魔王は愚痴る
魔王の城へと戻ったセラフィオーネはベットの上で膝を抱え込み深いため息をついた。
自らの忌まわしき異能を自覚して早5000年、幾度となく自殺を心見たもののその結果はどれも失敗に終わった。
セラフィオーネはそもそも魔王などになるつもりはなかったのだ、ただ死にたかった、自らを唯一愛しそして、自らが愛した両親の元へ行きたかった。
もちろん死後の世界などは信じてはいない、だが、そうでも思わない事には救われなかったのだ、その両親を、強かった彼らを自らの異能の力で殺してしまった、彼女には……。
そんな思いから幾度となく自殺を心見たセラフィオーネであったがその結果は全て失敗、彼女は5000年もの時がながれても、一向に死ねなかった。【不滅の美】で一瞬で完治するだけならマシなほう、場合によってセラフィオーネの自殺は【不可神領域】により無差別な破壊をもたらした。それはもう幾度となく、その結果だけで彼女は魔王と呼ばれ、多くの魔族が付き従うようになるほどに……。
魔王などと呼ばれたくはなかった、だから自分を殺せぬような軟弱な攻撃は受けぬよう自衛の為と自分を殺せる秘術の開発のため、魔術の習得に力を入れた。
1000年ほどで現存する魔術のほとんどを極め、2000年掛けて多くの秘術を生み出すことにも力を入れた。
しかし、そのほとんどが無駄だった。セラフィオーネが過去最悪の魔王という事を確定付ける要因にしかなりえなかった。
ちなみに、接近戦闘にも手を出した事もあったがそちらは割とすぐに諦めた。【不滅の美】により彼女の美しさを阻害するような筋肉は付かず、技術を身につけることは出来ても直ぐに限界が訪れたためだ。
幾度となく諦めたそうにもなったし、ひっそりどこかで静かに暮らそうかと思った事もあった。
しかし、、それは停滞でしかなくその頃には時間が自分を殺してくれることは無いと気づいてしまっていた。
もう、セラフィオーネは自分を殺すためだけにしか生きる意味を見いだせずにいたのだ。
それからは、もう変わり映えしない毎日だった。
日がな一日、自らを殺す魔術の研究をし、東の火山に伝説の火龍が復活したと聞いては出向き、挑発して火山ごと消滅させたり、南の氷河に全てを凍らせる魔の鯨が出たと聞いては出向き、鯨事氷河を更なる氷で覆い、西の砂漠で神に逆らい破滅をもたらす巨獣がでたと聞いては出向き、砂漠諸共吹き飛ばし、北の密林で隠れ民族が古の悪魔を復活させたと聞いては出向き、密林を更地にかえる、そして時たま死ねない自分に嫌気がさしてふて寝する、そんな変わり映えしない毎日。
「私いったいどうやったら死ねますの……?」
今まで幾億と呟いた自嘲が虚しく響く……。