?」

「髪型」

 なんで分かるんだよ。

「ああ、高明言ってたよね、タイプだって」

「……なるほど、芽愛から洩れたのか」

「ううん、このことについては私は何にも言ってない」

「……じゃあ、なんで分かるんだ」

「お兄ちゃんが持ってるえっちな本って、セミロングの娘が多いし」

「……なぜ在り処を知っている」

「掃除してるときに目に入るんだよ、見たくもないけど」

「……不法侵入だ」

「お母さんの許可は取ってます。お兄ちゃん放っておくと、部屋に埃がたまってるし」

「……道理で、たまに物の配置が変わっているわけだ」

「感謝されこそすれ、文句を言われることはやってないよ」

「……本人に無許可で、それをやるか」

「言ったらどうせ断るでしょ、『余計なことをするな』って」

「ふふっ、確かに高明言いそう」

「もう、大変なんだよ。私がやる義理はないのに」

「よしよし、杏ちゃん偉い」

 芽愛は杏の頭を撫でる。

「お兄ちゃん言ってもどうせやらないし、仕方ないんだけどさ」

「……言ったらやるかもしれないだろ?」

「お兄ちゃん、それは無いと断言できるよ」

「妹に掃除させるようじゃダメだよ、高明」

「……僕の部屋なんだから好きにさせてくれ」

「えっちな本見られたくないでしょ?」

「……掃除をしなければいいだけだろ」

「わざわざしてくれてるんだから、それはないよ。普通、兄の部屋を掃除する殊勝な妹なんていないんだからね」

 そこまでのことなら、わざわざしなければいいのに。

「高明が掃除しないなら、私が掃除しに行くからね。高明の好みもちょっと気になるところだし」

「……それはやめてくれ」

「じゃあ掃除をしなさい、少しずつでいいから」

「……分かったよ」

 芽愛にまで、僕の性癖の結晶を見られるわけにはいかない。

「やっぱ芽愛ちゃんは頼りになるね、ありがたいよ」

「どういたしまして、他にも何かあったら言うんだよ」

「ありがとう、気付いたら相談させてもらうね」

 ……どうにか抜けられないのか、この包囲網。

「話変わるけど、ごはん、どこで食べようか?」

「うーん……高明、おなか減ってる?」

「……ああ」

「朝ごはん食べてないもんね」

「じゃあ、電車乗る前に食べちゃおうか」

「そうだね。うーん、高明、なにか食べたいものある?」

「……そういうお前はどうなんだ」

「何でもいい」

「私も何でもいいよ、芽愛ちゃん」

「というわけで、高明が決めて」

「……ハンバーグ」

「ふふっ」

「……なんだよ」

「いや、昔から変わってないんだなって思って」

「……昔、そんなにハンバーグ食べてたか?」

「家族同士で食事行くとき、大抵ハンバーグだったでしょ、エビフライ付きの」

「……よくそんなの覚えてるな」

「確かにお兄ちゃん、いつもハンバーグばかりだね」

「……そうか?」

「家でハンバーグ出るときも、ご飯の減りが早いし」

「ふふっ、高明はハンバーグが好きなんだね」

「……悪意のある言い方だな」

「気のせいだよ」

「……そんなわけはない」

「ううん、ちょっと子供っぽいなって思うだけ」

「……それを悪意と言っているんだ」

「悪意じゃないよ、状態」

「いや……」

「じゃあ、あのファミレスに行こうか、お兄ちゃん」

「……ああ、そうだな」

 本当、抗う方が面倒だ。

「芽愛ちゃんもそれでいい?」

「いいよ」

「じゃあ、あそこで」

「そういえばファミレス自体、帰国してから来てなかったかも」

「そっか」

「うん、ちょっと楽しみかも」

「……たかがファミレスだろ」

「ハンバーグばかり食べてる人には言われたくない」

 ……ハンバーグに罪はないはずだ。

「じゃあ入ろっか、芽愛ちゃん」

「そだね」

 ……意外なことに、このファミレスには入ったことがないかもしれない。いつも目に入るんだけどな。

「そこまで混んでないみたいだね」

「まだお昼前だもんね、ちょうどいい時間かも」

「ほら高明、入るよ」

「……言われなくても入るよ」


ガラガラガラ……


「いらっしゃいませー、何名様……あら」

「あー! 朱苑先輩じゃないですかー、こんにちはー」

「こんにちは、芽愛ちゃん」

「こんにちはー。もしかして、このファミレスでアルバイトしてるんですか?」

「そうよ、休日はここで働いてるわ」

「先輩、働き者ですね」

「そんなことないわよ」

「あ、こちら杏ちゃんです」

「ああ、なるほどね、こちらがあの杏さんか」

「はい、以前お話ししましたよね」

「ええ、取材で話を聞かせて貰ったものね」

「あれ、取材なんてしましたっけ?」

「ごめん、こっちの話よ」

「あ、はい……」

 朱苑先輩、取材畑から離れたはずだけど……

「私は王子(おうじ)朱苑。二人の部活動の先輩をしているわ、よろしくお願いします」

 ……まあ、良いか。

「よろしくお願いします! 西ヶ原(にしがはら)杏と申します!」

「よろしく!」

「……はい!」

「高明君も、こんにちは」

「……はい、こんにちは」

 ……しかし、ここにいるとは思わなかったな。

「両手に花ね、高明君」

「え、花なんて持ってませんよ?」

「高明君、それ本気で言ってるの?」

「……だって、花なんて持ってませんし」

「なるほど、意味自体が分かっていないのね」

「……いや、まあ、はい」

 花なんて、どこにあるんだろう。

「ということで二人とも、高明君には悪意はないみたいよ」

「まあ、高明ですし、仕方ないですよ」

「流石に呆れたよ、お兄ちゃん……」

 え、だって花なんてないよね?

「ふふっ、面子を潰しちゃったみたいね」

「……いつものことですよ」

「辞書で調べておくと良いわ、高明君」

「あ、はい……」

 まあそうだな、意味は気になるところだ。

「仕事中だし、立ち話はこれくらいで。席、ご案内します」

「三名です! よろしくお願いします!」

「はい、ご案内します。こちらへどうぞ」

 朱苑先輩に、窓側の四人掛けの席に案内される。

「メニューをお持ちします」

「よろしくお願いしまーす」

 先輩は店の奥の方へ向かう。

「芽愛ちゃん、どう座ろっか」

「高明どうする?」

「……僕に聞くな」

「誰と隣に座りたいかなあって思ったんだよ」

「……僕は一人で構わない」

 奥側の席に一人で座る。

「じゃあ、私たちはこっちでいいか」

「そうだね」

 向かいの席に芽愛が入ってくる。それに続いて、杏も座る。

「荷物こっちに置けるよ、杏ちゃん」

「あ、じゃあお願い」

「はーい」

 席の奥にスペースがあるので、二人分の荷物がそこに置かれる。

「メニューとお冷です」

 机の上に、三人分のお冷とメニューが置かれる。

「ありがとうございます! 先輩」

「まあ仕事だからね、注文決まったらパネルからどうぞ」

「へえ、パネル式なんですね、ハイテク」

「業務効率化の一環ね、楽なものよ」

 そう言い残して、先輩は店の奥に戻っていく。

「ねえ高明、本気で意味わからなかったの?」

「……花がどうこうってやつか?」

「うん、それ」

「……分からないな、あとで調べるよ」

「お兄ちゃん、意味が分かって言ってたなら、大変だったよ」

「……そうなんだな」

「ちゃんと調べておくんだよ」

「……ああ」

 ……知ってるなら、ここで教えてくれても良いんじゃないか?

「王子先輩、なんかカッコいい人だね」

「そうでしょー」

「短い黒髪のセミロングで、名字の通り、王子様みたいな感じ」

「ふふっ、そうかもしれないね」

「ウェイトレス姿も良かったけど、紳士服なんかも似合いそう」

「ああ、確かにそうかも」

 そうそう、朱苑先輩はカッコよくて綺麗な人なんだ。

「高明はどう思う?」

「……何食べるか決めよう」

「釣れないなあ、どうせ高明はハンバーグでしょ」

「……ハンバーグにも、たくさん種類があるんだぞ?」

「そういう問題?」

「……大事なことだ」

「で、朱苑先輩のことどう思う?」

「……覚えていたか」

「そりゃそうでしょ、明らかな論点ずらしだし」

「……そんなに気にすることじゃないだろ」

「そんなに気にすることじゃないなら、答えたらいいじゃん」

 ……ここは損切りだな。

「……似合ってるんじゃないか」

「だよねー」

 我ながら、言わされてる感が凄いな。

「……それで、どうするんだ?」

「なにが?」

「……何食べるか」

「高明は決まったの?」

「……もうカートに入ってるよ」

「仕事が早いね」

 芽愛に注文パネルを渡す。

「ありがと。さて、何にしようかなー。杏ちゃんはどうする?」

「私はパスタかなあ」

「パスタかー、いいね。私もパスタにしようかな」

「なんのパスタがあるの?」

「ちょっと待ってね……こんな感じ」

 芽愛は、パネルを杏の方に向ける。

「メニューが充実してるね、迷っちゃうなあ」

「ほんとだね、どうしようか」

「このアンチョビのパスタとか、美味しそうじゃない?」

「確かに、良い感じだね。私これにしようかな」

「じゃあ、私もこれにするよ」

「わかった、サラダとかいる?」

「うん、欲しい」

「じゃあセットにするね、ドリンクバーは?」

「つけてー」

「はーい」

 芽愛は注文パネルを操作していく。

「ふふっ、やっぱりエビフライ付きのハンバーグなんだね」

「……悪いか?」

「別に悪くないよ、食べたいものを食べるのが大事だと思う」

「……そうか」

「高明はセットじゃないんだね、ライスだけ」

「……セット付けると値段が高いからな」

「野菜は食べた方が良いよ」

「……食べたいもの食べた方が良いんだろ?」

「健康という前提条件は付くと思うよ」

「……ああ言えばこう言う」

「それはこっちの台詞。とりあえず、サラダセットにしておくね」

「……許可してないぞ」

「お兄ちゃん、野菜不足は将来の健康に響くんだよ」

 敵方に増援来る。

「……わかったよ、サラダセットでいい」

「高明偉い!」

「……わざとらしいぞ」

「それは考えすぎ」

「……そんなことはない」

「よし、注文完了!」

 ……聞いちゃいない。

「楽しみだなあ、アンチョビのパスタ」

「だねー」

 パスタなんかに、そんなに違いがあるんだろうか。

「今日、木戸町のショッピングモールで良いんだよね?」

「そうだよー、浅沼よりは品揃えあると思うし」

 木戸町、この辺りでは、浅沼に並ぶ大きな街だ。

「洋服を選びたいんだったよね」

「そうだよー、そろそろ新しい服欲しいなあって思って」

 靴なんかに、そんなに違いがあるんだろうか。履ければ問題ないじゃないか。

「良いの見つかるといいね」

「そうだねー」

「フライパンは後に買った方が良いかな、重いし」

「そこはお兄ちゃん次第じゃないかな」

「運動のために、先に持たせた方が良いかもよ」

「それはあるかも、高明ってそこまで運動しないし」

「放っておくと、怠けるもんね」

「フライパンを先にしようか」

「そうだね」

「……僕の意思は関係ないんだな」

「意見があれば耳を傾けるよ、私は」

「……それで、却下されるんだろ?」

「それは結果論だよ。高明の交渉次第では、上手くいくかもよ」

「……止めておくよ、説き伏せられる自信がないから」

「じゃあ、先にフライパンってことで」

「……分かった」

 ここで交渉して労力使うのも、フライパンを持つことで労力使うのも、大差はなさそうだ。

「あ、ドリンク忘れてた。杏ちゃん何が良い?」

「私も一緒に行くよ」

「そだね、じゃあ行こう」

 二人は席を立ち、ドリンクバーへと向かった。

「……ドリンクバーでなんかしら飲むのって、健康的にどうなんだろうな」


ゴクッ……ゴクッ……


 水が旨い。水が旨い店の料理は基本的にハズレがないので、期待が持てる。

「お待たせしました、アンチョビのパスタのサラダセット、お二つです」

「……あ、二人はドリンクバーに行ってるので、置いておいてください」

「分かりました。高明君はドリンクバーじゃないのね」

「はい、僕は水です……」

「売上的には、ドリンクバー頼んでくれた方が良かったな」

 ……気を使った方が良かったかな?

「まあいいわ。私時給だから、そこまで関係ないし」

 よし、問題なかったな。

「ハンバーグとエビフライは、もう少し待ってね」

「分かりました。よろしくお願いします……」

「はーい」

 朱苑先輩は二人分の料理を置き終えて、席を離れる。

「……しかし不思議な気分だな、朱苑先輩が店員やってるなんて」

 確かに、紳士服の方が似合いそうだな。

「あ、もう来てるよ、杏ちゃん」

「本当だね」

 ドリンクを持った二人が戻ってくる。

「美味しそうだね」

「そうだねー」

「……お先、どうぞ」

 ……出来立てが美味しいだろうからな。

「じゃあ、お言葉に甘えるね」

「私も先に食べちゃうね、お兄ちゃん」

「……どうぞ」

 二人は手を合わせる。


「「いただきます」」


「まずはサラダから食べよっと」

「サラダから食べた方が健康に良いもんね」

 ……もはや健康マニアの域だな。なんだろう、若さというものを感じない。

「うん、美味しい。オニオンドレッシングが良い感じ」

「さっぱりしてて良いよね」

 今思えば、サラダセットを押し込まれたのは正解だったかもしれないな。人が食べてるのを見ていると食べたくなってくる。

「高明のまだかな」

「……そろそろ、来るんじゃないか?」

「お待たせしました、ハンバーグとエビフライ、サラダセットです」

「グッドタイミングですね! 朱苑先輩!」

「あら、そうなの?」

「はい! そろそろかなあって話していたんですよ」

「ふふっ、ご期待に添えたようで、何よりです」

 目の前に、料理が置かれていく。鉄板の上でジュージューするハンバーグ、タルタルのドレスを纏うエビフライ。見ているだけでワクワクする組み合わせだな。

「ご注文の品、以上でよろしいでしょうか」

「はーい、大丈夫です」

「では、ごゆっくりどうぞ」

「はい! ありがとうございます!」

 お盆を抱えて、先輩は調理場の方に戻る。

「よし、それじゃあハンバーグを……」

「先にサラダだよ、高明」

「……」

「先にサラダだよ、お兄ちゃん」

「……よし、サラダから頂きます」

 せっかくのご馳走の前に、無駄な体力を消耗したくない。


シャキッ……シャキッ……


「美味しいでしょ、サラダ」

「……そう、だな」

 新鮮シャキシャキの野菜、それをコーティングするオニオンドレッシング。開放感のある味わいといったところか。

「……ハンバーグ、食べてもいいだろ?」

 何故に芽愛に許可を貰わないといけないのかは解せないが、最短でハンバーグを食べるためとなれば、話は別である。

「よし、オッケー」

「……どうも」

 ナイフによって切り開かれる肉塊、絡みつく和風ソース、見ているだけで胸躍るビジュアルである。


もぐ……もぐ……


「ハンバーグ、どう?」

「……旨い」

「ふふ、良かったね。美味しいもの食べられて」

「……ああ」

 子供のような扱いは気に食わないが、今の僕は機嫌がいいので、それくらいはなんてことはない。さて、次はエビフライ。

「……」

 まずは、タルタルソースを万遍なく塗りたくる。ソースが頭の方に偏っているまま食べてしまうと、尻尾の頃には味が無くなってしまうからだ。


ぐいっ……


 そして、エビフライの真ん中あたりにフォークをぶっ刺す。尻尾の方に刺してしまうと、身の重みで中折れしてしまうことがあるからだ。


もぐ……もぐ……


「美味しい?」

「……美味しい」

「ふふっ、それは良かった」

 またしても子供扱い。僕をなんだと思っているのだろうか。しかし今は、そんなのは些細なこと。この愉悦の瞬間を、ただ楽しむのみ。

「高明って、食事の時が一番楽しそうだよね」

「……食事だけは僕を裏切らないからな」

「私だって、高明を裏切らないよ」

「……いつも、とやかく言ってくるじゃないか」

「それをしなくなったら、それこそ裏切りになっちゃうよ」

「……僕は頼んだ覚えがない」

「それでもやるよ」

「……いい迷惑だな」

「高明のためにはやってないし、高明が迷惑だと思うこともあるのは知ってる」

「……なんで、迷惑だと分かっていてやるのか、僕には分からない」

「私がやりたいからやるんだよ」

「……よく分からないな」

「本当にわからないの? お兄ちゃん」

「……全く」

「はあ、やっぱりお兄ちゃんはお兄ちゃんだね」

 我が妹よ、逆に何故分かるんだ。

「まあ、高明が美味しく食べてるならそれでいいよ」

 相変わらず、言っていることが理解できないが、食事を再開することにした。


       ※ ※ ※


「はあ、美味しかったぁ」

 空になった皿の前で、芽愛はお腹を擦る。

「アンチョビは間違いなかったね、リピートするかも」

「私もー、また食べに来ようね」

 ……そんなに美味しかったのか。

「高明、エビの尻尾まで食べるんだね」

「……尻尾までがエビフライだからな」

「エコだね」

「……単純に美味しいから食べるだけだ」

「まあ、良いことかもね」

「お三方、お味はどうでしたか?」

「美味しかったです!」

 朱苑先輩は、開いた皿をお盆に乗せていく。

「それはよかったです。あ、時間はまだ大丈夫?」

「……え、あ、はい」

「デザート用意するから、少しだけ時間をちょうだい」

「え? 頼んでませんよ」

「サービスよ。後輩だって話したら、店長からサービスしなさいって言われてね」

「太っ腹ですね! 店長さん」

「まあ、そうかもね」

「店長さんにお礼したいです!」

「それは大丈夫よ。店長、忙しいと思うし」

「そういうことであれば、心の中でお礼を言って帰ります!」

「ふふっ、店長も喜ぶと思うわ。じゃあ、少し待ってね」

「はい!」

 先輩は、食器を乗せたお盆を持って、厨房の方に戻っていく。

「店長さん、男前だね」

「……男性じゃないかもしれないぞ」

「まあ、それもそうだね」

「なんのデザートなんだろうね、芽愛ちゃん」

「なんだろうねー。まあ、この気持ちだけで十分幸せだけどね」

 気持ちは分からなくはないが、少し大げさには見える。

「はい、お待たせしました。食後のデザートです」

「わー、美味しそう。コーヒーゼリーですね」

「そうよ、これ美味しいのよ」

 ガラスの容器に入ったコーヒーゼリーが、机の上に三人分置かれる。

「生クリームが良い感じですね!」

「そこがポイントね、少し苦みのあるコーヒーゼリーと、まろやかな生クリーム。この組み合わせが良いバランスなのよ」

「おお、なんか深いですね!」

「ふふっ。お二人は、コーヒーゼリー大丈夫?」

「はい! コーヒーゼリー大好きです!」

「それは良かったわ。高明君はどう?」

「……僕も好きですよ」

「良かった。それじゃあ、ごゆっくり」

 空のトレイをもって、先輩はまた戻る。

「本当に美味しそう!」

「だねー」

「コーヒーゼリー……」

「……芽愛、どうかしたか?」

「コーヒーゼリーと、生クリームだね」

「……それがどうかしたか?」

「いや、ちょっと……」

「ん?」

「ごめん、何でもないよ」

「……ああ」

 ……なんの変哲もない、コーヒーゼリーなんだけどな。


       ※ ※ ※


 机の上には、空になったガラス容器が三つ。

「はぁ、美味しかった。素晴らしい食後だった!」

「そうだねー」

「じゃあ、そろそろ帰ろうか」

「待って芽愛ちゃん、これから買い物するんだよ」

「あ、ごめん。幸せすぎて忘れていたよ」

「もう、芽愛ちゃんったら」

「ごめんごめん」

「……僕はこのまま帰るのでもいいけどな」

「いや、買い物行こう」

 杏め、余計なことを言ったものだ。

「芽愛ちゃん、鞄取ってもらえる?」

「はい、どうぞ」

「ありがとう」

 杏は受け取った鞄の中から、封筒を取り出す。

「お兄ちゃんと私の分は、お母さんから預かってるから、芽愛ちゃん、千円だけ貰える?」

「分かった、ちょっと待ってね」

 芽愛は鞄から財布を取り出す。

「はい、どうぞ」

「ありがと。私、まとめて払ってきちゃうね」

「お願いしまーす」

 杏は会計に向かう。

「ほら、高明、行くよ」

「……分かってるよ」

 いちいち言わなくても分かるのに。


       ※ ※ ※


「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしています」

 杏が会計を済ませて、レジの前。

「また来ますね!」

「はい、待ってるわ」

「今日はありがとうございました」

 続いて杏が頭を下げる。

「こちらこそ、ありがとうございました。今度はゆっくりとお茶でもして話しましょうね」

「はい!」

「高明君も元気でね」

「……また来週、部活で会うじゃないですか」

「当たり前じゃないのよ、こういうのって」

「そういうものですかね……」

「そういうものよ、大事にしなさい」

「よく分かりませんけど、分かりました……」

「はい、合格」

「……朱苑先輩もお仕事頑張ってください」

「ありがとう、それじゃあね」

「はい……」


ガラガラガラ……


「ふう、満腹満腹」

「また来ようねー」

「うん、そうだねー」

 さて、これからが難関。行きたくもない買い物に付き合わせれる。

「じゃあ駅行こうか、芽愛ちゃん」

「歩いて行かない?」

「歩いて?」

「うん、食後の運動も兼ねて。嫌なら大丈夫だけど」

「私は良いよー。久しぶりに雨降ってないし、確かに歩くのもいいね」

「高明はどう?」

「……多数決で否決されるのが目に見えているから、大賛成」

「こんなに消極的な賛成表明、初めて見たかも」

「……どうせ無理なら、最初から賛成したほうがいい」

「面白い考え方だね」

「……まあ、ひと駅だしな」

 最寄りの駅から、目的地の木戸町まではひと駅。

「実はそんなに嫌じゃないでしょ?」

「……そうかもしれない」

「私に言われるから、抵抗したくなるんでしょ」

「……よく分かってるじゃないか」

「じゃあ、歩いていこう」

「……念のために言っておくが、帰りは電車だぞ?」

「うん。荷物も増えるだろうし、大賛成」

「……それならいい」

「それじゃあ行こう、芽愛ちゃん」

「うん、出発!」

 相も変わらず、大げさだな。


       ※ ※ ※


「それにしても、空気が美味しい!」

「久々の晴れだもんね」

「本当だね、梅雨の晴れ間ってやつだね」

 ……初めて聞いた表現だな。僕の知識が足らないのか。

「ハジメは今日も可愛いねえ!」

 ……ハジメ?


わんっ!


 ……なんだ、犬のことか。


わんっ! わん!


 なんとも可愛いな、特に歩き方が可愛い。あのトコトコ歩く感じがたまらない。

「ねえ高明」

 でも、飼うのは大変だろうしな。無責任に飼うのは動物虐待だからな。

「ねえ、高明!」

「……なんだよ」

「高明、犬好きだっけ?」

「……なんでそう思った?」

「なんでって、ずっと見てるからさ。昔はそこまで好きじゃなかったよね」

「……今も、そこまで好きじゃない」

「じゃあ、なんで見てたの?」

「他に……」

「他に見るものがなかったから!」

「……聞いておいて、先に言うな」

「だって、高明が言うことくらいは見当がつくし」

「……僕は、そんなにワンパターンな人間か?」

「うん、かなりワンパターン」

 全く、いつもこれだ。

「でもそっか、高明は犬が好きなんだね」

「……そんなことは言ってない」

「でもお兄ちゃん、たまに動物の動画見てるよね」

「そうなんだー、なんか意外。昔はそんなに好きなイメージ無かったけど」

「確かにー、昔はお兄ちゃん、動物好きじゃなかったよね」

「今だって、特に好きじゃないぞ……」

「いつから好きになったの? お兄ちゃん」

 ……もう少し、兄の話を聞いて欲しいものだ。

「……芽愛は分かるだろ、生徒会室の事件の時に一緒にいたんだから」

「確かに、あの時はそこまで凝視してなかったかも」

「生徒会室の事件って?」

「杏ちゃんには話してなかったね……」

 芽愛は、一か月前の猫探しの話と、生徒会室で起きた事件の顛末について、杏に説明する。

「へえ、そんなことがあったんだね」

「うん、まだ一か月しか経ってないのに、だいぶ前のことのように思えるなあ」

「でも、消えた物が見つかって良かったね」

「うん、良かったよ。高明が大活躍したおかげだね」

「お兄ちゃんが?」

「うん、名推理だったよ。最後の決定打は高明だったの」

「へえ、お兄ちゃんもマトモに働くんだね、学校では」

 兄をニートみたいに扱うなんて、いつか罰が当たるぞ、我が妹よ。

「そうだよー、部活では割と精力的。でも、チャンスをみすみす捨てるのは頂けないね」

「チャンスって?」

 すげえ嫌な予感。

「立英ちゃんと仲良くなれるチャンス」

「ああ、生徒会ってことは、その立英さんがいるんだもんね」

「そうそう」

「なるほど、芽愛ちゃんはそこから仲良くなったんだね」

「そうだよー。でも高明、あれっきり絡んでないんだよ」

「……あれはただの部活だろ、仲良くなるために働いたわけじゃない」

「難しく考えすぎじゃない?」

「……そもそも仲良くなりたくない」

「でもタイプなんでしょ? お兄ちゃん」

「……いや」

「とっくにバレてるんだから、別に隠さなくてもいいよ」

 ……全く、如何ともしがたいな。

「普通に声掛けたらいいのに」

「……今更、声掛けるのも不自然だろ」

「それってさ、きっかけがあれば声掛けるってこと?」

「……そうとは言ってないだろ」

「高明、そこまで難しい問題じゃないんだよ。きっかけがあるなら仲良くなりたいか、仲良くなりたくないか、それだけ」

「……なぜ、二択で選ばなければならないんだ」

「本当の気持ちは、いつでも二択なんだよ」

「……そんなことはないだろ」

「いや、基本的にはそうだと思うよ」

「……そうとは思わないな」

「それで、きっかけがあるなら仲良くなりたい? それとも全く仲良くなりたくない

?」

「……僕の話を聞け」

「で、どっち?」

 芽愛は何故だか、真剣そうな表情で僕の眼を直視する。

「……全く仲良くなりたくないって言ったら、嘘にはなるな」

「よし、分かった!」

「……何が?」

「なんか作戦を考えるよ」

「……作戦?」

「うん、作戦。名付けて……立英ちゃんの連絡先ゲット大作戦!」

「面白そうだね!」

 ……そのままじゃないか。

「うん! まずは連絡先ゲットを第一目標にします!」

「確かに、最初はそれが現実的なところだよね」

「いや待て……」

「ん? どうしたの高明」

「……そのナントカ作戦に乗るだなんて、まだ言ってない」

「お兄ちゃん」

「……なんだよ」

「これって良い機会だと思うんだよ」

「機会?」

「うん、これを逃したらお兄ちゃん、灰色の青春で終わっちゃうかもしれないよ」

「別にそれでも……」

「お兄ちゃん、想像してみて」

「……想像?」

「マトモな青春を送らないと、どういう大人になると思う?」

「……大人になるために、青春は必要ないだろ?」

「幻想のような、ありもしない理想にしがみついて、三十歳の手前」

 ……想像したくもない話だ。

「今更、恋愛なんてどうでもいいからと、趣味にばかり没頭……そして老いていく体」

「……そういう生き方もあるんじゃないのか」

「まあ、確かに高明の言う通りの人生もあると思うよ」

「……だろ?」

「でもさ、青春は一度きりなんだよ」

 ……結局芽愛もそっち側か。まあそりゃ、作戦の立案者だもんな。

「後から趣味に没頭することはできるかもしれないけど、後になってから青春を楽しむことはできない」

「……まあ、それは、そうかもしれないが」

「ねえ高明」

「……なんだよ」

「一度きりの青春チケットを、破り捨てるだけの覚悟はある?」

 その碧眼は、ガッシリと僕の動きを捉える。

「……」

「…………」

「………………」

「……一度捨てたら、もう戻れないよ?」

「……」

「…………」

「………………」

「……本当に大丈夫だって言うなら、もう二度とこの話はしない」

「……」

「…………」

「………………」

「ねえお兄ちゃん、こうやって動いてくれようとする人、普通はいないんだよ」

「……」

「多分、大抵はね、こういう問いかけを誰からも受けずに、さっき言ったような人生を送るんだと思う」

「…………てくれ」

「え? なに高明?」

「……少し、考えさせてくれ」

「……それって、考える時間が欲しいってこと?」

「……そうなるな」

「……分かった、待つよ。考えが固まったら、私にいつでも言って」

「……わかった」

「うん、待ってるね!」

 金色の髪が風になびく。

「さて、気を取り直して、ショッピングモール向かいましょうか!」

「そうだね、あと五分くらいで着くね」

「ほら高明、あともう少しだよ」

 向けられる手のひら。

「……分かってるよ」

 その日、それ以降のことはよく覚えていない。人混みの鬱陶しさも、荷物の重さも、いつもなら感じるその手の感情は、僕の前頭葉には一切残らなかった。

 

       ※ ※ ※


ザー………………

ザー…………


「雨か……」

 日曜日、午前十一時。自室のベッド。寝ぼけた頭を切り替えるために、洗面台へと向かう。

「……今日は静かなものだな」

 昨日のような騒がしさはなく、ただ、ただ、雨の音だけが聞こえる。


ジャーッ……ジャーッ……


 冷や水によって、顔面を覆っていた気怠さは打ち消される。

「今日は……どうしようかな」

 本日は、昨日の様に予定は入っていない。と言っても、いつものことだ。むしろ昨日の方がイレギュラー。

「……宿題は昨日、やり尽くしたよな」

 追加で勉強、という選択肢もあるにはあるが、休日に自習をするほど勉強熱心ではない。

「あ、お兄ちゃん起きたんだね。おはよう」

「……おはよう」

 廊下を歩いていると、妹の杏が現れる。

「今日さ、お母さんもお父さんもいないんだって」

「……そうなのか」

「うん、だから、お昼は好きにしてって」

「……分かった」

「お金、リビングに置いてあるから」

「……杏はどこかに行くのか?」

「友達とご飯食べてから、図書館で勉強する予定」

「……そうか」

 雨の中、ご苦労なことだな。

「うん。もうすぐ家出るから」

「……承知」

「お兄ちゃんはどっか行くの?」

「……決めてない、今から考える」

「そう。じゃあ私、準備があるから」

 杏は自分の部屋の方に戻る。

「……とりあえず、軍資金を確保しておこう」

 ……リビングにあると言っていたな。


       ※ ※ ※


「よし、ゲット」

 しかしどうしよう。金はあるといっても、この雨の中では外に出たくはない。


ぐぅ……


「……腹は、減ってるか」

 でもやはり、外には出たくない。まず傘を持ちたくないし、雨に濡れるのも嫌だ」

「……何故に雨は降るのだろう」

 雨は気力体力を奪う。ただでさえやる気の起きない人生が、更に面倒くさいものになる。

「……しかし、腹は減っている」

 いけない、これでは堂々巡り。いつまでも身動きが取れない。

「お兄ちゃん、行ってくるね」

 杏の出かける準備ができたようだ。

「……行ってらっしゃい」

「お兄ちゃん、ちゃんとお昼ご飯食べるんだよ」

「……言われるまでもない」

「どうせお兄ちゃんのことだから、外行くのダルいとか考えてたんでしょ」

 僕って、そんなに単純に見えるのか?

「早めに食べた方が良いよ、どんどん面倒になるからね」

「……分かったよ」

「野菜も摂らなきゃダメだよ」

「……分かった分かった、友達を待たせちゃいけないから、僕に構うな」

「お兄ちゃんと違って余裕を持って行動してるから、心配いらないよ」

 僕ってそんなに、余裕のない行動をしているだろうか?

「とにかく早めに食べて、とにかく野菜も欠かさずに、分かった?」

「……考慮には入れておくよ」

「はあ、やっぱり芽愛ちゃんがいた方が楽だなあ」

「……芽愛がいない方が、僕は気楽だけどな」

「はあ……もういいや。行ってくるね」

「……行ってらっしゃい」

 

バン!


 ドアを閉め方がいつもより強かった気がしたが、まあ気のせいだろう。

「……さて、面倒だが、腹ごしらえと行くか」

 とは言え、雨の中を長い時間歩く気はない。最寄りのファミレスならば、傘を差す時間も最小限で済むし、濡れる度合いも抑えることができる。我ながら最強の作戦。

「……作戦、か」

 昨日は、気迫に押されて含みのあるような返答をしてしまったが、今思えば、きわめて無謀な作戦だ。本来ならば、考える余地もなく却下するような話。

「……どうかしてたな、昨日の僕は」

 初台さんの連絡先なんて、得られるわけがないんだ。


       ※ ※ ※


 最寄りのファミレス、食後。

「……まあ、旨かったな」

 今日もハンバーグ。後で杏にとやかく言われたくないから、サラダも付けた。

「……」

 隣の席で男女の二人組が、楽しそうに談笑している。見るからにカップルのようだ。

「……」

 さて、長居しても仕方がない、家に帰ろう。 


       ※ ※ ※


「……」

 ……相合傘をする男女が、目の前を通りすぎる。

「……」

 濡れては作戦の意味がない。速く家に戻ろう。


       ※ ※ ※


ザー……

ザー…………

ザー……


「……本当に静かだな」

 家がこうも静かだと、更に気が滅入ってくる。

「……」

 ……リビングでテレビを見ることにした。


       ※ ※ ※


「……」

 ……気が付けば、恋愛ドラマの再放送が始まっていた。

「……」

 ……チャンネルを変えることにした。

「……」

「…………」

 ……面白い番組が放送していなかったので、テレビを消すことにした。


       ※ ※ ※


ザー……

ザー…………

ザー……


「……もう、五時か」

 ……いつの間にかに寝てしまっていたようだ。リビングは昼間よりも薄暗い。


バンッ……


「ただいま」

「……おかえり」

 杏が図書館から帰ってきたようだ。

「……勉強、捗ったか?」

「どうしたのお兄ちゃん」

 心配そうな顔で僕を見てくる。

「……何が?」

「お兄ちゃんからそういう話するなんて、割と珍しいから」

「……ただの世間話だろ」

「お兄ちゃんから世間話をするのがおかしいんだよ」

 僕はなんだと思われているのか。

「……する時もあるだろ」

「まあ、ゼロじゃないけどさ……いつもとはなんか違うっていうか……」

「……え?」

「いや、何でもない。気にしないで」

「……ああ」

 杏は自分の部屋に戻っていった。

「……なんだったんだ、今のは」

 杏の言葉が少し引っかかるが、まあ、考えすぎだろう。


       ※ ※ ※


 夕食を食べ、入浴を終え、自分の部屋。

「……」

 なんとなく眺めるSNSのタイムライン。とあるアカウントの結婚報告が回ってくる。物凄い勢いで拡散されている。

「……」

 拡散ボタンを押さずに、スマホのホームボタンを押した。


       ※ ※ ※


ザー……

ザー…………ザー……

ザー…………ザー……ザー……


 午後十二時、ベッドの中。歯磨きや明日の学校の準備を終えて、早々と眠ろうと試みたが、なかなか眠れない。

「……昼に寝たのが響いたか」

 起きたのは十一時だし、体は睡眠を欲していないのかもしれない。

「……今日は早く寝たかったんだがな」

 まだ降り続ける雨。昼よりも勢い良く降っている気がする。

「……明日になれば、止むのかな」

 暗い部屋の中、スマホを手に取る。

「……ずっと雨か」

 しばらくは、梅雨の晴れ間などは無さそうだ。

「……待っていても、仕方がないか」

 当分の雨予報。どれだけ降るなと願っても、雨が止む道理はない。

「……雨は止まないもの、か」

 眠れはしなくても、とりあえずは目だけ閉じることにした。体を休める効果くらいは期待できるだろう。


ザー……ザー……ザー……

ザー……ザー……

ザー……



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