私、アイドル始めます!
他の小説が進まないときに書くかもしれません。
他の小説と少し変わったものになりますが、何事もチャレンジの精神でやっていきたいと思います。
アイドル戦国時代とはよく言ったもので、強い者を蹴落とさなければ生き残れない。
それでも、そうだとわかっていたとしても、アイドルになりたいと言う夢は世の女子の中から消えることは無かった。
「今日からにFuture☆Dream入ることになりました、由芽野依沙といいます!よろしくお願いします!」
部屋の中に木霊する声。
自分以外に人はいない。
私がグループに入るのは明日から、明日から私は、
アイドルだ。
「おはようございます」
「君が依沙ちゃんだね?」
プロデューサーさんかな。
思った以上に若い人だ。
「とりあえず今日は挨拶の後、練習。とは言っても君は歌だけだけど」
「うう、頑張ります‥‥‥」
私は踊りだけでオーディションに合格した。
特に練習も、努力もしてない。
ただ、楽しいから踊っていた。
それが評価された。
かわりに歌が絶望的だった。
ついた名前が『死神の歌い手』
音楽の授業では「頼むから歌わないで」と言われた。
そんなにひどいかなぁ‥‥‥
今はそれを自覚して一人カラオケボックスで歌ったりする。
「それにしても前は今より酷かったって本当かい?」
「き、傷を抉らないでください‥‥‥」
因みにダンス試験の時点で通過確定していたのだが、「ついでに歌も」と言われ、歌った。
その後、数秒のうちに止められた。
試験を見ていた三人のうち二人が頭を押さえていた。
「さあ、ここだ」
「はい」
緊張する、けど、練習はした。
後は挨拶をちゃんと決めるだけ!
「失礼します!!」
『新メンバーおめでとう!!!そしていらっしゃい!!!』
「ふぇっ!?」
挨拶の前に声量で圧倒され、尻餅をついてしまった。
そんな私の前に一つの手が差しのべられた。
「すまない。そんなつもりは無かったんだが驚かせてしまったね。僕は12番目の日永カラだ。カラと呼んでくれ」
「は、はい、カラ、先輩。私は、由芽野依沙です」
「依沙か。よろしく。そ、それと先輩は止めてくれ‥‥‥は、恥ずかしい」
随分とイケメンな感じな方で‥‥‥とか思ってたけど可愛らしい方のようだ。
「とは言ってもこの中では一番下だし依沙と一年しか変わらない。軽く接してくれて構わないよ」
「は、はいっ!」
「だから先輩は止めてくれよ‥‥‥」と耳打ちされたのは私しか知らないだろう。
その後は全員の自己紹介となった。
「私は1番、天城院愛よ。私から7番までは一番長くいるメンバーね」
「2番!一津羽井!つばちって呼んでね!」
「3番、水面珊瑚‥‥‥これでいい?」
その後4番、カルトさん。5番、佐月先輩。6番、寝夢先輩。7番、 奈々子さん。8番、八重先輩。9番、戸々乃さん。10番、ケイトさん。11番、伊井代さん。と順々に名前を上げていく。
尚、先輩、さんが別れているのはそう呼んで欲しいと言われたからだ。
なにも言われてない人に関しては先輩としておく。
それはそうと、私で13人なのだ。
時間がかかるのは当たり前で時間は既に一時間近く回っていた。
「あちゃー、もうこんなに時間が経っているのか~」
と、愛先輩。
「絶対寝夢のせいなのです!!」と、佐月先輩。
「うにゅ~」と当の寝夢先輩はおやすみのご様子。
「寝夢先輩は放っておいて練習に行きましょう、周りが今以上に騒がしくなれば起きるでしょうし」と八重先輩。
あ、そっか、ここは練習場なのか。
「依沙、君はダンスの力だけで入ったと聞いたよ!是非僕に教えてくれないか!」
「テンションおかしなっとるで~」と伊井代さん。
「し、仕方ないだろう、僕はダンスが得意じゃないんだ」
新事実。
一年先輩のイケメンな彼女はダンスが得意でないらしい。
見た目的にダンス踊れそうなんだけどなぁ‥‥‥
「これは、」
「流石のつばちも先輩の威厳どうのこうと言ってられないかも‥‥‥」
「あれ?」
今日の練習は最初の7番までが歌う曲のバックダンサーの練習だった。
それを依沙は一回見ただけで踊って見せたのだった。
「依沙、いや、依沙師匠!」
「や、止めてください、カラさん!」
さっきからベッタリなのである。
カラから見てみれば後輩に一発で抜かされたのだ。
精神的に来るものがあるらしい。
「流石に参加一日目からこれ以上は辛いし解散にしよう。それに、メンタルズタボロの子もいるみたいだし」
愛先輩の追い打ちがカラさんを襲う。
先輩がみんな出てから私も出る。
あ、お手洗い借りよう。
ダンスに集中していて、楽しくって、忘れていた。
「出口と反対方向にあったのか、探しちゃったよ」
十分ほど迷っていた気がする。そのためギリギリだった。
後は行きと同じく練習場を通って帰るだけ‥‥‥
「あれ?明かりがついてる」
誰かいるのかな?と思って覗くとそこでは、
カラが何者かに足蹴にされている所だった。
顔はよく見えない、と言うか何かを着けているようだ。
「カラさん!!」叫ぼうと思った、しかし声が出ない。
そりゃそうだ、怖いもの。
でも、やらなきゃ‥‥‥カラさんが‥‥‥
何か、武器のような何か‥‥‥
「あいたっ!って備品入れ?」
棚にもアイドルのよく使う備品が多数。
「あ、これなら‥‥‥」
あんまりやりたく無いけど、仕方ない。
「カラさん!!!」
手に持っているのはマイク。
大音量に設定しておいたので足蹴にしていた人達がビクッとして振り向く。
やっぱり顔を覆う仮面をしていた。
そして、三人組だった。
マイクで私が出来ること、それは‥‥‥
死神の歌(命名は親)を歌うこと!
私にはわからないが頭を殴られたような衝撃がはしるらしい。
三人は耳や頭を抑え始める。
「カラさん、早く!!」
彼女に意識があるかどうかはわからないけど、叫んだ。
これで、私の歌でトドメをさしてしまったらこれ以上の策はない。
「ありがとう‥‥‥依沙!!」
「サラさ、わあっ!!」
サラさんに手を引かれ、出口まで引っ張られた。
空はもうオレンジから黒へと変わろうとしている。
「依沙、ありがとう、助かった。もう誰も残ってないと思ってた」
「良かった、じゃないよ!傷は?大丈夫?救急車呼ぶ?」
サラさんは笑って。
「この程度なら大丈夫だよ、強いて言うなら絆創膏位は欲しいかな」
「ふふふ、持ってるよ!はいっ!絆創膏!」
鞄から出たるは救急箱。
「持ってきちゃいました」
「あはは、何してるんだか。でも、助かるよ」
公園で傷口を消毒、絆創膏を貼って完了だ。
「それにしてもサラさんどうしてあんなことになっちゃったんですか?」
「‥‥‥すまない、見に覚えが無いんだ。グループはみんな仲良しだし」
「とりあえず警戒して今日は一人で帰るのは無しです。家、近いですか?」
「過保護だなぁ」
安全第一、我が家の家訓。
「でも助かる、お願いするよ」
ついたカラの家は私の家のすぐ近くで、歩いて五分といったところだ。
マンション内なのでセキュリティはよさそうだ。
「おかえり、サラ‥‥‥って傷!!どうしたの?」
「それは‥‥‥むぐっ」
「やっぱりダンスが苦手で結構転んでしまったんだ、大したことないよ」
「そう?と、言うかその子は?」
「うちのグループの新メンバーだよ」
「由芽野依沙です、サラさんとは、えーっと、友達?」
そういえば私とサラさんの関係ってなんだろ。
「同じグループの仕事仲間で、友達だよ」
サラさん本人がフォローを入れてくれた。
「それでどうする、僕の部屋入っていくかい?」
「うーん、お母さんに連絡入れてみるね」
母は家にはいないらしいし、さっきのこともあったので一人では帰りたくない。
場所とでっち上げの不審者情報を送りつけたら迎えに来てくれるとの事だ。
「お母さん、仕事今終わったから帰るところだって。その途中で迎えに来てもらうから、そうだな‥‥‥一時間までなら」
「うん、それじゃあ、いらっしゃい、依沙」
その後、サラの部屋で過ごしたが、さっきの出来事の話題は一回も出なかった。