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国王陛下の子ども食堂訪問



金の模様が入った美しいティーカップには、温かいミルクティーが注がれる。


その隣には、縁に同じ模様の入った皿の上に、様々な形のクッキーが並んでいる。


ドライフルーツのようなものを練り込んで焼かれたもの。中央に赤いジャムの載っているもの。形も色も様々で、見ているだけでも楽しい。


ラーラがぺこりと頭を下げお礼を言うと、侍女は「失礼いたします」と金色のカートを押して薔薇の咲き乱れる道を屋敷へと戻っていった。


フリオとラモンと話した翌日、ラーラは早速レオポルトの屋敷を訪れていた。


素晴らしい立派なガーデンを持つレオポルトの屋敷を尋ねると、ガーデンのテラス席へと案内された。


きょうは天気もよく、気持ちのいい陽気。


周囲には花も咲き乱れていて、いい香りはそよ風と共に鼻孔をくすぐる。


「ラーラさん、お待たせしました」


目を瞑り爽やかな香りを楽しんでいると、近づいてきた足音と共にレオポルトの声が聞こえた。


ラーラはさっと椅子を立ち上がり、ぺこりと頭を下げる。


「レオポルト様、突然お伺いして申し訳ありません」


「いえいえ、来てくださりありがとうございます」


レオポルトは今日も穏やかにラーラに微笑を向ける。


「例のネットは、どうでしたか? お役に立ったでしょうか」


「はい、おかげ様でバッチリでした! 今日はそのお礼と、それから、ご相談があって参りました」


そう言うと、レオポルトは目尻に皺を寄せ、「どうぞおかけください」と着席を促す。


「ご相談とは? 何か困ったことでも」


「はい。昨日の、その、例のネットで引き留めた子どもたちのことで……」


どこから話していこうかと考えて、ラーラは昨日フリオとラモンと話したことを、要点をかいつまんで説明していく。


バルクス帝国の人間が国内に忍び込んでいるのかと訊くと、レオポルトの表情が心なしか険しくなった。


「噂程度ですが、私の耳にも入ってきております」


「では、やはり……」


「ええ。しかし、奴らはうまいこと国境付近に身を置き、いつでも国に逃げ帰ることができるように活動しているとか」


「あの、以前、現国王陛下が王座を継承されたとき、他国の侵略があったとレオポルト様が仰っていました。その相手国はバルクス帝国ということですよね?」


「はい。さようでございます」


カールは大人たちが噂していたと言っていたけれど、これはどうやら全て間違いない話のようだ。


「その者たちは、一体何が目的なのでしょうか? 子どもたちを狙っている理由は……」


「以前、この国の蔓延る教育格差についてお話したことを覚えていらっしゃいますか?」


「はい、もちろんです」


「それが、この国の弱みになっているのです」


教育に格差のある現状が、この国の弱み。


どんな身分の子どもでも平等に通える学校という場所があったのなら、悪事を企む大人の魔の手から少しは守れたのではないかとラーラは密かに思っていた。


やはり、それがこの現状を招いてしまっているのか。


「バルクス帝国は、この国を未だ侵略しようと企んでいると言われています。そのためにターゲットにしたのが、この国の子どもたちなのです。子どもたちを取り込んで、いずれじわじわと国を侵略しようと考えているのではないかと」


レオポルトはそう言うと「わたくしは、そう読んでおります」と言い、ミルクティーの入ったカップをソーサーごと手に取った。


「子どもたちを、取り囲んで……」


まさに、フリオとラモンがその状態だった。


子どもたちを甘い言葉で騙し、自分たちのところに置いて手下のように扱う。


そうやってどんどん子どもたちを引き入れていこうとしているのだ。


「現に、行方不明になっている子どもが数名。調査中ですが、バルクス帝国の人間の仕業だろうと」


「行方不明……そんな、ひどい……」


ラーラはカールの話を思い出す。


子どもを隣国に売り飛ばしているというのは、噂なんかではなく最悪本当のことなのかもしれない。


「それならば、現状を変えなければその者たちの思う壺です! 子どもたちを守らないと」


なんとしてでも、これ以上子どもたちを危険で悲しい目に遭わせるわけにはいかない。


その想いから、ラーラの声には力が入る。


レオポルトは深く頷いた。


「近年その報告がわたくしのほうにも多く入るようになり、深刻に捉えております。王室にも、もちろん報告には上がっておりますし」


「王室にも?」


「ええ。国王陛下も、早急に教育の体制を整えていかなければならないと、考えは示されております」


「そうですか……」


国王陛下の耳に入っているなら、きっと黙ってはいないはず。


放っておけば、足元をすくわれる事態に成りかねないのだから。


「そのことで、ラーラさんは子どもたちのために今よりもっと何かしたいと?」


「ええ。私にできることは限られていますが、少しでも子どもたちのために力になりたいと思ってます」


相変わらずのラーラの子どもたちに対する熱い想いに、レオポルトは優しい笑みで頷く。


「承知いたしました。わたくしにお手伝いできることなら、なんでもお申し付けください」


「本当ですか? ではですね、早速お願いしたいことが──」


日差しが降り注ぐ花の香りに包まれた庭園で、ラーラはレオポルトに考えてきた〝大作戦〟を話していった。



* * *



ラーラがレオポルトの元を訪れてから、ちょうど一週間後──。


ラーラの子ども食堂は、朝から子どもたちの賑やかな声が飛び交っていた。


「おい、フリオ! もっとちゃんと引っ張れよ」


「えぇ? もっと? どう、このくらい?」


「おっ、いい感じ!」


子ども食堂の広い庭では、手作りのガーランドをフリオとラモンが木から木へと張っている。


カラフルなガーランドは、周囲に咲く草花とマッチしていて色合いが見ていて楽しい。


「ラーラ、こっちは準備完了!」


開け放している入り口から、カールが顔を出す。


キッチンに立つラーラに声をかけると、「手が空いたら見に来て」とまたいそいそと外に出ていった。


キッチンには、出来上がった大量のサンドイッチと、山盛りのラーラ特製鶏の唐揚げが並んでいる。


ラーラはその横で、更にどっさり焼かれたクッキーを袋詰めしていた。


それを手伝うのは、椅子を踏み台にして立つペトラだ。


「ペトラ、ちょっと見てくるから、ひとりでできる?」


「うん! 四個ずつ入れるのやっておくよ」


「ありがとう。よろしくね」


ペトラに袋詰めを託し、ラーラは表に出ていく。


フリオとラモンが一生懸命任された飾り付けをしていて、ラーラはついクスッと笑ってしまった。


「ふたりともー、いい感じー!」


声をかけると、フリオのほうがこっちに向かってピースサインを見せる。


それにラモンが「おい! 手を離すな」と慌てた声を上げていて、その姿にラーラはまたクスッと笑った。


ラーラを呼びにきたカールは、庭の奥の開けた場所で屋台のようにしたゲームコーナーを作っていた。


手作りの輪投げやボーリングは、ラーラの指導のもと一週間かけてみんなで手作りした。


こういった子どもの喜ぶ創作物を作ることは、ラーラにとっては得意でお手の物。


幼稚園教諭の夢花のスキルが大活躍した。


「おお! カール、すごい! いい感じだよ!」


「これでいいなら、中の作業手伝う」


「うん、じゃあクッキーの袋詰め一緒にお願い」


今日は、初めてこの子ども食堂で大々的な催し物を予定している。


子どもたちを招待してのお祭りを企画しているのだ。


この周辺の子どもたちだけでなく、範囲を広げてこの子ども食堂の存在を広めたい。


そう思ったラーラは、あの日レオポルトにチラシの作成をお願いしていた。


レオポルトは即日対応してくれ、チラシはマーケットをはじめ、子どもたちが集まる場所で配られた。


「ラーラ、いっぱい入れられたよー」


カールとともに中に戻ると、ペトラが得意げに自分の袋詰めしたクッキーを「ほら!」と指差しで教える。


「あら、早いわねペトラ。ありがとう」


「あとは口を閉めるだけだよ~。お兄ちゃん、手伝って」


ペトラに頼まれ、カールは黙ってペトラの袋詰めしたクッキーの口を留めていく。


部屋の中に掛けてある木製の鳩時計に目を向けたラーラは、「あっ!」と思っていたより進んでいる時間に声を上げた。


「いけない、そろそろ外に運び出さないと」


「え、もうそんな時間か?」


慌て始めたラーラの様子に、カールも時計に目を向ける。


時刻は午前十時を迎えようとしていた。


「カール、クッキーのほうは任せたわ」


ラーラはいそいそとキッチンに入り、サンドイッチが載ったトレーを運びだしていった。



チラシに記載した午前十時のスタートから、ラーラの子ども食堂には続々と子どもたちの姿が見え始めた。


何度か食事に訪れたことのある子、チラシを見て初めて訪れてくれた子。


年齢も幅広く、下はペトラくらいから上はカールたちより少し大きい子まで来てくれていた。


ゲームをして景品のクッキーをもらったり、テーブルについてラーラ特製のサンドイッチや唐揚げを食べたり、思い思いに過ごしている。


子どもたちの楽しそうな姿、生き生きした様子を見ていると、ラーラの顔には自然と笑みが浮かぶ。


そんな賑やかな声の中にいると、森の向こうから馬の鳴き声が聞こえてきた。


なんだろうと思っているうち、見えてきたのはいつか見た豪奢な馬車だった。


艶のある立派な黒馬がそれを引き、なぜかラーラの子ども食堂の前で停車する。


子どもたちは馬車に振り返り、どこからともなく「国王様だー!」という声があちこちから上がり始めた。


(え、国王陛下……!? 馬車が停まったってことは……)


突如現れた王宮の馬車に、ラーラの鼓動は高鳴りを増していく。


緊張に包まれながら一歩ずつ表に向かっていくと、馬車から姿は現したのはなんとレオポルトだった。


「レオポルト様……!」


ラーラの顔を見ると、レオポルトはいつも通り穏やかな笑顔でやってくる。


「ラーラさん。大盛況のようですね」


「はい、おかげ様で。作っていただいたチラシの効果が大きかったようです。ありがとうございました」


振り返ると、停車した馬車に注目していた子どもたちはもう各々に遊びの続きや食事の続きを始めていた。


「そうですか。それは良かったです」


「あの……?」


ラーラは背後の馬車が気になり落ち着かない。


その様子を察したレオポルトは、すぐに「実は今日は」と本題を切り出した。


「ウォルト様が、ラーラさんの子ども食堂を視察したいとご希望されまして」


「えっ! こ、ここをですか?」


「さようでございます」


そんな話をしていると、侍従らしき人間が馬車の入り口を開ける。


そこから颯爽と降りてきた姿に、ラーラの目は釘付けにされた。


ヴィオール王国の若き国王陛下──ウォルト・ヴィオール。


レアンコルトマーケットに出向いた際に偶然見かけた彼を、ラーラは密かに美しいと思っていた。


近づいてくるウォルトに、ラーラは改めて見惚れてしまう。


アーモンド形の瞳は髪と同じブラウンアイで、すっと高い鼻梁に薄い唇。


顔面が見事に左右対称で、紙を折るように合わせたら、ぴったりなのではないかと思えるほど整っている。


対面すると見上げるほどの身長差で、ラーラは挨拶の言葉を必死に考えた。


「お前がラーラ・フィアロか」


初めて聞くウォルトの声は思っていたよりも低く、それだけで更に緊張が高まる。


ラーラはぺこりと頭を下げ、見上げるようにしてウォルトの顔を見た。


「初めまして、ウォルト様。はい、ラーラ・フィアロと申します。隣のファリアン王国から両親の代わりにやってまいりました」


「ああ、話はレオポルト卿から聞いている」


そう言ったウォルトの視線が、子ども食堂を見渡すように向けられた。


「子ども、食堂……」


「あ、はい。子どもたちに食事を……」


「振る舞っているのか?」


「はい!」


「なぜ?」


なぜ。ウォルトにはその意味が理解できず、追究するようにラーラに問いかける。


しかしラーラは怯むことなく、はっきりとその〝なぜ〟の答えを返すべく、ウォルトを見上げて口を開いた。


「子どもは、どんな世界でも最高の宝物だからです」


「宝……?」


どこの世界でも、どんな境遇でも、どんな子にだって、幸せになる権利と無限に広がる未来がある。


子どもという存在は宝だと、ラーラは夢花の頃から思ってきていた。ラーラとして生きる今もそれは変わらない。


そんな風に思うラーラだからこそ、人一倍子どもを不幸にさせる存在は悪でしかないのだ。


「だから私は、子どもたちが笑顔になれるご飯を作って、楽しく食事をすることができるように、この場所を始めました。食べることは、活力です。それに、楽しい食事は子どもたちの心を豊かにします」


無の表情でじっとラーラを見つめ、話を聞いていたウォルトの薄い唇に、ほんのわずかに笑みが浮かぶ。


「ほう……面白い。それなら、是非とも何か食べてみたい」


「えっ!」


ラーラはまさかのウォルトの発言に驚き、つい失礼なリアクションを取ってしまう。


「出せるものはないのか」


「い、いえ! そんなことはないのですが、国王陛下のお口に合うものかどうか……」


「子どもたちがどのようなものを食べているのか、興味がある」


そう言ったウォルトは、看板を横切り敷地内へと入っていく。


ガーデンテーブルへと近づき、そこにたくさん並ぶサンドイッチと唐揚げに視線を奪われた。


「なんだ、この食べ物は……」


やはり、王宮で一流の料理人が作る食事に舌鼓を打っている国王陛下に、サンドイッチと唐揚げはないだろうとラーラは冷や汗をかく。


「えっと……これは、サンドイッチといいまして、パンに様々な具材を挟んだ料理で──」


「パンに具材を挟む?」


ウォルトは「いただくぞ」と言い、サンドイッチを手に取る。


ウォルトが手にしたのは、クリームにイチゴやオレンジなどのフルーツを挟んだフルーツサンドだった。


手に取り改めてまじまじとサンドイッチを見つめ、恐る恐るといった様子で口に運ぶ。


その様子を、ラーラはそばに立ちじっと見守った。


「これは……初めて食べるパンだ」


それはどういう意味だろうと、ラーラの不安がさらに増す。


パンに物を挟むなど、邪道だ、ジャンクフードだと、そういう意味に違いない。そんなことを思ったとき──。


「パンに何かを挟むなんて発想、これまでになかった。美味い」


ウォルトはどこか感動したように言い、続きを口に運ぶ。「美味い、美味い」と言いながら、あっという間にひとつ平らげてしまった。


(これは、もしかして褒められてるって、そういうこと……?)


食文化が発展していない国だとは聞いている。


しかし、王宮内ももしかしてそうなのだろうか?


食材には困っていなくても、手を加える〝調理する〟という文化は王宮内でも未熟なのだろうか?


「こっちは何が挟まっている?」


「あ、そちらは、玉子です」


「玉子?」


「はい。玉子を茹でて粗く潰して、自家製のマヨネーズと和えたものです」


「マヨネーズ?」


ウォルトはラーラから出てくる聞き慣れない単語に訊き返してばかりになる。


(そっか……マヨネーズなんてこの世界にはないのか!)


「マヨネーズは、玉子と酢で作った調味料で、様々な料理にとても合う調味料です」


玉子と酢で作ったマヨネーズは、料理のアクセントに万能。


今回作ったサンドイッチも、おかず系のものにはたくさん使っている。


「こっちの、茶色い塊はなんだ」


「あ、はい。そちらは、鶏の唐揚げになります」


「唐揚げ?」


「鶏の肉に味付けをして、粉をまぶして揚げたものです」


不思議そうな眼差しを送っている様子から、ウォルトには唐揚げも馴染みがないようだ。


王宮では普段、どのようなものを食べているのだろうかと、ラーラは逆に興味深く思えてくる。


「いただくぞ」とまた断って、ウォルトは唐揚げの山に手を伸ばす。


「……美味いっ」


唐揚げをかじった瞬間、ウォルトのクールな表情が緩んだのを目撃して、ラーラは心の中で「やった!」とガッツポーズを取る。


「お口に合いましたでしょうか……?」


ラーラの問いかけにウォルトはしっかりと頷き、半分残ったつまんでいる唐揚げをじっと見つめる。


「肉が……なんと言ったらいいんだ? 噛んだ瞬間、じゅわっと口の中に広がるとでも言うのか。味も美味いし、大きさも食べやすい」


唐揚げを大絶賛し、ウォルトは二個目へと手を伸ばす。


(良かった……。国王陛下に認めてもらえれば、ここでの子ども食堂も安泰だよね)


子どもたちに混ざってラーラの料理を口に運ぶウォルトの姿に、ラーラはホッと胸を撫でおろしていた。



視察だと訪れたウォルトは、子どもたちに混ざり、本来の目的を忘れてしまったようにラーラの料理を堪能した。


「少し味見のつもりが、すっかり子どもたちと一緒になって食べてしまった。すまない」


「いえ! 食べていただけたことは自信になりました。ありがとうございました」


待機している馬車まで見送りに出たラーラは、最後に袋詰めしたクッキーを「あの」とウォルトに差し出す。


「これは……焼き菓子か?」


「はい。クッキーです。よろしければお持ち帰りください」


リボンで口を縛ってある袋の中には、種類の違うクッキーが四個入っている。


「ずいぶんと可愛らしい焼き菓子だな。これは持ち帰って、城の厨房の者たちにも見せてやりたい。ありがたくいただいていく」


王宮でこのクッキーが披露されるのかと思うと、ラーラはたちまち恐縮する。


ウォルトに手渡しながら「こんなものでよろしければ」と頭を下げた。


「ラーラ」


ウォルトに初めて名前で呼ばれ、ラーラはしゃんと姿勢が伸びる。


出す予定より大きな声で「はい!」と返事をしていた。


「もう少しして、木々の葉が青々としだす頃、毎年行われている国を挙げての祭りがある。我が母上を喜ばせることのできる菓子を作れるか、競う祭りだ」


「王太后様が喜ぶお菓子を作れるか競うお祭り……」


この国にそんな祭りがあることをラーラは知らなかった。


王宮が催す祭りとなると、さぞ大規模なものなのだろう。


一流の料理人やパティシエがこぞって参加するのが予想される。


「その祭りに、是非とも参加してもらいたい」


「……。え、わ、わたくしがですか!?」


「ああ。何か都合が悪いか」


まさかその祭りに出場することを頼まれるなんて思ってもみなかったラーラは、思いっきり怯んだ姿を見せてしまう。


そんな国の大規模なお祭りなんかに、この国に移住して間もない自分が参加させてもらってもいいものなのか。


「出場すれば、この子ども食堂も国中に周知される。悪い話ではないはずだ。どうだ、参加してはみないか?」


ウォルトの言う通り、確かに祭りに参加すれば今よりもっと子ども食堂の存在を広く知ってもらうことが叶うはず。


そんなチャンスは滅多にない。


「わたくしなんかが参加しても構わないのでしたら、ぜひ、お願いします!」


そう答えると、ウォルトは「そうか」と美しい顔に微笑を浮かべる。


「では、詳細は追ってレオポルト卿に伝えさせる。また会える日を楽しみにしている」


「はい。今日は、ありがとうございました」


馬車に乗り込んでいくウォルトを見届けると、すぐに馬車はゆっくりと発進する。


走り去っていく馬車を見届けると、ラーラは気が抜けたように「ふう」と深く息をついた。



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