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ー俺とカイブツー

 家具量販店の少し手前に奴はいた。エスカレーターから落ちたことから学んだのか、ゆっくりと歩いており、背中には羊の姿にそぐわないような機械のような見た目の翼が生えてきていた。その翼で少し体を浮かせてここまでやってきたらしい。店から出てきた俺を見つけると歩みを止めた。ここで奴を暴れさせては楓まで巻き込まれてしまう。それだけはあってはならない。深呼吸して俺はもう一度走り出した。思った通り、奴は俺を追いかけてくる。翼を使い始めた影響か、スピードが遅くなっていてギリギリではあるものの追い付かれずに済んでいる。走りながら考える。新都タワーの内部は円状であり、俺たちが上がってきたのが出入り口付近のエスカレーターで、今いるのが出入り口とは正反対の家具量販店の近く。出入り口までには追い付かれてしまう。となると方法は一つしかない。


 しばらく走った後、足を止める。俺に合わせてか、奴も歩みを止める。場所は二階の中央にある最上階の展望台行のエレベーターの前。ボタンを押し、エレベーターを呼ぶ。本来なら楓を煙から逃がすために考えていた作戦の一つだが、ここで使わせてもらう。作戦はこうだ、まずエレベーターの扉が開いたところで、俺がエレベーターに入る。そこで奴は俺を狙い、こちらに飛び掛かってくるはず。それを避けて扉が閉まる前に外に出て奴をエレベーターに閉じ込め、展望台まで行かせる。その間に楓を抱えて助けを呼ぶ。奴の攻撃を避ける部分が一番の難所だが、今も睨み合ったまま動かないように俺を殺すつもりはないようなので何とかなるはずだ。


 機械的な音が鳴り、扉が開く。


「俺は今からこのエレベーターに乗るぞ!お前も乗るなら来いよ!」


 じりじりと後ずさりした後、エレベーターの中に入る。


「Grrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!」


 予想通り奴は叫びながらエレベーターの中にいる俺に向かって右手の爪を振り上げ、飛び掛かってきた。あまりに大振りな攻撃、これなら避けられる。そう思って俺は後ろに一旦引こうと、足に力を入れたが、力が入らなかった。


「なっ、動けない。なんでなんで、こんな時に!それにぐあああああああ!!」


 理由はすぐに分かった。動かない両足から大量な出血と共に二本の剣が飛び出したからだ。体中に響く痛みで考えが鈍る。策を練るにあたっては相手の方が何枚も上手だったらしい。確実に仕留める手段をここまで隠していたなんて。奴の爪先が近づく。どう転んでもこのままでは殺される。なら、一矢報いてからにしよう。


「生きて戻ると決めたんだ、俺は約束を守る。そのためだったら、何だって捧げても惜しくない。」


 足に刺さった剣を引き抜き、構える。踏ん張ると同時に足から血が溢れる。だが、そんなことは気にしていられない。奴の胸元に向かって駆け出す。振り下ろされた爪が左わき腹をえぐる。歯を噛みしめ、痛み耐える。そのまま走り、少し右によろけつつも飛び上がり、両手の剣をヤツの胸に突き刺す。


「Ggarrararrararrffafsfasfjfskdfnkfjbnaksddddddddddaksjdalsjdasbdaksjbkfjbfkaj!!」


 暴れるヤツの身体の上でひたすら剣を押し込む。体を突き破ると、致命傷だったのかよろめき、後ろに倒れた。俺はとどめを刺すために奴に近づいていく。倒したのはいいが、どうやらもうだめらしい。視界がぼやけてきてしまっている。両手の剣を杖にして足を引きずりながら一歩、一歩と近づき、倒れるようにヤツの首に剣を突き刺す。ヤツの目が光を失ったのを確認したと同時に俺の視界と意識は白い光に飲まれた。


 俺が白い光に飲まれたのと同時刻、新都全体が白い光に飲まれ、新都住民は一人残らず消失した。これが後に「新都住民消失事件」と呼ばれる未解決事件の始まりである。


ようやく転移……!

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