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異世界?

ザーッ…ザーッ…ザーッ…


「ここは…どこだ…」


繰り返される波の音、照りつける灼熱の太陽の暑さに目を覚ますと、そこは知らない島の浜辺だった。

あたりには同じように状況を飲み込めていないクラスメイトがただ困惑して周りの者を起こしているところだった。


「おい天野!起きたんなら手伝え!」


まだ意識がボーッとしているところに乱暴な口調で僕を呼ぶのは桑田健次だ。

桑田は学生服に金髪、イヤリング、十字のネックレス、シルバーチェーンなどゴリゴリのヤンキーなのだが、意外と仲間思いで友人も多い。

僕の心の中では「不良くん」なんて呼んでいることは内緒だ。

そんな不良くんの肩を見るとまだ意識を失っているクラスメイトを2人担いで日陰まで運んでいるところだった。


「えっ、あ、うん!」


なんとなく状況を理解すると近くに倒れている女子を見つけた。

名前は…なんだっけ。確か内田…そうだ内田美優だ。

長い黒髪がとても綺麗で、クラスではあまり目立たず、よく1人教室の片隅で本を読んでいるのが印象的だ。


で、その内田さんをどうやって運ぼう…

お姫様抱っこで運ぼうとおもったのだが、制服のミニスカートからすらっと伸びる細い脚を見るとなんだか触れていいものか困惑してしまう。


「美優ちゃんは私が運ぶわ、天野くんはほかの男子をお願い」


そう声をかけてきたのはクラスの副リーダー、神無月梨奈だった。少しツンとした目付きだがとても優しくリーダーシップがありみんなからの信頼は厚い。


「う、うんありがとう助かるよ」

助かった反面少し残念さもあるが今はそんなこと言っていられないのでほかの男子を運ぶ。





「ありがとう天野君、これで全員だね」

大池がニコリとお礼を言う。

大池は男女問わず温厚で優しく接しリーダーシップがあるので女子からの人気だけでなくクラス全員の信用を得てると言っても過言ではないほどの人望を持っている。



全員日陰の下まで運び終わるとリーダーである大池と神無月にあのHRの後なにがあったかと聞いてみる。


「それは僕達もわからないな。ただ、あの謎の声は異世界転移だとか実験って言ってたからここがその異世界なのかもしれない」


「でも、ここが異世界と言われるとちょっと違和感があるわよね。なんというかただの無人島って感じ。」


確かに神無月の言う通り日本のどこかにもありそうな無人島とよく重なる。

僕らが目を覚ました場所は波と砂が広がるよくある砂辺だった。今はそこからすぐの木影におり、周りを見渡してみると、奥には崖がそびえたっていたり、木や植物が生い茂る深そうな森のようなものが広がっていた。


「どっちにしろ俺たちをいきなりこんなとこに飛ばせるやつだろ、ただもんじゃねぇよ」


不良くん…じゃなかった桑田も頭をガリガリとかきながらイライラしていた。


僕らが頭を悩ませているとどうやら、全員目を覚ましたようだった。


「えっ、ここどこなの?」

「なにこれ、島?!」


段々とパニックになり始める皆んなに向かって大池が声をあげる


「みんな、びっくりしてるとは思うけどまずは落ち着いてほしい!」


その声でざわめきは少しずつ収まっていく。

さすがはクラスのリーダーだ。


「僕もまだ状況が掴めていないけどとりあえず全員の安否を…」


その時だった。


<ようこそ皆さん私のゲームへ>


「「「っ!!!」」」


例の謎の声に皆が体を硬直させる。


〈ここは私が創った世界のひとつです。みなさんにはその世界での実験体となってもらいます。〉


〈まずは皆さんに私からのプレゼントとして「能力」を与えました。ステータスオープンと唱えてみてください。それともうひと…〉


「てめぇ!!さっさと俺たちを元に戻せ!!」


どこからか響く謎の声を桑田が遮る。


「待て健次、今は聴くべきだ!」


「うるせぇ!あんな得体の知れない声の言うことなんか聞いてたまるか!」


<私の言葉を遮りましたね…?>


無機質な声が初めて低いトーンで言う。

その声を聞いた瞬間僕らはさらに体を縛り付けられるような恐怖感に襲われる。


<愚かなる者に裁きを「雷撃」>


この一言で空は暗雲に覆われ、天に巨大な魔法陣が展開される。

あの時のHRよりも二回りほど大きなものだ。

嫌な予感がする。


「まずい!健次逃げろ!」

大池が逃げるよう指示する。

「な…」

だが桑田は天に展開される魔法陣に驚き動くことができない。


そして、魔法陣はあの時のように青白く発光する。


天から落ちる紫電の雷が桑田目掛けて襲い掛かった。


「ぐぁあああああぁぁぁぁ!!!」


「桑田!」

「桑田君!」


クラスメイト達はその光景に驚き動けず、大池と神無月が桑田の元へ駆けつける。

雷撃によって起こった爆発の砂煙があけるとそこには仰向けに倒れ、黒こげになった桑田の姿があった。


「そんな…」



僕らはその瞬間初めてここが元いた世界ではないことを知った。

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