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8/8

8.結果オーライっじゃないぞ!!

 僕の少し前を行く愛も、キョロキョロと辺りを見廻しながら歩いている。その度に背中では、一つに括られた髪がユラユラと揺れていて、僕はいつの間にか、無意識にそれを目で追う。


 僕は、ハッとした。


 いるではないか。3つの条件を全て兼ね備えたターゲットが。


 僕は胸ポケットから、ダーツの矢程の大きさの矢を抜き取る。小さくても効力は愛の矢と同じ。これをターゲットにプチっと挿すくらいは、肩を壊している僕にも出来る。


「ねぇ、愛くん」


 愛は立ち止まり、振り返る。


「はい?」

「君の髪、長くてキレイだね」

「そうですか?」


 愛は、毛束にスッと指を滑らす。


「弓をやるのに、その髪は、邪魔じゃない?」

「いえ、弓道は運動部に分類されますが、激しい動きはないので、纏めていれば大丈夫です」

「髪を纏めるのは、弓道の決まりみたいなものなの?」

「そうですね。暗黙の了解的なところはあります。弦に髪が当たると、危険ですので」


 真面目な顔で、質問に淡々と答える愛の隣に僕は立つ。


 プチッ。


 愛は、髪を触っていない方の手の甲を目の高さに上げた。


「どうかした?」

「いえ。なんだかチクリとした気が。……いえ、気のせいのようです」

「そっか。それより、きみ、真野くんに会いたいんじゃない?」


 僕の言葉に、愛は、ほんのりと頬を染める。


「何故でしょう? 私……」

「会いに行こうか」


 僕は、純が居る研究室へと愛を連れて行く。


「どうしました? こんな所まで」


 目を丸くする純。僕は、モジモジとする愛の背中を押して、純の前に立たせた。


「きみの条件を、総て兼ね備えた人だ」

「この人は、確か、事務所の……」

「そう。きみの運命の人だったみたい」

「そう……ですか」


 純は、マジマジと愛の目を見つめる。


 二人が無言で見つめ合っている間に、僕は、愛に刺した矢と対になっている矢を純の手の甲にサッと刺す。


 しばらくすると、純は、熱のこもった声を出した。


「僕は、あなたと、今すぐにでも結婚したい!」

「……はい。私もです!」


 愛は、胸の前で両手を組み、熱い視線を純に送る。


 晴れてカップルとなった二人は、僕へと向き直る。


「素敵な方をご紹介頂き、ありがとうございました。報酬はすぐにでもお支払いしますね」

「所長、私、この方の元へ永久就職することにしましたから、内定のお話は無かったことに」

「あ、ああ。うん、そうだね」


 二人に見送られ、僕は肩を落としつつ事務所への帰途につく。


 成婚率は落とさずに済んだけど……


 またアシスタント候補を探さなきゃ……


 僕の口からは、大きなため息が漏れた。

完結しました☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆


こちらは、『こんなお仕事、どうかしら ~お仕事アンソロジー~』シリーズ作です。

他作品も併せてお楽しみ頂けると幸いです。

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