アイドル以外の時間
「はあ、今日も疲れた」
僕が疲れたのはアイドルの仕事ではない、学校だ。
勉強は難しくなるし、点数を取らなければ進級できない。
「もうちょっと楽しければ、ね」
僕にも楽しみができた。
それは依沙と話すことだ。
チャットを使うこともあれば、電話で話すことも。
一番は直接会って話すことだけど。
って、もうちょっとで家じゃないか。
少し位は何かあってくれても、いいんだけど。
「あれ?カラさん?」
「ん、って依沙?」
何かありました。
「カラさんも今帰りですか?」
「うん。とは言っても電車に乗ってたから30分前には終わってたよ」
「それに、いいんですか、お金‥‥‥」
「気にしなくていいよ、僕が話したかっただけだから」
少々強引レベルにカフェに引きこんでしまった。
「何かありました?」
「気が付いたら1学期の中間も来るらしくて、色々とこっちでは起きてるのに」
「でも中学の部分から半分は出るらしいですし、多分なんとかなると思うんですけど」
依沙はテスト範囲に目処がついているらしく、ノートを取り出した。
「‥‥‥なんで、こんなにビッチリ書いてあるんだい?」
「え?このくらい書かないとわからなくないですか?」
「え?」
他のノートも出して貰ったのだが、すべてのノートにビッチリ。
重要なところは色ペンで色もつけられている。
「でも、こないだの小テスト3問くらい落としちゃって、結構削られちゃったかな~」
「ち、ちなみに何問のテストだったんだい?」
「たしか、30問位だったかな」
あれ?
「依沙はどこの高校だったっけ?」
「すぐそこの南台高校だよ。推薦で受かれたから、中学の最後はダンスに精を出せて、アイドルにもなれていいことだらけだよ~」
「どうして、そこに?」
「『音楽の授業が選択か無いところにしなさい。それ以外ならたぶん大丈夫だから』ってお母さんが」
南台はここら辺ではわりと頭のいい所では?
結構依沙ちゃんはすごいのかもしれない。
「でも、音楽の無いところって酷いと思いませんか!私、音楽のテスト、歌以外なら間違えたこと無いのに!」
その歌が絶望的なんでしょうが‥‥‥
「あ、ごめんね、お母さんから電話だ。ちょっと出てくるね」
「あ、うん」
カフェの外に出て電話をかける依沙。
ダンスだけじゃなく学校まで上‥‥‥
僕なんてこの間の小テストギリギリ半分だったのに!
とか考えてたら帰ってきた。
「カラさん、このあと時間あるかな?」
「僕?連絡いれれば問題ないけど、何かあったのかい?」
「お母さんがちょっと、呼んでて‥‥‥」
「依沙のお母さんが?」
「それに、私も‥‥‥」
「?」
「わあ、やっぱり可愛い!でもサイズはカラさんサイズだから少し大きいなぁ」
「制服を着させてほしいって‥‥‥いきなりでビックリしたじゃないか」
「だって、南台の制服、地味なんだもん」
かくいう僕は依沙に制服は取られているし、流石に依沙のサイズは合わないので、依沙のお母さんの服を借りている。
「それで、依沙のお母さんは、何をしているんだい?」
「衣装のモチーフが制服らしくって、お母さんデザイナーなんだよ」
いや、端からみたら変な人になってるけど。
四方八方から写真を撮っている。
し、下からは危ないのでは?
「ふう、いい感じの資料にはなったかな」
「お疲れ、お母さん」
あれはお母さんの私物なのだろうか。
何かコスプレ衣装みたいなのも入ってるんだけど。
「にしてもスラッとしてて格好いい子だね。この間はチラッとしかみれなかったから、残念だったんだよね」
「あ!ありがとうございます」
「なので執事服とか着て貰えませんか!」
「はい?」
依沙のお母さんはデザイナーであり趣味はコスプレらしい。
依沙も何回も着させられたらしく、今日はメイド服を着させられてた。
と、言うかお母さんが着てたのか‥‥‥
「いやぁ、ありがとうね。つい捗ってしまった」
「お母さんは遠慮を覚えようね」
「依沙にさえ、怒られるなんて」
随分としょぼくれたとした顔をした。
「ここまでしてくれたんだしお礼しなくちゃね。これ、あげる」
「なんですか?これ?」
渡されたのは紙切れ?
「プールの招待券らしいんだけど、2枚しか貰えなくて。依沙と二人で行くつもりだったんだけど、仕事の方が忙しくてね」
「プールってまだ早いですよ」
もうすぐ5月と言ったところだ。
「お得意様がくれたやつで結構良いところらしいんだよ。室内だし、この頃なら空いてるって言ってたかな」
「なるほど」
時間があったら依沙を誘おう。
「また、来てね!」
「お母さんが言うと着てねになるんだけど」
「依沙もちゃんと送ってあげてね」
「うん、勿論」
勿論、何もなかったんだけど。
やっぱり依沙は頼もしかった。
1番:天城院愛
ダンス:12位
歌:9位
リーダーである1番であるにも関わらず、踊りも歌もあまり得意ではない。
人と仲良くしたりするのは得意。