グループならメンバーに相談するのが早い
後書きにキャラクター説明を少しずつ乗せます。
「なるほど‥‥‥」
次の練習は例の日の三日後だった。
「わかった、私が探りを入れておく、公にしてグループの迷惑になるのも悪いし秘密裏に、ね」
「ありがとうございます。愛先輩」
「可愛い後輩に頼られれば頑張っちゃうのが先輩ってものだから」
愛先輩は先輩として胸を張りたいタイプの人だった。
と、話が終わったのだがもう集合時間も近い。
早い人はもう来ていてもおかしくない。
そのため、来てしまった人に聞かれたらしい。
カルトさんが飛び込んできたのだ。
「カラちゃん、大丈夫?」
「カルトさん、大丈夫ですよ」
「そこで聞いたのです。正しくは聞こえたのですが」
「ケイトさんと一緒だったんですね」
「そりゃ姉妹だからね」
カルトさん、ケイトさんの苗字はどちらも舞石。
カルトさんの方が一歳歳上のお姉さんらしい。
「姉さんは動きが遅いんですから、その癖一緒に行こう、だなんて言うんですから」
そんなことを言いながらそっぽを向く。
でも口元がにやついていたのを私は見た。
口ではこう言っているがかなりお姉さん好きらしい。
「ケイトちゃんそんなこと言わないで~」
カルトさんはその事にはその事に気がついていないらしい。
十分後メンバーがぞろぞろと集まり12人のメンバーが集まった。
「後は寝夢先輩?」
「ねぼすけさんはそこですよ」
珊瑚先輩が指差す先は部屋の角。
そこに布団が敷いてあり、その上に例の先輩、つまり寝夢が眠っていた。
「ほらねぼすけさん、起きてください」
「私ねぼすけじゃない、寝夢‥‥‥zzz」
「ほら二度寝しない!さっさと起きる!」
「大丈夫、五度寝だから」
「大丈夫じゃないじゃないですか!薬は飲んだんですか?欠かさず飲んでくださいと、あれほど‥‥‥」
珊瑚先輩がお母さんみたいな感じ。
ん?薬?
「ああ、寝夢先輩は睡眠障害でね、眠気が来るのが不定期、しかも多いんだよ」
「グループ入ったときからというよりはずっと、そうなの。可哀想に、踊りも歌も上手なのに」と奈々子さん。
「先輩は隙あらば寝ている感じですからね」
「伊井代、好きで寝てる訳じゃないって、いつも言ってる」
「け、喧嘩はやめてくださーい!!」
「こ、戸々乃もそう思うのです!!」
開始から少し険悪になってますけど、大丈夫なんですか!?
「とりあえず今日も練習するんだが、依沙」
「は、はいっ!」
「カラにダンスを教えてくれるかな」
「わ、わかりました!」
「依沙、よろしく頼むよ‥‥‥」
一人で踊らせたカラさんのダンスは合わせるものが無く何度か転んでいた。
「依沙はどうやって練習、というか覚えているんだい?」
「足元中心に全体を見て、覚えるんです」
上半身の動きは二の次、ましてや踊りながらでも後ろの人であれば合わせることは難しくない。
「前回のは足の動きも単調でしたしね、一回で最後まで通せて良かったです」
「‥‥‥その単調すら出来ない僕はなんなんだろう」
「わ、悪口や嫌味で言ったわけではないんですぅぅ!!!」
と、こういった調子でダンスだけでアイドル入りを果たした人と一般人では価値観が違うことがよくわかった。
『お疲れ様でした!』
「私から一つ。出来る限り一人では行動しないように、同じような手口でやられたら困るからね」
二人ずつ帰っていく。
カルトさんは妹のケイトさんと‥‥‥といった感じで。
私は勿論カラさんだ。
「ごめんね、こんなことになってしまって」
「いえ、一人で帰るより楽しくて好きですよ」
暗い道は静かであまり好きではない。
「あれ?13人では一組は三人組が出来るのでは?」
「ああ、それなら大丈夫。あそこは寝夢先輩の家だから。それにあの部屋は寝夢先輩の部屋の一部だしね」
「‥‥‥寝夢先輩って何者なんですか」
「それは一年一緒にいた僕も知らない事だね」
じゃあ寝夢先輩は早く来て寝ていたのではなく、自分の部屋で寝ていたのか。
「自分の部屋でいじめが起きていたなんて、可哀想に」
「先輩自身は気にしてないにしても、こっちがね」
三日前と同じようにカラさんを家まで送り届けたらお母さんと帰る。
一応警戒して後ろを振り向いてみたが、誰もいなかった。
『帰りました~』
『僕も送り届けて貰いましたよ』
グループ内のチャット。
スマホの機能を利用して安否確認をしようという愛先輩の考えだ。
『私も珊瑚も帰宅したぞ』
『あれ?なんで珊瑚先輩の安否まで?』
『そりゃあ、真横にいるからに決まってるだろう?』
少しして、当の本人から返信が来た。
『愛とは腐れ縁なんだ、今もまだ家が近い』
『私達四人は無事だな。加えて寝夢も無事だから五人か』
『次の練習の時も出来れば二人以上での行動を』
『わかりました!!』
13番目:由芽野依沙
グループ内
ダンス1位
歌13位(普通の人でも滅多に無いレベルの音痴)
本作品の主人公。
ダンスだけで合格が決まったシンジンアイドル。
歌で人を気絶させることがしばしば。